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その8


「あぁ、そうじゃ。れいちゃんからの依頼だからと咲斗が気合入っちゃってのぅ。納品までまだ期間があったんじゃが、契約した量を作り上げてなぁ。早いが渡しておこう」


「ありがとう、朱基さん。咲斗にも後でお礼を言っておくよ」


 立ち上がりそうお礼を言って僕は納品された品をアイテムボックスにしまい、早々に個室から立ち去ろうとした瞬間、いつの間に移動していたのか朱基さんに腕を掴まれていた。


「今朝、月光島の力の流れが乱れた。もしかしたら想定外の魔物が現れるかも知れん、気をつけるのだぞ。もし、お前が死ねば夜兎は一層に新人に対して過保護になりかねん。……頼んだぞ」


 その忠告をしっかりと受け止め、理解したことを表すために僕は力強く頷き、自分の手が離されたと同時に個室から出た。ステータスを自分で確認できることを隠すために確認をした後、墓守の森へ向かったのだった。



 場所は移動して墓守の森。今日は実戦許可がおりたハッサク達と一緒に来ていた。

 ハッサクとサクアに回復風船と回復ポーションだけが入った簡易アイテムボックスを渡し、ゾンビの群れが来たら使うようにと指示を出しておき、対策を備えてから墓守の森に入る。

 今日の護衛は行きはタイミングがあった冒険者、帰りは幽霊浄化終わりの冒険者がやってくれるように頼んでくれるらしいから、安心して探索ができる連携っぷりはさすがとしか言えない。


「ゾンビ浄化の矢があってもいいな」


 そう独り言を呟いた後、ハッサク達が連携しながら倒している後ろから、倒し損じのゴブリンだけを狙って弓矢を打っていく。

 群れの全てを倒したのを確認した後、ゴブリンを倒したことはギルドカードに記されるのでゾンビにならないように火葬するのが決まりだ。

 今回から火葬も楽になる。なんせ、少し火をあげればハルクが上手く火を操って上手く火葬してくれるのだから。だからマッチに火をつけ、ハルクに火をあげる。

 するとふるふるとカラダを小刻みに震わせた後、火玉を操り、森が燃えないように加減してゴブリン達を火葬していく。


 そう言えば、今朝の広報誌に「勇者現る!」って書いてあったっけ? 朱基さんに呼ばれてたから広報誌読む時間がなかったから内容まではわかんないけど、机の上にあったから勇者について掲載されていたことはわかる。

 転移して来たのか、この世界の住民に呼ばれたのかわからない。前者は神の意志、後者は人的な意志だろうからこれからどうなるのか少し不安になる。

 まあ、少なくても朱基さんが言っていた()()()()()()()ってこれのことじゃないかなとは思う。

 朱基さんのことだから、おおよそ見当はついているんだろうけど何せ賢者だから、そうだと言える見当がつかないと力の流れが乱れた理由を話す人ではないんだよねぇ。


「……とある勇者の話を本格的に回収するべき事態になって来たかもしれないなぁ。墓守の森の探索は早めに切り上げるし、帰りの護衛担当と相談して古本屋に久々に行ってみようかな」


「んきゅ! んきゅ! (ぼくはレイさまのいるとこならぁ、どこでもついていくよ!)」


 そうハッサクが言ってくれているし、他の子達も嫌そうな雰囲気は感じないので、あとは帰りの護衛担当の冒険者さんに相談するだけかな。

 さてと、もふもふさん達ことククル、ハルク、リリア、シアンの力の補給しておかないと。

 ゾンビの群れが来る前にこまめにしておかないと、戦闘中の補充切れは補充出来ないから危険だし、補充方法は考えていかないとなぁ。まだククルが必要なのは薬草だからあげようがあるし、そもそもククルは僕の頭から離れることがないから工夫すれば力の補給は出来るはず。

 リリアは水の補充が必要だ。リリア用の小さなアイテムボックスがあれば氷でも力の補充が出来るから何とかなりそうだけど、問題はハルクとシアンなんだよね。ハルクは火だし、シアンに至っては人の心の闇とかどう補充して良いかわからないし、それにしては力は使えているみたいだし、シアンは1番生態がわからないよ……。


 それにしても、だ。


(今日はゾンビの群れが少ないなぁ……、なんでだろう?)


 そう考えていると後ろから、


「それだけ強ければ護衛なんていらないんじゃないですか、有栖様は」


 聞いたことがない声だなぁ、しかも交代するって言うくらいだからベテランかと思ったら同じくらいの歳の子がそこにいた。しかも、その隣には行きに護衛を担当していた冒険者さんがいて、


「いや、零姫は冒険者ギルド内では要保護対象だよ。彼は普通に強いけど、身分差別しない方だけど貴族であることは変わらないからね、盗賊からすれば格好の餌食だ。……まあ、零姫の場合、その盗賊を懐柔しかねないくらい人たらしなんだけどね。念のため、事件を未然に防ぐ布石は必要なんだよ」


 困ったように笑いながら、帰りの護衛担当の子に説明をしていると彼は納得したような顔をして、


「どのみち仕事が増えるんですね、なら護衛に付いていた方がめんどくさくはならなそうです。まあ、俺としてはちゃんと他人の意見が聞けるような貴族であれば付き添いくらいはしますよ」


 人によっては怒りを誘いそうな言い方でそう言う。まあ彼の場合、僕を試したいがための発言なような気がするけどね。


「付き添いってね、一応護衛だから言い方には気をつけようか。温厚な人だからそのくらいじゃ怒らない人だけど、わざわざ失礼なことを言わないの」


「事実でしょう?」


 雪兎さんも有栖家以外の貴族は嫌いと明言しているくらいだからなぁ、他にいたとしてもおかしくはないと思う。……それにしても、行きの冒険者さんに対してつっけんどんな態度を取ってるなぁ……と考えつつ、喉が渇いたのでとりあえず話が折り合いがつくまで飲み物を飲んで大人しく待っておくことにした。

 すると、ハッサクが服の袖を引っ張って来て、


「んきゅ!(ぼくものみたい!)」


 そう主張してきたので、コップを出してハッサクの分までレモティーを出してあげれば、喜んで飲んでいる姿を微笑ましく眺めていれば、


「この人本当に貴族なんですか? 何回か依頼で護衛することはありましたけど、こんな貴族は初めてですよ!」


 はっきりとそう言われたのは初めてで、ある意味新鮮だった。


「僕もこの人貴族なの? って直接言われたのは初めてだよ〜。これは新鮮な経験をした」


 にこにこ笑いながらそう言えば、こいつ何なんだと言いたげな顔をした後、


「有栖家が普通の貴族ではないと改めて再認識しました。……わかりました、警戒するだけ馬鹿らしくなりました。帰りの護衛は任せてください」


 やれやれと言ったような顔をしつつ、帰りの護衛を引き受けてくれた。……警戒されてたんだと考えた後、この様子だと報酬を渡した方が良いのかなと思っていると、


「護衛したことがある冒険者は無償で護衛してるんでしょう? それなら冒険者である僕も無償で護衛をするのが筋です、俺だけが贔屓してもらう訳にはいきませんから」


 心を読んだかのようにそう言った。……さっきまで渋っていたのに、護衛を引き受けると決めたら男前なんだなと感心した後、それでも僕は引き下がらない。


「情報でも良いよ? 本当に良いの?」


 そう言った瞬間、初めて年相応の顔を見せたんだ。……やっぱり幼い頃から冒険者活動すると言うことはそうでなければ生活出来ない事情があると言うことだと思うから、僕はしつこく報酬を渡すと引き下がらなかった。


「零姫は調合師の資格を持ってるし、そして何よりも国内で3本指に入るくらい優秀だと言われている薬師、雪兎さんから忠誠を受けている人だ。この人は報酬としてじゃなくても、事情を話せば助けようとしてくれる人だよ。そうじゃなきゃ、あそこまで孤児院に寄付したりしないだろう?」


 わぁ、とんでもなく良い人に勘違いされてるや。僕だって何も下心がなく、孤児院の子らを見てる訳じゃないのになぁ……と考えていると、そんな僕をしばらくの間穴があくんじゃないかってくらい見つめてきた後、


「……それもそうですね。それではまず自己紹介から、僕は貴方と同じ6歳児で、4歳から別の街で冒険者をしています。(あらた)と言います。俺が生まれてから数ヶ月後に両親を事後で亡くし、14違う姉に4年間育てられたのですが、とある貴族から好かれたことでその婚約者の方に毒を盛られてずっと眠り続けています。

……その婚約者の女がいる家系と姉を好いていた貴族の家系はそれぞれもみ消すために大量のお金を渡してきました。その取引をしてくれたのが隣にいる、この人です。まあ、この人も位なんてないですから二度と僕らに近づかないと約束させることしか出来なかったらしいですけど、それ以来からこの人が姉の代わりに育ててくれました」


 納得したような顔をして、事情を説明してくれた新くんの言葉を聞いて、僕は顔をしかめる。


「僕が知っている限り、眠り続ける花毒は存在しないよ。だから、深い眠り作用があるグーグー草くらいしかそんな状態にならせる薬草を知らない。この薬草はそもそも普通の使い方をすれば、不眠症治療の薬の元になるんだよ? 普通、薬師に見せれば治るような気がするけど」


 そう言えば、新くんは食い気味に、


「そうなんだよ!! 何人も薬師に見せたさ、診察してもらうたびにアンタと同じ答えを言ったんだ!!」


 そう言ってきた。……ああ、やっと素顔を見せてくれたと内心喜びつつ、やっぱり無理なのか……とがっかりする新くんを慌ててフォローする。


「まだがっかりするのは早いよ。何事も適量って言うものがあるよね? だから、グーグー草にも致死量って言うものがあって、飲まされたものが致死量に限りなく近いものだったから今もそれが作用してるんじゃないかなって思うんだ。

だから、眠気覚ましを限りなく飲まされたものに近い濃度にできれば、可能性があるんじゃないかなとは思うよ? それが無理だったら雪兎さんを呼び戻して診てもらえるように頼んであげるからさ」


 そう言えば、泣きそうな顔をして新くんは僕に抱きついてきたのだった。



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