ほのぼのと2日目!
脳内のステータスを閉じたと同時に『お母様』は起きた。……危ない危ない、倒れてすぐにステータスを見ているなんて不自然だよね。
それよりお母様だ、看病疲れで顔色が良くないみたいだね……。随分、心配かけちゃったみたい。
少しでも安心してもらえるよう、もう大丈夫だと伝えれば一安心したような表情を浮かべてくれ、僕もほっと胸を撫で下ろした。
しかし、それは一時の感情で念のため、数日は激しい運動は控えるように言われてしまった時には少しだけがっかりした。
むー、探検できないのはつまらないが、ここまで心配されては仕方がないよね。今の有栖零の身体はすぐに体調を崩しやすい、4歳の身体なんだから。
この体とはこれから、長い付き合いになる。労わることも大切なことだからね。
そんなことを考えた後、いつのまにか部屋から移動しようと動き始めたお母様の背中の方へと視線を移す。
すると看病疲れからか、どこかよろよろと足取りが不安定な動きで部屋から去っていく姿を、僕はただ転ばないように部屋から出て行くまで見送り続けた。
その任務を終えた後、自室にある本棚の本を読むことにした僕は、ゆっくりとした動きでベットから体を起こす。
お母様からは運動は控えるように言われたが、じっとしてるのは暇すぎるからね。
激しい運動しないから許してね!
(確か、僕のスキルは成長、育ちの手、探索、テイムだったよね?
……魔物関係と植物関係の本を読むのが妥当ってところか。あとはこの世界の文化と地図かな。地図を見ることで探索スキルに地図が登録されるらしいし)
何回も動くのめんどくさいし、関連する本全部持って行っちゃえ! なんて、調子に乗って3回くらいに分けて読みたい本を持っていったら、サイドテーブルに本のタワーが出来てしまった。
(前世から本の虫だったからしょうがないか。仕方ない! まずはこの世界の文化を知ることを優先にすることにして、サイドテーブルにはそれ関連の本を読むを置くことにしよう。あとは分類ごとに分けて床に置いてと……)
整理し終わった後、一冊の本を手に取って、本を開いた。……その後からの記憶が全くなく、気がついたら夕方になっていて、持ってきた全ての本が僕を囲むように置いてあった。
(えっと……、確か起きた時には恐らく朝だったはずなのに……、夢中になって読みすぎたのかな?)
そう考えながら、時間感覚がないし、何より全ての本を読んでしまったかも自覚がない。
ここまで自覚がないと、流し読みをしていないか心配になってくる。
そんな心配を取り除くために、ちゃんと内容を覚えているか表紙とタイトルを見てどんな内容だったか、どんな図鑑だったか、どこの地図が書いてあるのかを確認してみれば、思い出せたので安心した。
その瞬間のことだった。脳内でピロンッと軽やかな音がなり、
『おめでとうございます。年齢ごとに設けられた冊数条件を満たされましたので《後天性スキル》、速読を手に入れました。
注意! 《後天性スキル》を手に入れる、またはスキルレベルが上がるごとに転生者のみ脳内に表記いたしますので、他言無用でお願いします。
また、テイム可能の時もお知らせ表記を出しますので人前で驚かないようにしてください。
忠告! この転生者特別対応のシステムにつきましては馴染みやすいよう、地球のゲームを参考にさせて頂いていますが、現実なので死んでも生き返りはしません。ゲームと混合しないでください』
速読スキルかぁ、それは嬉しい!
まあ、前世の記憶を思い出したのは今日だけど、性格のベースは僕だ。思い出す前も本の虫だったようで、この部屋だけではなく、温室に調合? 関係の本。
書斎室、所謂勉強部屋の壁中に本棚がびっちり並べられている記憶がある。
本の内容は微かには残っているが、ステータス解放前の行動は反映されないみたいだから、必要な知識をとことん追求していこう!
運が良ければ、後天性スキルをゲット出来るだろうし、魔物もいるって言っていたから身を守るためのスキルが欲しい。
でも、今日は安静のため、これ以上新しい本を追加するのはやめとこう。ご飯食べるの忘れてまで読んじゃいそうだし。
昼ご飯も抜いちゃったから流石に夜はね、食べないとダメだから植物図鑑と魔物図鑑を眺めておくだけにしようっと。
ちなみに、図鑑でも夕ご飯が出来たとお母様に声をかけてもらうまで夢中になって読んでしまった。
あまりに夢中になるから、部屋を拡大してキッチンと冷蔵庫を部屋に設置しようと両親が言い始めたが、自業自得なため、止める事が出来なかった。
※※※※
前世の記憶を思い出して2日目。
思い出す前の僕は調理やら薬の調合やらを好んでやっていたようだから、倒れてから急にやめたら疑問に思われるだろうから、まず薬草の知識を叩き込む。
知識ついては自分で努力しろという事なのか、記憶が曖昧になっている。
まずは調合する前に、事前知識を入れておかなくては。
幸いなことに僕は4歳、興味のあることは貪欲に吸収して行くお年頃だ。
それに、温室では取れない薬草があれば、取りに行かなければいけないし、しかも僕はテイマーだ。魔物について知る必要がある。
今日は徹底的に、薬草と言うか植物の知識と、魔物の知識を詰め込んでいくぞ!
今日は使用人に朝食と昼食の軽食を用意してもらったし、完全に抜くってことは出来ないはず!
それに、昼食と夕食については使用人に声をかけてもらえるよう頼んでおいたし、抜かりなし! ……なはず!
結果から言おう、昼食を抜いてしまった……。
その事実を夕食だと知らせに来てくれた使用人によって判明。頼んでおいて気づかないとは申し訳なく、平謝りすれば仕事ですからと使用人の男の子は笑って許してくれた。
有栖家では自由人でマイペースな人間が多く、夕食以外は個々で食べることになっている。
「今日、魔物と植物について学んでいたそうだな。どれだけ覚えられたか知りたいだろう、この問題集で確認すれば良い」
そう言った後、僕の目の前に6冊の問題集が置かれた。
(……多くないですか? お父様)
そう困惑しつつも、まあどこ覚えられているのか確認作業は必要だよなぁとそう考えた後、お父様にお礼を言った。
それからは和やかに夕食を食べ、せっかく問題集を頂いたので確認作業に取り掛かりますか!