6歳編 その4
(……あの季水くんが恋かぁ。想像もしてなかったなぁ、一番縁遠そうな話だもの)
いつか僕も誰かに恋をすることに〝なるんだろうか〟と考えた瞬間、ズキリッとこめかみが痛んだ。
……なんで、急に頭痛なんか起きたんだろうか? ただ単に〝いつか恋するのか〟について考えていただけなのに。
(……おかしいなぁ??)
まあ、いっかと思い直すことにして今は急な襲来によって阻まれた依頼された服の修復作業に戻ることにした。
裁縫スキルが高ランクになったことにより、3倍速で縫うことが可能になったため、作業はスムーズになってから、この量なら集中すれば圭介さんが戻ってくる時間帯までに終わりそうだ。
そう考えた後、僕は修復作業に集中し始めたから気づくことはなかった。
脳内で、
『綻びが検知されました、これより転生者の魂保護のために修復作業を開始します。この問題は秘匿レベルS。転生者が〝今世こそ安心して送れるための処置作業〟となっております。即急に改善されるべき問題と判断されます』
『魂保護のための記憶封じに揺るがすキーワードを検出……、確認しました。そのキーワードに対する耐性レベルを最大としました。
魂保護の術式の綻びを検出……、場所の特定作業に移ります。場所の特定作業の検出……、特定しました。特定の綻びの修繕作業に移ります。
綻びを確認、最善の綻び修繕の検索……、確認しました。最善の綻び修繕による修繕を開始……、修繕終了を確認しました』
『次に術式のメンテナンスを開始します。術式の機能の確認を開始します。……改善点を確認、術式の綻びを生じる可能性があるキーワードの検出……、検出されました。検出されたキーワードに対する防止機能の追加を申請……、申請が受理されました。機能の動作確認……、問題なく機能されていることを確認。最後に魂の保護度の強化を試みます。……成功しました。
メンテナンスの終了を確認……、メンテナンスの終了が確認されました』
僕を守るために、ステータスのアナウンスの役割をこなす天使が必死に術式の組み替えをしていることを、この時の僕は知らない。
『……前世、人の想いで振り回された貴方がこの記憶を思い出さないことでしか、貴方の幸せを手伝えなくて、申し訳ありません』
……僕のことを思い、この方法でしか助けられないことを悔やみ、謝っていたことを今の僕も、この先の僕も知ることはない。
※※※※
「ほらっ、できたよ! 自分の服が入っている袋を持ってって!」
(ったく! あそこまで傷だらけにして……ってあれ? さっきまでなんか悩んでいたような気がするんだけど……なんだっけ?)
まあ、いっか! と思い直し、朱基さんに湖波さんの修繕した服が入った袋を渡した後、明日なんの依頼を受けようかなぁ〜とうきうきしながら依頼板眺めてみる。
(討伐系の依頼はやる勇気がないしなぁ〜、出会った魔物と戦うくらいに今はしたいし)
なんて、考えているとお決まりのアナウンスが脳内で流れた。
『……おめでとうございます、裁縫のスキルレベルがレベル35からレベル40に上がりました……』
(……ん? なんか疲れてる……?)
そう一瞬思ったが、アナウンスを担当している天使も他の仕事もあるし、そんな日もあるかと考え直す。
それにしても、今回は一気にレベルが上がったなぁ。
そういえば、今回は一人一人の量が多かったしなぁ。だから、上がりにくくなっていたスキルも上がったのかもしれないな。
今回はスキルレベルが一気に5も上がっちゃったのは思わぬ収穫ってところかな。
(疲れている理由はわからないけど、お疲れ様です)
と労わる言葉をかけた後、すぐに、
「姫!! 季水狂いに来襲されたとは事実ですか!! お怪我は回復ポーションで治されたと聞きましたが、精神攻撃はされませんでしたか?!」
今更な心配をしながら駆け寄ってくる圭介さんに苦笑いを向けながら、僕の頰やら肩やらに触れて、無事を確認してくる過保護な部下に「大丈夫だよ」と声をかける。
「でも、ちょーっと驚いたから、やっぱり冒険者ギルド内でも護衛は必要かなって思った。今度からは、新人冒険者の訓練参加を頼まれても断っていいよ?」
「勿論です」
食い気味にそう言われたから、思わず体を後ろに少し仰け反っちゃったよ。……そういえば、
「あの子達の調子はどお?」
僕の従魔達の近況報告を聞いてみる。あの子達のことだから、真面目に訓練してるだろうけどさ。
しばらく、休息日以外はずっと別行動だから、どんなことをしているのか気になってたんだよ。
「そうですね、順調に鍛錬を重ねていらっしゃるようですよ。あとで確認してみると、成果が明確にお分かりになられると思います。最近は個別訓練ではなく、連携による攻撃練習や、どう連携すれば効果的な攻撃になるのか瞬時に考える練習をしてもらっております」
連携での攻撃かぁ……。やっぱり、単独での攻撃は単純になりがちだし、型にはまりやすいからね〜。
うん、やっぱり圭介さん達の目の付け所は違うな。僕だったら、単独での攻撃力を高めることを重点に置いちゃいそうな気がする。
あの子達は意志がしっかりあるし、僕が指示しなくても上手く連携を取れるような気がするしね。
そう考えた後、僕は圭介さんに「話を続けて」とあの子達の様子がどうなのかを話せと急かしてみる。
すると、圭介さんは苦笑いをしながら、
「指揮の役はやはりハッサク様が得意とされておりますが、意外にもククル様も得意とされているようで、相談しながら頑張っておられますよ。従魔の皆様と活動できる日も近いと思われます。あと数ヶ月と言ったところでしょうか」
そう教えてくれた。
(そうね、ハッサクはしっかり者だし、頭の回転も速いから向いてそう。それにしてもククルは意外だ。あの子はのんびり屋さんだし、ああ! でもいつでもそんな感じだから、予想外のことが起きてもあんな感じなんだろうなぁ。……それに実際、ククルがあのペースを崩したところは見たことがない。だから、ハッサクがパニックになった時はあの子は上手く支えてくれそうでもある)
「あの子達の才能を上手く発掘してくれてありがとう。これからもあの子達のことをよろしくお願いね」
そう声を掛ければ、圭介さんはとても嬉しそうに笑って、「勿論です」と快諾してくれた。
そんな言葉に、僕も嬉しくなってつられるように、微笑むのだった。




