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6歳編 その13

 

「3日間も眠ってたのかぁ……」


 朱基さんからそう説明を受けたが、いまいちピンと来なかった。説明からすると、何らかのショック(いまいち記憶がそこら辺抜けてしまっているからわからないけど)を受け、過呼吸になり、意識を失った僕は3日間眠っていた。

 そのため、心拍数・呼吸数が異常に上がった時に保護者に通知が行く機械と、あとは気絶した時には場所特定されるようになってしまった。


「まあ、それはしょうがないか……」


(それにしても、全く心当たりがないんだけど、どうして何だろうか……?)


 一週間安静にしているように言われてしまったし、出れるのは温室まで。気分転換に温室周辺でも散歩でもしようかな。


「どちらへ?」


 書類仕事をしながら、安静にしているかどうかの見張り番をする遊騎さんに声を掛けられ、何もやましいこともないから堂々と、


「温室周辺を散歩してくる」


 答えれば、にっこり微笑んで「いってらっしゃいませ」と送り出してくれた。あ、着いてこないんだぁと考えながら、特に脱走することなく、伝えた通りに温室に向かう。


(それにしても、心配性のハッサクが良く素直に鍛練場に行ったものだ。もう少し、粘るかと思ったんだけどなぁ、成長したんだね)


 鼻歌を歌いながら、温室周辺を散策していれば、僕の肩に一羽のカラスが止まった。ん? これは、この前追っ払った野鳥じゃないの?

 この前は怒りのあまり、よく見てなかったけどカラスだったのか……。悪さをしに来た訳ではなさそうなので、とりあえず要件を聞いてみることにした。


「どうしたの?」


「カァ」と一鳴きした後、ついてこいと言わんばかりに先導するかのようにゆっくりと飛び始めた。賢いカラスのことだ、何か問題があって僕に訴えてきたのだろう。

 僕は素直にカラス君の後をついていく。もし、人間の赤ん坊なら大変だからね。


 温室の裏側まで回り、一鳴きして近くの木に止まった。そこの近くには子供ではなくては入れない大きさの穴があった。

 ここに何かがいるから、カラス君は僕のことを頼ってくれたのだろう。


「ありがとう、カラスくん」


 カラス君をひと撫ですれば、気持ちが良かったのか撫でられている間、目を細めていた。可愛いなぁ……と思わず思った後、躊躇うことなく穴に入って行けばそこには丸くなって眠るゴールデンレトリバーがいた。

 本当なら大人を呼ぶべきなんだろうけど、なんとなくこの子は僕を傷つけるような子ではないような気がして、躊躇いなく抱えて、穴から出てくればタイミングを見計らったかのようにカラス君は僕の元へと飛んできて肩へ乗って来た。


「この子がいるって教えてくれたんだね、良い子だね」


 褒めてみれば、嬉しそうに頰に頭を擦り付けてくるから今度朱基さんに病気持ってないか見て貰おう。


「これからも仲良くしたいから、後で病気持ってないか見て貰おうね」


 この前のことは、彼にとっても生きるために必要なことだったわけであれ以上責めることは出来ない。あの子達は現に傷一つないのだから。


「カァ」


 声が嬉しそうだから、了承してくれているような気がして。たくさんの動物と自由に触れ合えるこの世界が楽しくて楽しくてしょうがなかった。


(……あれ?なんで()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 深くまで考えようとしてやめた。朱基さんに付けられた心拍数の異常な向上を知らせる警告音が鳴ってしまったから。

 申し訳ないなぁ、この警告音が鳴ったら朱基さんの方の機械にも通知されてここにいる間は問診することになってるんだよなぁ。


「まあ、いいか。ついでにカラス君たちも見て貰えば良いんだし。二度手間にならなくて済むよね」


 と話しかければ、カラス君は「カァ」と一鳴きして返事をしてくれた。前世、カラスは賢い生き物だと言われていたけど、本当だったんだと改めて実感する。

 のんびり歩きながら家まで戻れば、息が乱れた様子の朱基さんがいた。そして、倒れていない僕を見て安心したような顔をする。


「大丈夫そうで何よりじゃ」


「警告音のおかげで我に返ったの。朱基さんのおかげだよ、ありがとう」


 そう言えば、朱基さんは嬉しそうに笑った後、すぐに僕の肩にいるカラスと腕の中にいるゴールデンレトリバーに目を向けた。


「そやつらはどうした? 拾ったのか?」


「カラス君が犬がいるって教えてくれたの。もふもふ達を食べようとはしてたけど……、実際には傷ついてはいないし、反省して生き物がいるって教えてくれたから仲良くしたいなって思って。この子達に病気がないか見てくれる? 責任持って飼いたいし」


 そう言えば、驚いたような顔をして、


「カラスを飼うのか?!」


 と言うもんだから、この世界はカラスを飼ってはいけないって決まりはあっただろうか? と首を傾げた後、


「うちの庭には熊さんも、鹿さんもいるよ? 何ならカラスも保護してるし、何かおかしいの?」


 カラスを飼ってはいけないって法律があれば間違えなく、有栖家は違反してるんだけど……、大丈夫なのかな?


「……カラスはゴミを荒らすからな、あんまり飼おうとする人はいないじゃろう? 違反にはならないから別に病気を持っていないか調べることは可能じゃよ」


 さっきの一言で諦めてくれたようで、病気を持っていないか調べてくれる気になってくれたようで良かった!

 ゴミを荒らすかぁ、確かに前世でのカラスへの認識はそうだったなぁ。でも、今は魔物がいる世界にきて彼らも生きるための行動だったんだなぁって思うようになった。

 それでも、まあゴミを荒らすのは良くないことだし、人間が対策をして気をつけていかなければいけないことだと思うけど。


「ゴミを荒らすのは、しちゃいけないことだってわかってないからだと僕は思うよ。カラスは賢い、すごく賢いの。追っ払おうと石を投げた人間がいれば顔を覚えて仕返ししてくるくらいなんだもの。うちで保護してるカラス君達には、カラス君専用の果樹園を作ってあるんだぁ。そこの食べ物しか食べちゃダメだよって教えたら、少し時間はかかったけどそこの果物しか食べなくなったし、その果樹園を縄張りにしているみたい。新しく迎えた子を紹介すれば、カラス以外でも顔見知りなら攻撃しない良い子達だよ〜」


 前世を思い出す前の記憶から、あの子達のことを思い出して、思わず笑みをこぼしながらそう話せば、朱基さんはため息をこぼす。


(……え? 何で?)


「そんな芸当が出来るのは、スキルも何もかも関係ない有栖様達の性質じゃよ。あのだだっ広い森のことも庭って言いのけるところも有栖様全員の特徴じゃ。昔から怪我した野生動物を見つけては保護して飼っていたけれど、今もそうなんじゃな。……ったく、スキル持ちの人間さえ怯える熊のことを熊さんって呼べるのは有栖様以外にはどこにもおらんよ。ほとんどは討伐対象としてしか見とらんよ」


(……そうなんだぁ)


 内心でそう感心しながら、肩に乗るカラス君のことを撫で撫ですれば、嬉しそうに目を細めたのを確認した後、僕は朱基さんに視線を戻す。


「大人しくて良い子だよ〜! 使用人に挨拶した後、出かけるって声かけるために最後会った日には熊さんも鹿さんもカラス君達と果物食べながら日向ぼっこしてたし」


 熊さんには基本的に肉は与えないで、魚をあげるようにしてるし、それか熊さん専用の果樹園の果物を食べてるおかげで他の動物のことも食べ物だと認識してないみたい。

 多分、そういう風に出来てしまうのが朱基さんで言う有栖家の性質ってやつなのかな。普通だったら、人に慣れることが稀だし、本能に負けてしまうことの方が多いと思うし。


「……儂も動物に比較的懐かれやすいタチじゃが、有栖様達には負けるのぅ」


 関心を超えて、呆れられてしまった理由までは分からなかったが、呆れながらもカラス君やゴールデンレトリーバーの状態を調べてくれたので気にしないでおくことにしたのだった。


 結果から言おう、カラス君もゴールデンレトリバーも両方とも病気は持ってはいなかった。


「……それにしてもこの子、深い青のカラスなんて珍しいなぁ。緑の目をしてるし」


 そう呟けば、朱基さんは目の色を変えて言った。


「ああ、盲点だった! カラスを飼うってところに気を取られて気づかなかった……! そやつはカラスじゃない、福青鳥(ふくせいちょう)って言ってのぅ、カラスに似た文通鳥で、童話の影響で幸福を招くと言われておるんじゃ」


 そう言われた途端、初めてカラスじゃなかったことに気づいた僕なのだった。



今回、カラスとカラス君と言う言葉の使い分けがありましたが、補足としましてカラスは種族としての表現で、カラス君は零を案内してくれた子だけを指しています。

間違いではないので、よろしくお願い致します^ ^

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