その5!
部屋に入れば、叔父様がすっきりしたような顔をしてソファーに腰掛けていた。
どうやら、すれ違いはなくなったようだと安心して、叔父様と向かい合うように座れば、
「気を遣わせて悪かったな、零。忙しいのに遊騎にもすまないことをした。仕事もあるだろうし、俺が帰宅した時点で帰らせたよ。……お前達のおかげで、って主に零のおかげだが、圭介の気持ちを知ることが出来た。ありがとう」
そうお礼を言われてしまった。
いやいや、僕が2人の関係がもどかしくて勝手に行動しただけで、お礼を言われるようなことはしてないし、ただのお節介だったように思う。
けど、本人がそう言っているんだし、まあそう言うことにしておいた方が、お互いのためになるか。
「いえ、僕が2人の状況がもどかしくて勝手にしたことなので気にしないでください。それより、ご相談がありましてよろしいですか?」
2人の関係が良好に戻れば良いんだ、それ以上のことは望んでいないのだから。別にお礼を言われるようなことはしていない。
それより今は、新しく従魔にした4匹の謎のもふもふをどうしていくのかを相談したい。
「そうか。ありがとうな、零。相談してもいいかって、当たり前じゃないか。俺は保護者、先生、相談役の全てを玲亜から頼まれている、気を使う必要はない。身内の願い事は出来るだけ叶えてあげたい主義なんだ」
そう言いながら、穏やかに微笑んだ叔父様の顔を見たら、何とかなりそうな気持ちになってくる。
「ありがとうございます、叔父様! 実はですね、先ほどのこと何ですが、4匹新たに従魔として契約をしまして、鑑定《魔物》でステータスを見たのですが、不思議なことが起きたのです。……それが、不思議なことにスキル欄が無くてですね、戦えるみたいなのですが、どう強くしてあげれば良いのかわからなくて困っているのです。それで叔父様に相談できたらなと思いまして……」
そう相談をした後、叔父様は考える素振りをした後、なぜか首を傾げた。そして、
「ごめんな、叔父様の見間違えでなければその4匹の従魔が見当たらないんだが‥‥、零の部屋か温室にでもいるのか?」
戸惑ったようにそう聞いて来た。
その質問に僕は動揺し、4匹を確認すれば、間違ってなければ目を合わせないようにそっぽを向いているように思えた。
(‥‥姿を隠すことが出来るのか)
新たに、この謎のもふもふの能力を見つけられたような気がした。
「ここにいますよ、4匹とも。僕には問題なく見えているので姿を隠せるのだと思います。この人は信頼できる人だ、僕達の今後のためにも姿を現してほしい」
叔父様の質問に答えた後、4匹のもふもふにそう頼めば、彼らは顔を見合わせて、まるで頷き合うような仕草をした後、全員同時に力むように小刻みに震えた。
その震えが止まった後、叔父様は眼を限界まで見開いて驚いていたから、本当に4匹のもふもふのことが見えていなかったんだろう。
叔父様はしばらく呆然とした後、すぐに考えるような素振りを見せ、
「指導している身として魔物や生物には詳しいつもりでいた。……結論から言おう、俺はその生物と見た目が合致する魔物や生物の名前を知らない。零がとりあえず、今の段階で知りたいことは、新しく従魔になったもふもふを自分の身を守れるくらいの強さにする方法なのだろう? それなら問題はない、使える力のことを概要だけで良いから教えてほしい」
正体がわからなかったのは残念だけどなんて頼もしい一言なのだろう、さすが叔父様!
その言葉に有難く甘えることにした。
「そうなんですか‥‥、謎のもふもふは謎のままなんですね。まあ、この子達がどんな存在であれ、一度家族になった子を見捨てることは出来ません。今は、正体がわからないままで良いです。時にわからない方が良いこともありますから……」
それに、さすが叔父様! 僕のことよくわかってる!
「そうですね、今は正体よりもこの子達が生き延びられるように強くする方法の方が重要だと思っています。エメラルドグリーン色をしているもふもふのククルは、植物を操る力を持っています。オレンジ色をしているもふもふのハルクは火、コバルトブルー色をしているもふもふのリリアは水、それぞれの属性を食べることにより、操ることが可能なようです。最後に紫色をしているもふもふのシアンは、心の闇を食べて、安らかな眠りを与える力を持っているようです」
‥‥うーん、叔父様が『魔物や生物には詳しい』と言うくらいだから相当な知識量を持っていて、この謎のもふもふである4匹を知らないと言うのだから、叔父様を超える知識量を持っていたとしてもわからない可能性の方が高いだろうなぁ。
まあ、さっきも言ったとおり時にわからない方がいい時もあるし、正体がわからなくても全然良いけどさ。
今重要なのは、この子達をどう強くしていくかだ。
最強にはなりたくはないが、ある程度高いくらいにつく者として、強くなる努力をしなければいけないし、大切な人を巻き込まないためにも強くならなければならない。
一番そばにいるこの子達が巻き込まれやすくなるのだから、自分で自分の身を守れるくらいにはなってほしいと考えている。
でも、良かった。叔父様から、この子達が自分の身を守る手段を身につけられないわけじゃないってことが告げられて、少し安心したよ。
「‥‥そうだな、お前はそう言う奴だ。明後日の鍛錬開始日までにその子達のメニューも考えておこう。ハッサクやサクアは人懐っこい部分もあるし、他の人が鍛錬の指導者にしても大丈夫だろう。……しかしククル、ハルク、リリア、シアンはお前の側から離れなさそうだし、元々の予定から指導者は俺だったが、尚更そうした方が良さそうだな」
(‥‥そう言う奴ってどういうことだろう?)
叔父様は僕の見えない先が見えているから、考えすぎるのはやめておこう。恐らく、悪い意味ではないような気がするから。
まあ、僕の場合、表上ではまだ第2領主候補とされているけれど地位は継ぐことなく、世間には明かされることはないが、有栖家に伝わる伝承性スキルの後継者となることが決まっている。
だから尚更、お父様と同じく、伝承性スキルの後継者である叔父様が指導しなければならないということだろうか?
そう考えていると叔父様は穏やかな微笑みを浮かべ、ククル、ハルク、リリア、シアンの方を見てこう言った。
「‥‥指導の意味で厳しい言葉を言うかもしれないが、本当の意味でお前らを傷つけるつもりはない。
俺を恐ろしく感じるかもしれないが、零やハッサク、サクアやお前達を含めて敵対するつもりはないとそれだけは約束をする。……信用してくれとは言わないが、零のために鍛錬だけは姿を見せてほしい」
叔父様は信用できる人だ、できるならこの子達には理解してほしい。これから、何年も側にいることになる人だから。
だから、こうして人間に怯えていることを察して、叔父様が行動してくれたことは有難かった。
きっと、僕が何と言っても、この子達4匹は怯えて隠れてしまうと何となくそう感じたから。
叔父様がそう言ってくれて、まず行動したのはハルクとリリアだった。
さっき、僕がククルにしたように、まるで頰にキスを送るように一瞬だけ、叔父様の頰に寄り添って、それは「わかったよ」って伝えるように見えた。
ククルとシアンは近づきはしないものの、さっきまで感じていた強張りが少し和らいだような気がした。
(‥‥良かった。ほんの少しでも叔父様のことを信頼してくれたようで)
「じゃあ、叔父様。僕とこの4匹の鍛錬の指導、よろしくお願いしますね」
これで安心して鍛錬に励める気がした。




