その4!
「最近、発見されたスキルだから知らなくてもしょうがないな。確か、今月に発売される改訂版から載せられるはずだから、あまり落ち込まないように」
今月に発売の改訂版に掲載され始めるのに、なぜにこの人は知っているのか、不思議でならないんだけど……と内心でそう呟き、そしてこう聞いた。
「発売される前のスキルは流石に知りませんよ。それで詳細はどんな感じなのですか?」
「そうだな。『空中運転』とは、最近発明された飛翔ボードと飛翔靴を一定時間使用すると手に入れることが出来るスキルだ。このスキルを手に入れると、スピードを速めても、高く飛んでも落下しないようにまたはスピードを上げてもバランスを崩しにくくするスキル」
……へえ? 便利だなぁ。
水中にもモンスターはいるし、自分より強いモンスターに出会った時、陸から離れていれば逃げられないからね。
そう言う時、地上に逃げられる手段があった方が良いか。僕の場合、先天性スキルにも血縁スキルにも攻撃スキルはないから、攻撃を避ける手段も身につけておかないといけないと思うし。
「しかし、魔法武器も2個手にいれなきゃいけないし、安い訳じゃない。買えない訳じゃないが、これから先のことを考えると飛翔ボードしか手に入れることは出来ないが、1つもないよりはマシだろう」
(そう言えば飛翔ボードってものもあったね。新しい流行りにはあまり興味ないから気にしなかったけど、思わぬところに新しい発見があるもんだ)
なんて考えていると、
「それから、隠蔽スキルは必須。それさえあれば、お前のスキル構成で良いと思う。ただし、途中でなんかあれば別スキルの取得に切り替える、良いな?!」
そう釘を刺されてしまった。
まあ、こう言う風にまた相談してくれるなら僕は別に構わないんだけどなぁ。
しかし、盲点だった。隠蔽スキルを入れれば、伝承性スキルは隠せるし、なんなら気配や嘘さえも隠せてしまう後天性スキルの中では使い勝手が良いと有名なスキルだ。
だから、隠蔽スキルを取得するのも反対でもないし、了承するしかないなと考えた僕は了承の意味を込めて力強く頷いた。
「ちなみにスライムはどうするんだ?」
彼のどうするって言うのは恐らく、スキルをどう鍛えるのかと言う意味だろう。
「紹介してませんでしたね。橙色のスライムがハッサク、桃色のスライムがサクアです。この子達はユニークモンスターなので、攻撃スキルも少し変わっているんです。……領地では人を襲う魔物はいなかったので、攻撃スキルを伸ばせなかったので、この子達にも戦闘スキルのレベルアップをしてもらいたいと考えています」
「ハッサクとサクアに関してはそれで良いと思う」
「はい、わかりました。……叔父様、僕が戦力を上げるのはこの子達のためであり、僕のためであり、大切な人達の足を引っ張らないためです。彼らも強くなることを望んでいますので、彼らの意志を尊重したいと考え、この子達の戦力アップはしようと考えているだけで武器にも盾にもするつもりはないことだけは理解しておいてください」
そう答えれば叔父様は思案顔をした後、
「……わかった、そのように配慮しよう。サクアとハッサクはしばらくは別行動してもらう。後で、授業内容上冒険者ギルドに加入してもらうが、お前にはテイマーとして冒険者登録してもらう。そうすれば、お前のパーティメンバーとして冒険者ギルドの施設の機能をサクアとハッサクも利用できるようになる。
そうすると、主人であるお前がいなくても魔物狩りに行くことが出来、なおかつサクアとハッサクには命を奪われる危険性を共わない手段でスキル経験値を上げることができる施設機能を利用することができるようになる。
正直に言えば、お前の役割は本来なら後方から支援するタイプの盾だ。だが、それを明かすことは伝承性スキルの存在をバレる可能性が高くなると言う意味でもテイマーを名乗るのが妥当だろうな」
なるほどね、叔父様が冒険者の先生と呼ばれる理由がわかったよ。生徒が提案したスキル構成に対して、あたかもそれを自分があらかじめ知っていたかのようにどうしたら良いのか提案できる人はなかなかいないさらね。
ハッサクとサクアはまだ子供だ。まだ一度も実戦では戦っていない状況だから、まだ珍しいスライムを持つと言うことで目立った方が伝承性スキルの存在を世間に晒さずに済むし、あの子達が怪我をせずに済むことが一番だ。
「わかりました。でも、ハッサクもサクアもまだ産まれたての子供です。
遊騎さんは多分僕の元から離れられないと思うので、別の守衛さんに何日間か接してもらい、ある程度交流を深めてから修行を開始して欲しいのです。
何分、出会ったから数日ではありますが、一度も長時間離れることがありませんでしたから、出来ればで良いんですけど、そうして頂けると有難いのですが」
そう言えば、叔父様は何故かわからないが苦笑いをされたから、理由がわからず首を傾げれば、
「悪いな、別に悪い意味で苦笑いをした訳じゃないんだ。お前と話していると玲亜の幼い頃を思い出してな、あいつも4歳の時、4歳らしくなくてな。
まあ、俺もよく言われていたんだが、今は我が弟ながら端正な顔だちをして無表情なやつだけど、昔はお前と同じように中性的な顔立ちをしていてな、そんな顔立ちをしながら大人っぽさを遥かに超えて中年を超えた人ようなことを言ってな。
そんな発言に周りのやつを困惑させていたのを思い出してな、まあお前の場合は中年って言うよりも青年と話しているような感じだけどさ。
なんか、お前の場合、玲亜と違って女性にも見えるし、男性にも見えるような雰囲気に育ちそうな気がするよ」
……お父様が小さい時、確かに4歳でも素で中年っぽい口調で話してそうなのは想像できるけど、今の端正な顔立ちからは想像できないな、中性的な顔だっただなんて。
1人だけ平凡顔だったら怖いから鏡を見ないようにしてたけど、そう言えば水季くんが美少女顔で怒られたら怖いからやめろとか言っていたような……気がしなくもないけど、怒りでその言葉を無意識的に全スルーしたんだよね。
(叔父様は多分傷つけないようにオブラートに包んで話してくれたんだろうけど、話し口調から察すると、叔父様から見ても女の子に間違うような容姿をしているんだろうな……。
てか、季水くんも直球に言うんじゃなくてオブラートに包んで容姿の事実を伝えて欲しかった! まあ、直球勝負な兄だから、無理だろうけど!)
それに、叔父様の勘は当たりそうだから、叔父様の言うとおりの容姿に育つんだろうなぁとなんとなくそう思った。
「きっと、家系的な特徴なんでしょうね。季水くんに関しては恐らく、お母様の家系寄りに似たんだと思います。
容姿に関しては生まれ持った、変えることの出来ない出来ませんからね。尚更、気を引き締めて護身術を習わなくてはいけませんね」
そう言えば、叔父様は歯を見せて笑って、せっかくゆうに整えてもらった髪をぐしゃぐしゃになるくらいに撫でられた後、
「いっそ、開き直って女性のマナーや変装、化粧についても学ぶか! 貴族だからな、変装が出来た方が良い。
零みたいな中性的な子は女性にも、感じが違う男性にも変装しやすい。ギルドの受付に指導に最適な人物がいる。修行に組み入れよう」
(まさか、現世の容姿が自分の首を締めるとは思ってなかったよ……。まあ、変装とか役に立ちそうだから良いけどさ)
「……まあ、前衛でなければ別になんでも構わないのでお任せします」
そう言えば、叔父様は泣く子も黙るくらいの鬼の形相をして僕の肩を掴み、
「お前のような可愛い甥っ子は前衛をしなくて良いんだ。そんなの、季水に任せておけば良い」
顔とは真逆な優しい声で僕のことを諭してくる。
(……季水くんの扱いひどいな……。もう少し優しくしてあげよ……。
まあ、後ろで守られとけって言われても、お決まりの猪突猛進で護衛達をむしろ守ってそうだし、前衛任せておけば良いって言われてしまうのもわかるけどね)
「僕には前衛、向きませんからそもそもやることを視野にいれてませんし」
(僕は自分の立場が貴族だから、イレギュラーなアクシデントがあったとしても対応出来るようにしておきたいだけで、別に最強になりたいとかそういう欲はないんだ。
自分が死ぬことで大切な人達が悲しむ姿を見るのは嫌だから自分の身を守れる程度に強くなる、大切な誰かを目の前で失わないために守れる盾を作れるようにする、自分が弱いために誰かが身を呈して守るような事態を作らないために強くなる、ただそれだけだ)
「父親である玲亜とばかり接してたからな、容姿も性格も良くも悪くとも弟に似ている。だから、あえて言っておこう。
1人で何でもかんでも抱え込もうとするな。なんか、悩み事があるなら迷わず今は俺やお前を守る護衛に言え。
この先、仲間ができたなら迷わず頼れ、信頼しろ。自分の仲間はこれくらいのことでへばるような奴らじゃないと自信を持て」
(僕とお父様が似ている? まさか!
確かに僕はお父様とばかり接してきたけど、一度も似ているだなんて言われたことがない)
だが、叔父様が意味のないことを言うとは思えない。信頼できる誰に迷わず頼れ、信頼しろと言ったことだってなんか意味があるはず。
(……まあ、何となく今知っても意味がないような気がするから追及はしないけど、叔父様のアドバイスは頭に入れといて損はないだろうし)
「……なぜ、そう言われたのかは今はわかりませんが、年上の忠告は受け入れる性分なのでそうならないように気をつけます」
そう言えば、叔父様は満足そうに笑った。




