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その7


「零さまっ、これレトの実でしょっ! ボク、零さまのいうとおりによしゅー、ふくしゅーしてるからおぼえてるよっ!」


「うん、正解。よく覚えているね」


 三つ子の三男、咲乃の勉強報告を微笑ましく思いながら、実際に食材系のものは全て覚えられているからちゃんと褒めておく。すると、へへっと照れ笑いを浮かべる咲乃を見て、さらに心が温かくなった。

 僕が指定した植物を探して、見つけたエリアの数字を書くクイズをしている最中なんだけど……、特別頭の良い三つ子はすでに全部終わって僕の側からべったりとくっついて離れないんだよね。

 それじゃあ、普段と変わらないから夕食作りに使うものを回収を手伝ってもらったんだけど、優秀だからすぐに終わると僕のもとに来ちゃうから諦めて甘やかすことにする。……優秀とは言え、2歳児には変わらないからね。


 その結果、芝生に座る僕の右腕に咲良、左腕に咲乃に抱きつかれ、僕の足にしがみつくように横になっている咲斗と言う状態になってしまった。神父は隣でクスクス笑っているだけ、……もう好きにしなよ。

 諦めの境地にいると、


「零様、零様の温室の植物はとても質が良いですね。土も良く、水も良いのは何故ですか?」


 完全に甘えん坊モードままの咲斗から質問が聞こえてきた。この子は年相応に甘えにきたと思ったら、質問内容は大人びたまま。……彼の知りたいことに答えれるのは今のうちだけだろうし、だからこそこの時間を楽しみたい。


「それはね、多分回復ポーションを水やりの水に混ぜたり、栄養剤の代わりに回復ポーションを土に混ぜたりとかしてるからだと思うよ。気になるならスキルで確認してきてもいいよ?」


 そう言えば、少し考えるような素振りをした後、


「今度にします」


 年相応の可愛い感じでそう言われれば、その今度の機会を作ってあげたいなぁとは思った。この子は甘えられる人が少ないから、甘えてくれるうちは甘えさせてあげたいなぁ……と考えていると、隣から神父のクスクス笑う声が聞こえる。


「見つけた私でさえ、ここまでは甘えてくれないと言うのにまるで母猫に甘える子猫みたいです」


 子猫、ね。


「……いつまでこの子達は僕に甘えてくれるんでしょうね。いつか親離れをする時、苦労するのは僕の方かもしれません」


 僕の方が依存しやすいから、それは前世(むかし)から変わらない。僕の方が子猫の方に依存しているんだ。

 そう考えていると神父は、


「彼らはずっと貴方に甘えたいと望むことでしょう。彼らにとって貴方は家族よりもっと深い絆として結んでおきたい存在であるようです。ですから、彼らから貴方から離れることはまずないでしょう。彼らの愛に対しての飢えは例え愛する人が現れようとも、心を許せる友人が現れようとも、貴方がいる前提で満たされるのですから」


 にっこりと優しげに微笑んで、そう教えてくれた。そのとおりだといいなと考えてしまいそうになるのを避けるために、僕は甘えている彼らに新しいことを教えることにした。


「回復ポーションの品質の高め方を今日は教えてあげようか。これでもう少しは品質を高めたことで、生活が楽になると思うよ」


「「「うん! 知りたい!!」」」


 知識欲が強い彼らはすぐに甘えん坊モードから切り替えて、知識を知ることに強い関心を向けてくるようになったから、思わず苦笑しつつ、


「ちゃんと覚えて、他の皆に教えるんだよ」


 三つ子に言い聞かせれば元気な声で、


「「「はーい!」」」


 そう返事をしてくれた。なんていい子達なんだと考えつつ、


「回復ポーションの品質を上げるには……」


 僕がどうやって品質を上げているのか、回復ポーションの品質の向上と薬草の品質の高さの向上を一通り説明した後、ちゃんと理解できているか、3人で話し合ってもらって聞かせてもらった。

 しっかり理解出来ていたので、実践して身につけてもらおうと回復ポーションの材料を回収する作業から始め、教えた通りに作業をしてもらい、問題なく品質を向上させることが出来ていたから合格を出してあげることが出来た。


 ほんと、彼らは優秀だ。


 その後は軽食を取り、数時間後には孤児院の子達と一緒にご飯を作った。夕飯にはハッサク達も参加し、楽しい夕飯になったと思う。

 帰りは誘拐防止に護衛を圭介さんに頼み、無事到着したと報告を受けた後、寝る前の身支度を整え、眠りについたのだった。



※※※※※※



 次の日。叔父様から「用事があるからギルドへ来るように」と朱基さんからの伝言を受け取った。まあ、元々今日はギルドに寄って季節ものの採集依頼をチェックしてから行く予定だったから良かった。……孤児院の子らと約束している日だったら、急な予定変更に申し訳ない気持ちになるからさ。

 しかし、用事ってなんだろう? あれかな、発見者登録が完了したとかそこら辺の報告かな。それとも頼んでいたゾンビ浄化用の銃弾が早めに完成したからとか? それくらいしか心当たりがないな。


 まあ、今は深く考えても答えは出ない。その用事とやらの内容は朱基さんから直々に聞くことにしようと朝食作りに頭を切り替えたのだった。

 急いで作り上げ、叔父様にお弁当を渡した時、ふと机の上にある広報誌の見出しの「勇者現る!」の文字が目に入ったが、朱基さんを待たせているだろうからそれどころではなく急いで身支度を整えたのだった。


 圭介さんから、ハッサク達が一緒に墓守の森を探索しても平気なレベルになって来ているとギルドへ行くための道なりで報告を受けた。

 じゃあ、久々にハッサク達と行動できるなぁ……と嬉しさを感じながら今日は連れて行くと圭介さんに報告すれば、今日は2人ともどうしても逃れれない頼まれたことがあるから無理だと言われてしまった。

 そのため、圭介さん厳選の信頼できる冒険者さんに護衛を頼めば行きだけならと条件付きで引き受けてくれた。しかも、帰りは同じ依頼を終えた冒険者さんに護衛してくれるように頼んでくれると言うアフターケア太っ腹な対応付きだ。……良い人すぎる!


 慌てた様子の圭介さんと、行きの護衛をしてくれる冒険者さんに預けたハッサク達と別れ、受付にいる朱基さんの元へと向かえばまた奥の個室へと案内された。

 奥の個室に案内される時、それは重要なことを告げられることを表している。聞き耳を立てられ、噂を流されることを予防するためだ。


 今回個室に呼ばれたのはやっぱり、発見者登録についての説明のためなのかなと考えていると、


「今日は急な呼び出しをしてしまって悪かったのぅ。今回は重要な知らせがあって、お前さんをこうしてギルドの個室に呼んだ」


 するとその一言で案内していたギルドの職員はまるで忍びのようにすばやくこの部屋から立ち去り、朱基さんは鍵を内から閉める。重要な話をする時は、普段の時と切り替えをしなきゃいけないから、敬語を使うようにって朱基さんは言っていたっけ?


「いえ、大丈夫です。昨日は念のため、墓守の森を探索するのを中止していましたが、今日からまた再開するつもりでしたので気にしないでください。それはさておき、朱基さん。僕は今回、何のためにお呼び出しをされたのでしょうか?」


 全く気にしてないよということを丁寧に伝えた後、気になっていたことを質問をすれば、朱基さんは僕のことを誇らしげに見てこう言う。


「まず1つ目、おめでとう。ゾンビ浄化用の銃弾、護身用香水と解除用香水、回復ゼリー、回復風船の全てが発見者登録の申請に通ったぞ。もちろん、ゾンビ浄化用の銃弾は発見者としてお前さんと咲斗が連名で通り、その報酬は貯金システムに入るように話を通しておいた。これでこのレシピを使用されるたびに、使用料がお前さんの、ゾンビ浄化用の銃弾のみお前さんと咲斗の貯金システムに入るようになるからそれだけは覚えておくように。……大金入るのが想像できるからのぅ、咲斗にも冒険者登録をさせて必要に応じておろせるようにしたからの」


 やっぱり発見者登録の申請が通ったことに対する報告だったんだね。しかしさすがとしか言えないなぁ、咲斗に冒険者登録をさせるなんて。賢いとは言え、2歳児だから強盗されたら大変だからさ、アフターケアありがとうございますとしか言えないよ!!

 ん? でも、さっき1つ目って言ったよね? 僕、その他には個室に呼ばれるようなこと何にもしていないんだけど……と考えていると、それが思いっきり顔に出ていたのか朱基さんは苦笑してした。


「最後に2つ目のお知らせだ。有栖零、この度の複数の発見者登録の功績、ゾンビ浄化方法の発見の功績、そしてゾンビ浄化を数々こなし、そしてギルドに封じられていたゾンビの浄化の功績を評価し、Hランクから4つランクを上げ、Dランクとする。本来ならば戦闘要員ではないが、Cランクにする功績であると判断される案件であるが、有栖零はこのギルドの依頼で討伐依頼を受けていないため、Dランクに上げることが妥当であるとの判断された。この決定に異議申し立ては不可能とする。……おめでとう、れいちゃん」


 ランクが上がるとは想定外だった。それほど、ゾンビの浄化は厄介なことだったんだと僕はここで初めて自覚をした。

 僕は、アナウンス担当の天使さんによると転生者とは思えないくらい現地に馴染んだ行動しかしていないと言われたが、ここで初めて僕の持つ前世でのゲーム内での王道(テンプレ)の知識があるのとないのでは発送できないこともあるのだと、初めて考えさせられたんだ。


「僕はまだまだ実戦経験のない初心者マークの冒険者に過ぎませんので、この評価でさえ過大評価であると感じますが、この雰囲気では断ることは出来なさそうなので、この評価有難く頂戴致します。……ありがとう、朱基さん」


 これは明らかに前世の記憶があったからこそもらえた評価。……だからだろうか、心の底から素直に喜ぶことが出来なかったんだ。


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