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その6!

 

 圭介さんとの話し合いの結果、まず服屋に行き、シンプルめな服装を購入。狙ってくださいと言わんばかりのシンプルでありながらも上等な服から、着替えさせてもらった。

 何年も過ごすから、何着かコーディネートをし、セットで購入をする。そのためか、すでに圭介さんの両手は塞がれ始め、仕事だとは言え、荷物持ちをさせることに申し訳なく思ってくると……。

 それを察したかのように「仕事ですから、お気にせず買い物を続けて下さい」と疲れすら感じさせない爽やかな笑みを浮かべて言ってくれ、その優しさが有難かった。


 次に向かうのは一番遠くにある古本屋。今日の目的の本命中の本命。

 ……だったんだけど、それまでに道なりにあった花屋により、種やら肥料やら諸々を購入してしまった。流石に持ちきれないだろうから、圭介さんの影に隠れてマジックバックを操作し、収納。

 これは知らなかったのだけれどマジックバックは高価な部類に入るアイテムらしくて、持っていれば盗賊に狙われやすくなるそうだ。‥‥本当世間知らずで申し訳ない。


 種やら肥料やら買ったのは、温室は今日中には完成するらしいし、明日はずっと畑仕事になる予定。運が良いことに、古本屋の通り道に花屋があって良かった! 明日は温室整備が始められると思うと、明日が待ち遠しい。

 しかし、修行開始日前日に畑仕事にするとなると、地獄すぎるからね。‥‥子供だから体力もないし、気をつけておかないと。


「零姫、休憩を取られますか? この街の古本屋‥‥と言いますか、この街以外の街でも街から離れたところに古本屋は店を構えているので行き来は大変でして、住民とか役所の人間すら行かないくらいに遠いですから、休まれた方が良いかと。……来るのは有名所の研究者の方が冒険者を雇って行くくらいなものです」


(‥‥そりゃ、そうだろうね。取り扱っているものが、バレたら困るものだもの)


「‥‥いや、平気だよ。早く行って、早く帰ろう。

 遅くなればその分、危なくなる。早く用事を済ませて、今日は本屋によらず、そのまま帰ることにする。夕陽くんも心配だからね」


 恐らく、古本屋はセキュリティーはバッチリだ。古本屋の管理下で盗賊に襲われることはないと断言できるくらいのセキュリティの高さを誇ると有栖家が管理する書物には書いてあった。

 古本屋とは、店舗を開いた人物の血縁者が後継者となり、長男だから継ぐ、とかの年功序列でもない。完全指名制の、実力主義な世界なのだ。そして条件も厳しいことから数も少ない。

 これは王族ですら知らない情報で、古本屋についての情報は、緑水の位である有栖家の秘密書庫で厳重に保管されている。


 僕ら、有栖家は王族の完全なる味方ではない。それは国民を大切にする王の味方はするが、基本国民主義の立場にあり、貴族の中ではほんの僅かに存在する中立派の貴族一家である。

 他に中立派に所属しているのは傭兵族、騎士族‥‥など元々は一般市民で、成り上がりをした貴族がそうだと言われている。


 あとは貴族の血筋で所属しているのは、僕達緑水の位の血族であり、一番近しい部下である水のすいのくらいくらいかな。

 まあ、水の位のところから王族に仕えている人もいるけれど、国民優先の選択する精神は大事にしているらしいし、それさえ理解していればどうなりたかろうと構わないのが有栖家の考え方だから特に問題視するつもりはないらしい。

 その人達以外は基本的に国民優先主義であり、中立派の人間が水の位に多いのは確かだ。


 古本屋の店主も国民だ。古本屋は特殊ではあるし、一般市民では稀なことであるが、血縁スキルを所持しているため、今の王族に見つかり、利用されないように過ごせるようにしてあげたい。

 しかし、よっぽどの鋼のメンタルでなきゃ、常にタチの悪い人間に利用されるかもしれないと考えながら、過ごすのは随分と気を張りながら生活をするということななかなかしんどいことだと思う。

 まあ、殺意があるまたは害を成そうとしている者は古本屋には近づけないのだが、相手の気が変わって情報が漏れることもない訳ではなく、そこらへんにも気をつけておかないとならないのだから。


 なぜそこまで王族に見つかることを僕達は恐れているのか? ……それはなぜかと言うと、王族が隠しておきたいと望んでいる情報を古本屋では売っているからだ。

 その使命からか、古本屋の血縁者からは血縁スキルが所持されるようになったんだと思う。


 そんな貴重な人材であり、守るべき一般市民を失う訳にはいかないから、ある程度負担を減らすためにも有栖家は王族が隠蔽している情報が乗る資料を集めている。

 守りたいのは古本屋じゃない、王族が隠したいと望んでいる本質を研究者がたどり着き、命を奪われないためにも、王族から一番離れているうちの屋敷で命が狙われるくらいの本は有栖家が保管しているのだ。


 守衛とは言え、圭介さんに古本屋がなぜ町外れに存在するのか、その理由を見せることをすれば、一般市民である彼は王族を敵に回すことになる。

 それは部下ではない、協力者である圭介さんは知らなくていいこの世界の裏の事情だ。


「圭介さん、そろそろ古本屋に着きそうな予感してきたよ。古本屋には僕1人で行く。大丈夫、ここから先は襲われることはない。……圭介さんはここで、誰か来ないか見張っていて」


(‥‥協力者のままでいたいのなら、これ以上、貴族の世界に踏み込んではいけないよ)


 圭介さんは何か言いたそうな顔をしていたが、異論は認めない、そんな雰囲気を察してか、その場で立ち止まり、敬礼をした。

 僕は何も言わず、圭介さんに背を向けた。そうした後、片手を上げる。そして、左右に手のひらを振った後、僕はそのまま森の奥まで進む。


(‥‥やっぱりね。ここの店主は随分と力が強く、そして賢い人だ)


 僕が何歩か、歩いた瞬間、目眩が起こったと錯覚し、治った時には景色は変わり、古本屋までたどり着いていたんだから。


「‥‥お待ちしておりました。有栖玲亜様の次男、有栖零様」


 やっぱり、商売人だな。お辞儀が綺麗。


「常々お話は玲亜様より伺っておりました故、夜兎様もお住みになっておりますし、いつかはこちらへいらっしゃっていただけると誠に勝手ながら、このような導き方になるよう、設定させて頂きました。事情の通り、古本屋は命がけの商売。偽名で申し訳ないのですが、サクとお呼びくださいませ」


 そして、そこには古本屋であることと、咲と名乗った、15歳くらいの少年が僕の目の前に立っていた。

 こんなに年齢の若い者が、すでに命がけの使命を果たしているのかと思った。

 しかし、すぐに何らかの事情もあるだろうし、そして何よりも、この優秀さを見れば業務をこなせている証拠だと思い直す。


「構わないよ。君達には酷な使命を背負わせてしまっているというのに、命の危険に晒すような真似まではさせられないよ。幼く未熟な僕ではあるが、君達の手伝いを少しでもしたいと考えている」


 自分で言っていて、なんて偽善な言葉なんだと思った。お父様なら、きっと彼らの力になれるようなことが出来ていただろうなと思い、自分の未熟さがもどかしかった。

 そんな僕に咲くんは、


「いえ、貴族でそう言って頂けるのは有栖家の方々くらいです。なので、安心して書籍を売ることができます」


 にこやかに励ましてくれた。本当なら、僕の方が激励の言葉をかけなければならないと言うのに。


「古本管理者の弱体化により、こちらの古本屋と統合した古本屋の商品に、我々では万が一のことがあれば守りきれない書籍を数冊ありましたので、こちらの方を購入していただければと」


 事前に古本屋関係の代金はお父様より僕が預かっているため、値段が高いってことがない限りは購入できるはずだ。


「そちらの本を見させてほしい」


(まあ、どんな本であれ、買うのは大前提だけど)


「ええ、もちろんです。

玲亜様にご褒めいただいたことがあるんです、僕の古本屋の守り技術は見てきた古本屋の中でも優れているって。もちろん、僕も自分の力でこの古本達全てを守れる自信があります。

しかし、確実にこの古本達を守るためには、有栖家の方々にお任せした方が良いのも理解しております。その面でも絶大な信頼を寄せておりますので、もし他にもほしい書籍があれば遠慮なく、お申し付けくださいませ」


(‥‥どこの商売人も商売上手なことで。

 まあ、気になる本があればこの街に割り振られた予算内であれば購入しても良いとは言われているけれどさ)


 完全に、本の虫だと見抜かれていると思った。まあ、それはどうしようもないし、スキルについての話が書いてある本は買おうか検討してみよう。


「今回、有栖家の方々に購入して頂きたいのはこちらの3冊となります。右から魔法理論、精霊存在説、魔力存在説の3冊です。

この3冊の値段はこのくらいになるかと」


 地球で言う計算機で計算した後、僕に合計金額を見せてくる。合計金額はこの街の古本購入予算の5分の1くらいなので、買えそうだ。

 そうなると、残りの5分の3くらいは念のために予算として残しておきたいから、僕の趣味で今日のところ選べるのはあまりの5分の1ってところか。


(‥‥まあ、予算の5分の1と言ってもかなりの金額ではあるんだけどね。さすがは貴族家系と言ったところか)


「購入しよう」


 これくらいしか役には立つことができなさそうだからね、購入を迷う必要もない。



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