6歳編 その12
今回は途中に別視点に切り替わりますので、よろしくお願い致します^ ^
「「「……おじょーさま、れいさまはいつくるの? ボク達あたらしいことおしえてほしいの」」」
変装していない僕を望む彼らは、零として教えている調合、植物、栽培を熱心に受けてくれる三つ子の兄弟だ。
調合が好きな三つ子の一番上の兄の咲良と、植物が好きなのは二番目の咲斗、そして栽培が得意な咲乃の三つ子は僕が学園資金を援助しようと考えている子達である。
彼らは2歳でありながら、賢い。そして勉強がとても好きな子達だ。だから、出来れば3人で学園で通わせてあげたい。
4歳になってからステータスを見るのが常識だ。しかし、僕がその年になるまでここにいるとは限らないからね、援助するためには常識ばかりを気にしていてはだめだ。
出来れば咲良は薬師科、咲斗は特進科、咲乃は薬師科か総合製作学科に通わせてあげたい。もちろん、彼らが望むなら、だけど……。
とりあえず、総合製作学科なら栽培の授業があるから可能性を広げるためにも今日のところは調理や裁縫を教えてあげるか。
「来れるかどうか、零様にはお声を掛けておくわ。今日のところは私が裁縫とお料理を教えることで手を打ってはいただけないかしら? それが出来れば、シスター様も神父様も楽になると思うわよ」
そう言えば、彼らは目を輝かせてうんうんと何度も何度も頷いた。凄くいい子達なんだ、シスターや神父が大変なことを理解していて助けたいと考えるような子らだからこの条件を飲んでくれると確信していた。そんな僕はずるいと思う。
「おじょーさま、はやくおしえて!」
孤児院に2年間、定期的に通って情が移ってしまったようだ。……この子達が幸せを掴めるように手伝えたら良いなと思っている。
今、僕には援助できるだけの資金は無いから、出来ることを増やしてあげたい。……可能性を広げてあげたい。
「そんな急がなくても教えてあげますから、落ち着いてくださいませ。転んでしまいますわ」
急かされることに困りながらも、久しぶりに誰かと一緒に調理することを楽しみに思っている僕もいて、思わず笑みが零れるのだった。
「料理もできるのですね。美味しかったです」
圭介さんの護衛=有栖零が成立しているため、お嬢様の護衛担当は和羽さんにお願いしている。設定としては、和羽さんの取引先の娘だ。そのため、和羽さんが護衛するのが一番自然だと、商店の社員の中で一番偉い男性にゴリ押しされてしまった。
あとあと詳しく聞くと、働きすぎなので休ませる時間として利用させてもらいたいとのことなので、遠慮なく護衛として側にいてもらっている。
「ふふっ、それは良かったです。私はメニュー提供したのと素材の切り方、使い方を教えただけですわ。咲乃は思っていた以上に調理の才能がありましたが、意外にも咲斗が料理上手とは思ってもいませんでした。咲良が料理が苦手とは思ってもいなかったですけれど、咲斗以外は裁縫が得意そうで安心しましたわ。これであの二方の負担が減ると健気に喜んでいたので私も嬉しいです」
着替え終わるまでは僕はお嬢様であり続けなくてはいけない、それは変装をする上で徹底すると決めた自分の中でのルールだ。
「……弟がいたらこんな感じなのかしら?」
そう呟いた瞬間だった。脳内で懐かしい、愛しく感じる声が響く。
『兄さん、逃げて! 』
僕……あれ? 俺? 弟って居たっけ? いなかったような……いや、いたような気がする。あれ、何で逃げろって言われてたんだっけ?
『兄さん、思い出すな!!』
(……どうして?)
そう考えた瞬間、場面が切り替わりサバイバルナイフを持つ女の子が現れ、まるで心臓が握り締められているかのように息が苦しくなる。
『お兄ちゃん、私ね。お兄ちゃんが他の人と幸せになるのが許せないの』
その声が響いた瞬間、僕は引きつったような音を立てて息を吸った。その音で異変に気づいた和羽さんが僕を横抱きにし、
「瞬間移動」
そう呟いた瞬間、意識が途切れた。
※※※※※※
この町内の移動でスキルを使うなんて珍しいな……と一瞬考えたが、腕の中にいるれいちゃんの姿を見て儂は納得をした。
「朱基さん! 零様が急に過呼吸になってしまいまして、意識を失ってしまいました!」
血の気が引いたような気がしたものよ。この時ばかりは無理矢理稼業を引き継がせようとした母親に感謝するわい。そうじゃなきゃ、この子が消えていく様をただ見守ることしか出来んかったのだから。
「任せておけ、儂が原因を見つけてみせようぞ」
これでも昔は、冒険者は副業だった男よ。今はこのギルドのためだけの賢者、ギルドの子をみすみす失うわけにはいかない。
「さて、参ろうか」
※※※※※
「……零はっ!」
少しばかり見ないうちに、随分と親の顔になったものだ。こんなに早く来るとは思わなかったのぅ。
「怜亜様、落ち着いて聞いてください。何らかのショックで眠りについているだけのようです。その原因は魂に傷がついているためのじゃろうと思います。……ただ、れいちゃんは見捨てられてはおりませぬ。何らかの力で、その原因となる何かを封じられておりますゆえ、今回は何らかのシステムエラーでこのような事態に陥ったのでしょう」
「このことを零には……」
「言うべきではないと思いますぞ。システムエラーの部分は儂が修正しておきましたゆえ、安心してください。無駄に長生きして、長い間賢者として生きてきたわけじゃないですからのぅ。れいちゃんは良い子じゃ、ここで見捨てられて良い子ではないですからの、久方ぶりに本気を出した次第ですわい。このような発作が起きない限りは、封じられているため、機にする必要はないと思いますぞ」
「……私は帰ります。朱基さん、零のことをよろしくお願いします」
言わなくても察してくれる玲亜は賢い。しかし……、
「そうした方がよろしいじゃろうと思いまする。儂に出来ることは致しましょう、今玲亜様にできることは普段通りの貴方様をれいちゃんに見せることじゃろうと思います。これから先は無駄に生きた老いぼれの独り言じゃが、これはお前のせいじゃないからの、自分を責めるんじゃないぞ。誰のせいでもない、れいちゃんのことを傷つけた奴のせいじゃからな? 」
何でも自分のせいじゃと責める癖は変わらないのぅ。どんなに偉い貴族になっても、儂にとっては子供のままよ。独り言としてでしか、昔のように接することが出来ないのは歯がゆいところではあるがな。
玲亜様が来てから、3日後れいちゃんは何事もなかったかのように起きた。まるで、少し長い眠りについていたかのように普段通りであった。
※※※※※
一方、天界。
『まさか、人の身であのシステムの解析をし、エラーを修正出来る者がいたとは思ってはいなかったぞ。しかし、おかげで内部からも外部からの精神攻撃にも強いシステムになった。どうしても、我々だけだと外部からの精神攻撃には弱いところがあったからな、だいぶ零さんの魂も安定してくるだろう。人一倍魂に刻まれた傷は深かったから時間がかかったがそろそろ、第2段階に移っても良いだろう』
『そうですね。すぐに準備に移行致します』
こんな会話をされていただなんて僕が知るのは、随分先のことになる。
空野雪乃です。
読んでくださり、ありがとうございます^ ^
これからもよろしくお願い致します。




