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6歳編 その2

 

「姫、良かったな! 過保護な夜兎のことは気にしすぎんなよ、お前の判断は正しい。それも夜兎も内心では理解してるはずだ。それは良いとして、この時間帯はあれじゃなかったか? 確か、調合師の勉強の時間なはずだろ?」


 ほんと、姫呼びが定着したよなぁ……としみじみ思いつつ、まあややこしい格好や髪をしている僕も悪いからしょうがないと諦めるしかない。

 それに、僕が戦力外レベルでか弱かった時から知っている彼らだから、からかってそう言ってないことは理解してる。


 僕が不良に絡まれれば、護衛がいるのにも関わらず、護衛をかってでてくれるし、助けてくれる。

 まあ、それは申し訳ないから、僕の1日のスケジュールを信頼しているここを拠点にしている冒険者さん達だけに渡してるんだよね。

 だから、僕の行動は筒抜けって訳。


 こう気遣ってくれた彼は、さっき僕のソロ活動したい発言のフォローをしてくれた人であり、このギルドではトップクラスに入るチームである咲月のリーダー、湖波こなみさんだ。

 僕のことを第二の息子のように思ってくれている人で、事あるごとに僕の心配をしてくれるステキな冒険者さんなんだ。

 だから、こうしていつもとは違う行動をしている僕のことを心配してくれている訳で。


「ふふっ、大丈夫!わかっているよ。心配してくれてありがとう、湖波さん。湖波さんなら知ってるでしょう? 僕がどれだけ調合師の勉強に時間を費やしていたこと。あれだけ勉強してればね、調合師の資格も取れるよ〜」


 心配してくれたことの嬉しさにニコニコしながらそう言えば、湖波さんは躊躇うことなく僕の頭を撫でた後、


「まあな、把握はしてるからどれだけ勉強してたかは知ってる。まあ、あれだけ勉強してればなぁ、受かるわな。……そうなると、新しいスケジュールはどうなってんだ?」


 娘を心配する父親のように聞いてくるもんだから、クスクスと思わず笑った後、


「新しいスケジュールはギルドマスターに渡したあるから、そのうち新しいスケジュール渡されると思う。それを確認してもらった方が早いと思うよ」


 素直にそう答えれば、ニカって歯を見せて笑って、満足そうに「そうか」と湖波さんは言って、もう一度頭を撫でた。


「湖波さん、お聞きしたいことは聞いたのでしょう? 彼が待っています、家に帰りましょう」


 用事が終わった頃を見通して、僕の「ソロで冒険者活動をしたい発言」のフォローをした湖波さんの発言をそれをさらにフォローをした副リーダーさんである。そんな彼は晴乃はるのさんと言うのだが、湖波さんと同居しているらしく、毎日仲良く一緒に帰宅している。


(……2人とも男性なんだけどね)


 まあ、恋愛感情はないと断言していたし、実際そうだろうなと思っている。そう思えるのは、同居しているのも海より深い訳があるのを僕は知っているからだとも言える。

 ……なんて考えていると、いつのまにか晴乃さんの視線は僕の方に向いていて。


「……姫、今回は良かったですね。本当は1年前くらいからソロで冒険者活動したかったのでしょう?」


 僕がソロでの冒険者活動をしたいと思い始めた時期をズバリと言い当てる発言をされてしまった。

 だから思わず、


(……なぜにバレているの?!)


 なんて、首を傾げていれば晴乃さんにクスクスと笑われてしまった。……少し、恥ずかしい。


  「ふふっ、お前はすぐに思っていることが顔に出てしまうのですね。相変わらず素直でよろしい、好感を持てます。時期はなんとなく、過去の新人冒険者がやらかしをする時期が冒険者2年目ですからね。まあ、姫はソロで冒険者活動したいなぁって思うだけで止まっていましたけどね」


 褒められたはずなのに、複雑。

 まあ、僕の表情からじゃなく、過去の新人冒険者さんの行動パターンの傾向からそう思い始めた時期を当てられたんだと知れたことは、一安心できたけれど。


「私はあの時期から、ソロでの冒険者活動はできると思っていましたよ。姫は実力を過信しておりません、的確な判断だったと思います」


 晴乃さんがそう言ってくれるなら自信が持てる。


「しかし、進言する相手はあの夜兎さんですからね。私も彼には頭が上がらないものですから、お前って言ってしまうのはどうしても大人が嫌いだった頃の名残でして直りませんが、あの方には感謝しきれません。

 なので、姫のソロでの冒険者活動を解禁するように言えなかったのですよ。だから、夜兎さんに姫が意志を示した時は味方しようと話していたのです」


 苦笑いをしながら、晴乃さんはそう教えてくれた。

 頭脳派の晴乃さんに、的確な判断だったと褒められるのは嬉しい。

 それに、ソロでの冒険者活動をさせた方が良いと進言じゃなくても、2人がフォローしてくれたことにより、それが許されたのだからそんな申し訳なさそうにする必要はないと思う。むしろ、感謝の気持ちしかない。


「ふふっ、ありがとう。晴乃さん」


 そう話を締めくくれば、晴乃さんは瞬時に湖波さんの腕を掴めば、苦笑いしながら空いている方の手で手に持っていたギリギリまで中身が詰められた鞄を渡してきたので素直に受け取る。

 いつもの洋服の修復作業かな。帰るみたいだし、明日までに仕上げておけばいいか。


「わかった。明日までに仕上げとくね。……もう! 修復するのは嫌じゃないけど、もうちょっと丁寧に使ってよ、湖波さん!」


 小言を言いつつ、晴乃さんに引きずられて帰る姿を見送った後、僕は鞄の中身を机に広げるように出していく。

 洋服の修復作業はボランティアだ。ボランティアで僕の護衛や街の見回りをしている冒険者さん達に少しでもお礼したい一心で、依頼の際に着たことで傷ついた洋服の修復をしているの。

 このおかげで、後天性スキルの裁縫を入手できたし、かなりスキルレベルが上がった。だから、お金の報酬は必要ないんだ。


(……お金は調合師として活動すれば、十分な金額が入ってくる。それくらい、回復ポーションは需要が高いんだ)


 僕の回復ポーションは基本的に貴族や富裕層の国民、高ランクの冒険者が対象になっている。

 それは納得いってないけど、僕の回復ポーションは国民に売るには高額になりすぎてしまうくらいの質なんだと説得されてしまえば、しぶしぶそれを受け入れるしかないでしょう?

 だから、この年齢にしてはありすぎるくらいの収入が入ってくるし、しかも鍛錬している間は生活費の全ては有栖家の収入から払われちゃうから、使い道がない。


 せめて、自分の欲しいものは自分で買おう! と決めても、お金を用意したんだ。……用意したんたんだけど……。

 まるで自分の孫かのように可愛がってくれている雷紀さんと朱基さんが、どこで仕入れたのか欲しいものをプレゼントしてくれたから、お金は貯まる一方となってしまった。

 嬉しいんだけどね、嬉しいんだけど……自分で言うのもあれだけど甘やかしすぎはよくないと思うの。


 だから、せめてもの恩返しをしたくて、傷ついた洋服の修復をボランティアでかって出たんだけど、あまりに喜んでくれたから、気合いを入れて修復してたら気がついたら裁縫のスキルレベルは35。


 ……むしろ、恩恵の方が大きかったなぁ。


 と考えながら、一発で糸を通した後、針に糸を数回巻きつけ、玉結びをする。

 ふぅ、と短く息を吐き、手前にある服を取ろうとすれば、僕の隣にある椅子に申し訳なさそうな顔をしながら、修復する服を増やす冒険者さんに苦笑いをした。


「優先順位は、湖波さんが先だからね?」


(……全くしょうがない人達だ)


 まあ、今日は鍛錬がない日だし、いきなりソロでの冒険者活動をするつもりもなかったから、今日のところはボランティア活動といきますか。



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