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6歳編 その9

 

 ひんやりとした食感が頰に触れ、遠慮がちに撫でるように首元へ下り、うなじに何か触れ……。


「わわ、何!?」


 謎の冷たさに驚き、僕は叫び飛び跳ねることで、修復作業を中断させられた。

 そこには、謎にしてやったり! とどや顔をするサクアがいた。


 怒るべき、怒るべきなんだろうけど……、どや顔が可愛すぎて怒れないや。

 それに、集中しすぎると手甘いやり方では我に返らない僕にも非があるから、尚更だ。


 しかも、驚くことはそれだけではなかった。

 渡されていた3分の2くらいの量の修復作業をこなしていたのだ。

 気を利かせてハッサク達が待っててくれたのではと思い、時計を確認したが、ハッサク達の鍛練が終わる時間から10分くらいしか経っていなかった。

 ……普段なら、これくらいの時間しかなければ4分の1くらいしか服の修復ができないと言うのに。


 まあ、それは良い。とりあえず考えるのは一旦置いておこう。家に帰ってから、ステータスを確認して、原因を探れば良いだけなんだから。


「お待たせ、帰ろうか!」


 圭介さんと朝陽くん+ハッサク達に告げ、ギルド内に残っている冒険者さん達に挨拶を言ってから皆で帰り道を歩き始めたのだった。



 しばらく歩いた後、家に着き、趣味である料理をして皆に手料理を振る舞った後、護衛である2人は帰宅して行った。

 僕は残りは寝るだけになるよう、支度を整えた後、脳内で『ステータス』と呟けば、予想はしていたが、レベルアップを告げる音が鳴る。


『おめでとうございます、裁縫のスキルがレベル40からレベル50となりました。……そのことにより、情報開示の資格を得ました。お聞きになりますか?』


 ……情報開示? 何のだろうか。

 血縁スキル、先天性スキルに攻撃系のスキルがない僕にとっては、自分の武器になり得るか否かを選ぶ贅沢はできない。


(うん、聞きたい)


 答えは当然のこと、YESだ。


『それでは後天性スキルについての情報開示の作業と入ります。後天性スキルは、先天性スキル・血縁スキル・後天性スキルの3つの中で〝最も弱い〟スキルであると言う事実は貴方が一番よくご存知でしょう。……そして、わざわざ後天性スキルを取得するために行動を移す者はこの世界では珍しいことも」


(……そうだね。貴族の中では僕以外にはいないと言っても過言ではないくらい、後天性スキルに注目する人はいない)


『なら、どうして〝この世界に後天性スキルと言う存在は存在している〟のか、お分かりになりますか?』


(この世界は、〝努力すれば強くなる世界〟だからじゃないの? ……僕のように、生まれつき〝攻撃スキルのない人間への救済処置〟をするのが後天性スキルじゃないかなって考えてたけど……、違う?)


『その解釈で合っております。……しかし、それにしても後天性スキルは救済処置にしては、護身する目的に使うにしては効力が弱かったのです。さらなる救済処置として、合体・派生をすることに神々は設定を変更しました。努力をした人が、不本意に亡くなることがなくなるように』


(……ここまで詳細に教えていいものなのかな?)


『……良いのです、とあるお方からそうするよう言われておりますので。この事実は後天性スキルを調べる者が現れれば自ずと世間に広がる知識ですから、言わない限りは知っていても何ら問題のないことです』


(……広まっていないのは、強いスキルにしか目を向けないからってことか)


『そうですね。先天性スキル・血縁スキルには届きませんが、努力を怠っている者であれば、勝てるようには強さを調整致しました。……それが広まっていないのは、後天性スキルを鍛える者の中に〝零様のような転生者〟がいらっしゃらなかったからです』


(大体は、ファンタジーな世界に行けばチートな能力を望む人の方が多いだろうから、後天性スキルに目を向ける必要がなかったからだろうなぁ)


『そう言うことです。さて、後天性スキルの裏側の話はこれくらいにしておきましょう。そろそろ、本題に移ることにします』


『合体とは、そのスキルが合体するために必要なスキルレベルを最大値にすることを条件に、複数の後天性スキルが合体することで普通の後天性スキルより効力が強まる力です。次に派生とは、従魔で言う進化です。1つのスキルがスキルレベルが最大値になることで、1度だけ派生をし、効力を強める作用があるもののことを言います』


(なるほど、それで?)


『今回、零様が条件を満たしたのは合体・派生の両方です。裁縫のスキルレベルが最大になったことにより、裁縫・調理・栽培・調合の4つの生産系の後天性スキルレベルが最大となりました。……そのことにより、裁縫・調理・栽培の3つが合体し、『創作』に派生しました。このスキルは先天性スキルの『創造』の劣化版となります。

『創造』は想像力を糧に物を製作しますが、『創作』は何かを作る際にはその材料を必要とするところが違うところですね。

今回、『創作』のスキルを使ったことにより、スキルレベルが10になりました』


(後天性スキルの合体・派生は、先天性スキルや血縁スキルをもとにされたスキルで、同時に使うためには制限がついているのか)


『そう言うことになりますね。調合は派生するスキルとなります。調合は派生することにより、『製薬』と『香水作成』に変化します。調合はスキルレベルの最大値が30でしたが、この2つに関しては最大値が50となります』


(そうなんだ。そう言えば、裁縫のスピードが上がったのも、『創作』のおかげなの?)


『それは違いますね、『創作』のスキルのおかげではありません。新たなスキルを取得したからです。今回、手に入れたスキルは『修復』と呼ばれるスキルとなります。このスキルは、何らかの修復を行い続けることで取得する可能性を手に入れられる後天性スキルです。……これを取得したため、裁縫による衣服の修復作業が速くなったと考えられます』


(それって習得方法がわからない、取得が難しいスキルだよね?)


『はい、そうです。◆◆◆◆◆◆◆◆◆、修復し続けることでこのスキルを習得できるスキルとなっております。後天性スキルでは1、2を争うほど習得が難しいとされているスキルとなっておりますね。

どんな物を修復していたかによって、どのように修復する手段が決まっております。零様の場合、恐らく裁縫による修復だったため、スキルによって生み出された糸と布ではないかと推測されます。

物によってはスキルによって生み出された自動裁縫機ミシンと布による修復も可能となると思われます』


(◆で隠されているところは、僕が知らない方が良い感じの情報ってことだね。……ところで、『修復』はどこまで修復ができるの?)


『そうですね。知らない方が良いと思います、『修復』は意図的に取れないようになっているスキルなので知ったところで永遠にこのスキルを取れなくなるだけなので。……スキルの話に戻りますが、修復できるのは、『修復』を持つ本人が持つスキル関連のものだけとなっております。

修復しなければいけない場所が自動的にわかる力が、スキル習得と同時に習得できます。その力は『修復』の力の一部なので、スキルレベルが上がるごとにその精度が上がります。『修復』には似たようなスキルがあり、そのスキルのことを『改善』と言うんですけどね、それには直せる物にあまり制限がないがないんです。

やはり先天性スキルの『改善』と比べると、自分が習得したスキル関連のものしか修復不可能と言うデメリットがあります』


(ふーん、そうなんだ。特に、不便なデメリットじゃないから別に良いよ)


『あなたならそうおっしゃられると思っておりました。それでは説明モードを解除し、アナウンスモードに切り替えます。

……おめでとうございます、後天性スキル『修復』を取得しました。スキルレベルは10となりました。

おめでとうございます、後天性スキル『札結界』と『札術』を取得しました。『札結界』のスキルがレベル12、『札術』のレベルが5となりました。……ステータス変化のアナウンスは以上となります』


 僕はつくづく運が良かったと思う。

 まず第一に、僕が転生者であったことだ。今、努力し続けられているのは〝事前に努力しなければ強くなれない世界〟だと知ることができたからこそ、目標を見誤ることなく努力ができている。


 そして、環境が良かったこと。

 自分は自分自身の判断でチート能力を望まず、ましてや無意識的に前世の記憶から、攻撃性の高い能力を拒んだ。

 それは魔物がいて、立場的に暗殺者に狙われやすい立場にいる人間にとっては自殺行為としか言えない。


 しかし、僕が生まれたのは有栖家の次男坊。

 長男はS級冒険者確定の実力者。

 嫁は、S級冒険者の中では実力者中の実力者。

 そして、現当主。お父様は、王族でさえも恐れる頭脳・人柄・カリスマ性。

 そんな家計を敵に回そうとする者は、まずいない。


 だからこそ、僕は安心して努力ができる。ここまで、後天性スキルを鍛えられたのは僕だけの力だけでは無理だった。

 だからこそ、傲慢になってはいけない。

 日々、人が繋いでくれた〝縁〟を大切にして、こうして安全に努力することができることを感謝しなければならないと改めて思った。


 家族だけではなく、冒険者さん達も、朱基さん達も、勿論圭介さん達や雪兎さん達も、僕が安心して努力し続けられるのは彼らのおかげだとしみじみ思う。






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