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その5!

 

(……どう答えよう……)


 確かにサクアとハッサクは脳内のステータスでも、ユニークモンスター扱いはされている。

 しかし、この子達は神様からの贈り物で、しかもユニークモンスターの中でも異質中の異質であり、下手に話してしまえばこの子達が危ない目にあってしまう。


 しかし、有栖家に忠誠心の強い彼が僕の不利益になる情報を流す訳がないとは言え、ここは店内誰でも入店可能な店の中だ。誰が聞いているかはわからない。

 そう深く考え込んでいると、薬剤店の店長は心配そうに顔を覗き込んできたと同時に、誰か僕の肩を叩いてきた。


(……っ! 気配がなかった……っ!)


 と慌てて後ろを振り向けば、そこにいたのは外で待機させていたはずの圭介さんで、僕は背後を取られた恐怖感で強張っていた体の力を抜いた。


「まるで、背後を取られた暗殺者のような反応でしたね。頭が冷えたので、お迎えに上がれば、随分の追い込まれたような顔をしていらっしゃったので、ナイスタイミングでしたか?」


(正直、喉から手が出るほど欲しかった助けだよ)


 内心そう答えて、いかに自分が動揺していたかを知った。


(……これじゃあ、特別だって言っているのも同然じゃないか……)


「……完璧だったよ。この子達は人間に追われてて、怪我をしていた状態で保護したんだ。だから、あまりユニークモンスターだと言うことを言わないで欲しい、また狙われないか心配してたところだったから思わず動揺してしまったんだ。……まあ、この子達は間違えなく、ユニークモンスターだよ。僕に言えることはそれだけだ、襲っていた人間と遭遇しないとは限らないから黙っていてほしい」


 そう言ったとしても、聡い人達だ。探ろうとすれば、探れるだろう。

 しかし、彼らはしないと信じてる。それをしないと言う気がするからだ。


「……大切なんですね」


 そう圭介さんが聞いてきたから、僕は直ぐに頷いてみせた。誰が言おうと関係ない、この子達は従魔であること関係なく、


「あたりまえでしょう? 君は家族のことを、家族のように大切な誰かをわざわざ戦場に連れ出すようなことが出来るの? 少なくとも僕には出来ないね。……ユニークモンスターってだけで貴重であるのに、人間に危険な目に遭わされていたんだから、初対面でこの質問されたら警戒してしまうのもしょうがないでしょう?」


 ハッサク達が家族として大切だから、大切だってことをちゃんと言葉にする。


「まあ、だからと言って僕が守り続けて、この子達が弱いままなのは、この子達を失わせる危険性を高めるだけなのも事実。だからこそ強くならせないのは間違っているとは思うけど、この子達の心を奪ってまでも強くするために貶すような脅しはしたくない」


 家族だから失えば悲しい、それでも家族を生かそうと人格を否定してまで強くしようとするのは間違っていると思うから、強さを知る人に聞けばいい。


「だからこそ先駆者達の知恵を借りて、命を落とす可能性に導がないようにしたいと思うのはいけないことなのかな?」


 そう聞けば、圭介さんは見たことがないくらい優しく微笑んで、僕の手のひらを壊れ物を扱うかのように優しく指先からすくい取り、指先に口付けを落とした。

 あまりに自然に、当然の行為かのようにするもんだから、僕は思わず呆然とした。


「そうですね……、もし夕陽を戦場に行かせろと命じられても連れ出すことは絶対に出来ないと思います。人間に依存しやすい俺は尚更良く理解出来ます。あなたがどれだけ従魔達を愛している気持ちが強いことを。……そんなあなたが、ユニークモンスター関係の質問をされて冷静さに欠けてしまうのも致し方ないことだと思います」


(……本当は聞きたいよね、僕が冷静さを欠けさせた理由を)


 ……気になり屋さんの圭介さんだもの、聞きたくてうずうずしているはずだろう。それでもこの場では耐え、しかも僕の言い訳のフォローまでしてる。

 しかも、指先へのキス。これは、強者からの祝福または貴族への忠誠を誓うと意味だということは知っている。


 前者は冒険者がする指先へのキス。

 後者は騎士職に分類される職業の人がする指先へのキス。

 それがわからないほど圭介さんが無知じゃないってことは知っている。それに、圭介さんはもう自分は冒険者じゃないって理解してる。だから、さっきした指先へのキスは貴族への忠誠を誓うキスってことになる。


(……僕なんかに忠誠を誓っていいのだろうか、圭介さんは叔父様に誓った方が……)


「うふふ、本当にわかりやすい人ですね。良いんですよ、先生に抱く感情は忠誠ではありませんから。……貴族なんて嫌いだったんですよ、俺が関わってきた貴族は傲慢な奴らばかりでした。今回の護衛を引き受けたのは正直、夕陽がいたからと言うのもありますし、何よりもあなたを失って悲しむ先生を見たくなかったからです」


(ですよねー、そうだとは思っていたよ)


 緑水の位として、寄付出来るのは薬に関わる人間と他の貴族も寄付している孤児院くらいだ。それ以外の寄付も本来ならしたいが、それ以外は国民の支持が緑水の位に偏り、王族からの反感を買うから無理だから冒険者とかに嫌われていてもしょうがないとは思う。


(……まあ、叔父様の仕送りとして年に1度、おお目に送り、冒険者ギルドや生産者ギルドにも支援はしているのだけど、あくまでも国から見れば叔父様からの寄付だからね)

 

 なんて考えていると、また圭介さんはクスクスと僕を見ながら笑った後、すぐに真剣な表情になって、


「だけど、あなたは他の貴族と違った。身分差を気にすることの好きな奴らと違って、笑顔で手を握り、立場上敬語ではないけれど、丁寧に接してくれていた。

あなたは誰かを大切に想う気持ちが強いあなただったからこそ、自分の気持ちと向き合おうと素直に思えました。あなたに言われたこと、あなたに頭を冷やせと言われた時から考えていたんです。

そして、結果から言えばあなたの言う通りだと思いました。俺が大切にし、大切にされていた人物はこのくらいの心の闇など、笑って受け入られる器の大きい人だってことを、臆病になり過ぎて忘れておりました。

きっと、俺の大切な人は、俺の異変にいち早く気づいていたと思います。しかし、器の大きい彼は俺が言いたくなるまで、長い年月になろうとも待っていてくれていたことを今となって気づきました。

それを気づかせてくれたのは間違えなくあなたです」


 気づけるだけまだマシだ。失ってから後悔したら、もう取り戻せないのだから、だから叔父様が側にいるうちに気付けたのは、圭介さんが素直に自分と向き合ったからだ。

 僕は気づくきっかけに過ぎないのだ。僕が与えたのはきっかけで、それ以上のことはなにもやってない。


「納得できなそうな顔をしていますね。あなたのことだから、自分はきっかけを与えたに過ぎないと考えているのでしょうけど、そうすることが人にとってどれほど難しいことなのか理解していないからそう思えるんですよ。……まあ、そう言うところが忠誠を誓いたいと思った理由の一つですけどね」


 ……なぜに納得いってなさそうだとか、自分はきっかけを与えたに過ぎないとか考えていたのがバレたんだ? そんなに顔に出やすいだろうか?


(……まあ、顔に出やすいのは治らないし、僕の考え方で好感度が上がったなら、心を読まれるのは諦めるとするか。人脈が広がるのは願ったり叶ったりだからね)


 なんて考えていると、圭介さんはこう提案してきた。


「一つ一つ丁寧に教えてくれるわけでもなく、あえて厳しくし、自分で気づかせようとしてくれたあなたを主人にしたいと思いました。

しかし、俺は先生から離れることはできませんから、あなたが必要とする時、俺は全力であなたの味方であり続けると誓います。

あなたはこれからたくさんの支持者を集め、慕われる方になっていくと思います。貴族らしくないとは言え、あなたは貴族らしく、パワーバランスが崩れないように配慮して行動しているのも理解しています。

ですから、俺はあなたの部下にはなれません。これでも俺は元S級候補の冒険者です。周りから見れば、実力者の類には入ります。なので、協力者として暗躍させてください。

遠くにいるからこそ出来るサポートを、俺にさせていただけませんか?」


 正直、圭介さんがなぜそこまで僕に個人的に力を貸そうとしている理由はわからない。けど、彼ほど強力な協力者はいないと思う。

 だから、なぜ自分が? とは思うが、断る理由もないし、協力者としてなら断る理由もない。

 しかも、圭介さんは貴族のパワーバランスを考えてくれている、そして崩れないためにはどう行動すれば良いのかも理解しているから、僕の意思関係なく、僕のために行動することはないだろう。


「いいよ。圭介さんは好奇心旺盛だからね、後ろ盾にもなってあげる。叔父様じゃ、直系からは外されているからね、僕の方が発言力が強いしさ。何よりも圭介さんに何かあれば悲しむだろうから、僕の協力者として保護下にいた方がいいだろうしね。

貴族のパワーバランスを崩れるかもしれないと知っても尚、僕の協力者になりたいと言ったのなら、有栖家の力が強くなりすぎるような行動を自分の判断でしないだろうし、何よりも僕は人より強くなりづらい体質だ。生き抜くためには圭介さんくらい強者の縁を強固にしておいても、バチは当たらないだろう。

サポート要員として、僕が困ったことがあれば助けて欲しい」


 今まで守ってきたのは上からの命令による護衛、これから先で僕を守るのは僕に忠誠を誓った身として守るということになる。

 そうなれば、何かあれば彼の責任は他の護衛よりも周りからすれば強くなると言うこと、それを理解してないと言うほど彼は愚かではないと信じている。

 僕は責めないが、周囲の人が僕ほど甘い人間ばかりではないからね。


「‥‥その代わり、失敗はできないよ。それは理解しているね?」


 一応釘は刺しておくが、それを聞いても尚、圭介さんは首を縦に振るだけで、やっぱりやめとくとは言わなかった。それだけの覚悟があれば、十分だ。

 なんて、考えていると、今まで空気を読んでか、黙っていた薬剤店の店主がようやく口を開いた。


「‥‥スライムのユニークモンスターが珍しかったものですから、何気なく質問したのですが‥‥、その子達を従魔にした背景にはそんなことがあったんですね‥‥。それでは神経質になるのも理解できます。

本来なら僕もあなたに忠誠を誓いたいところですが、僕の立場上、そう言う訳にもいかない訳がありましてですね‥‥、今回聞いたお話は墓場まで持ち帰ることでしか協力が出来そうになさそうです。

忠誠心だけはあなたに、捧げることをこの場で明言させて頂きます」


(‥‥半分本当だとはいえ、半分は騙しているようで申し訳なくなってくる‥‥。でも、こればっかりは誰であろうとも、例え家族であろうと、忠誠を誓ってくれてようと話すことは出来ない‥‥)


「‥‥それだけで十分だよ、ありがとう。さあ、今日はとりあえず、お暇することにしよう。色々教えてくれてありがとう。また、近々来るよ。その年はよろしくね」


 片手を上げながらこの場から去ろうと一歩踏み出せば、圭介さんはいつの間にか移動をしたのか、薬剤店の扉をあけてスタンバイしていた。


(‥‥優秀すぎる)


 なんて考えていると、


「あのっ‥‥!」


 不意に店主は引き止めてきたため、何事かと振り返ればまるで告白をしようとしている学生かのような顔をして、


「僕の名前は、楠木雪兎くすのきゆきとって言います。これからもこの店をご贔屓にしてくださると幸いです!」


 なんて自己紹介をするもんだから、僕は微笑ましく思い、思わず笑った後、何も言わずにまた片手を上げて今度こそ振り返ることなく、店先に出た。

 すると、待ち伏せをしていたかのように1人の男性が薬剤店の壁に寄りかかっていて、圭介さんが警戒してない辺り、悪い人ではないんだろう。


「‥‥お初にお目にかかります。楠木和羽くすのきかずはと申し上げます、零様」


 壁に寄りかかっていた人物と同一人物とは思えないくらい優雅な仕草で彼は自己紹介をし、最敬礼をした後、上品に笑う。


「いつも玲亜様にはご贔屓にして頂いております、楠木商会の者です。本来なら、夜兎様の元まで私が足を運び、零様の元へとご挨拶に向かわなければならないところ、店先での挨拶で申し訳ございません。……私の兄弟件幼馴染がお世話になりました。適当にあしらうことなく、寛大に対応していただきありがとうございます」


(……ああ、さっきの養子縁組をしてくれた家族って彼のことだったのね)


「構わないよ。慕ってくれるのは嬉しいからね」


「そう言ってくださると、雪兎も喜びます。奨学金の件から、有栖家の方々に盲信している面がありますので、これからも良い関係をうちの者と築いていただけることを検討していただけることを願っております」


(‥‥さすが商人って感じだなぁ。ここまで堅苦しいと息苦しい)


 苦笑いをしながら僕は思わず、和羽さんの手を取り、


「自己紹介、丁寧にありがとう。僕は、知ってはいるだろうけど、有栖零。‥‥そこまで堅苦しくなる必要はないよ。水季くんが正式な後継者になっていない今、僕は叔父様より上の立場にいるけれど、いずれは叔父様のような立場になるような男だ。……必要最低限の礼儀は必要かもしれないけれど、そんな堅苦しい礼儀はいらないよ」


「そう仰られましても、夜兎様もかなりの地位にいらっしゃる方ですので……」


「ふふっ、そうみたいだね。でも、雪兎さんと仲良くしていくんだから、兄弟である君がそんな堅苦しい態度をしていたら、いつまで経っても雪兎さんも堅苦しくなってしまうかもしれないよ?

他の貴族の目が届くところでは堅苦しくなってもらわないと君が困ったことになってしまうだろうけど、君はそんな間違いをするような人ではないでしょう?」


 だから、そんなに堅苦しい態度じゃなくて良いんだよとそういう思いを込めて、手をもう一度握り直せば、困ったような顔をして、


「‥‥自分、商会の次期社長としての教育を受けていまして、元々からこういう話口調なんです。砕けた口調と言われるとこれが限界なんですよ。基本的に家族以外に対しても敬語でしてご希望に添えず、申し訳ありません」


 ある程度、堅苦しさが取れれば良かったから、別にそんなに深刻そうに考えなくても‥‥とそう考えながらも、こういうタイプ、お父様好きそうだなとも同時にそう思った。


「そこまで深刻に考えなくて良いよ。ふふっ、その話口調で充分、ご希望に添えてるから安心して? 自分がどのような立場にいるかくらい理解はしているから、敬語を外して話せてもらえるとまでは思ってないよ」


 とにっこりと微笑めば、安心したように和羽さんは息を吐いた後、


「ありがとうございます。自分、楠木商会の役員ではありますが、まだ父が現役でありますので、運び屋を行なっております。何か、運び関係に困ったら自分を頼っていただければ幸いです」


 そう宣伝してきたものだから、ああさすがは商人だとそう考えながら苦笑いをし、「ぜひその時は頼んだよ」と一声かけ、握っていた手を離し、その場から離れたのだった。


「次はどこに行かれます? おすすめは古本屋と本屋ですね。あとのいきたい候補地は明日に後回しにして、その上等な服装から、この辺の服屋の服に着替えた方が安全かと」


(‥‥確かになぁ。さすがは圭介さんだ)


 有栖家の人間が好む服装はシンプルだから、街に馴染みやすい。しかし、貴族であるため、生地は上等なものを使用している。

 見る人が見れば、貴族であるとわかると思う。


「それで良いよ」


 さて、次はどこに行こうかな?




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