その3!
「すまん!! 感極まって、意識落ちかけるまで力強く抱きしめちゃった!!」
そう言って、土下座して平謝りする叔父様。
それを見ているからか、僕になんかした人間に対して複雑そうな顔をするのだが、わざとした訳じゃないと理解しているのか怒っていないようだ。
(ハッサクとサクアが怒ってないと言うことは本当にわざとじゃないと言うことだ。……そんなことよりこの世界にも土下座って文化があるんだなぁ)
「良いんですよ、叔父様。僕も叔父様に会えて嬉しいですから、気にしないでください。そんなことより、今はこれからのこと、話し合いましょう?」
(まあ、出来れば僕は季水くんとかお母様の能力値くらい高くないから、手加減してほしいけどね)
なんて考えていると、僕がそう提案にしたと同時に土下座するのをやめて、叔父様はソファに座り直し、先ほどの甥っ子馬鹿な顔ではなく、生徒に向ける顔に変わっていた。
「それもそうだな。お前は玲亜に似て、恐らく攻撃系タイプではない。しかし、貴族だから貴族としての礼儀を学ぶ必要があるし、最低でも3年、最高でも5年くらいしか鍛える猶予はない。 ……時間は少ない、それは理解しているだろう?」
強くなるためには、人一倍努力と時間が必要なのは理解してますよ、もちろんと言う気持ちを込めて力強く頷く。
「ある程度、後天性スキルで鍛えることは可能だが、この先お前の場合は念のため、何かあっても対応できるよう護衛が必要になってくるだろう。それは伝承性スキルを持ち、防御力が高めな玲亜でさえ、おまえとおなじく護衛をつける義務がある。それは自分が持つ防御力や体力に対して勝る人が敵であれば、勝ち目がないからだ。有栖家は貴族の中では立場は上の方、簡単に暗殺されるわけにはいかない」
……まあ、そうでしょうね。敵であれば辛抱強く防御力が低下することを待つことはあれど、耐えきれず諦めることはまず稀。
そして、敵側には逃げる選択肢はあっても、こちら側には逃げる選択肢も、敵を追い出す決定打の手段もない。ましてや、僕は貴族。狙う人は多いからね、護衛がいることに越したことはない。
まあ、護衛は必要だろうね。
「そのため、騎士族だけではなく、今は緑水の位に仕えてくれている傭兵族との交流をしてもらうから実質修行期間は5年と考えているが、最低でも3年で戦力外卒業をしてもらうつもりだ。どう戦力外から卒業するかはお前次第だ。武力をつけるのもよし、技術力をつけるのもよし、どれが自分に当てはまる強さなのか他人が決め手は意味がないからな」
戦い方を指導するだけではなく、どう戦力外から卒業させるのかを本人に任せるところは、本当に冒険者の先生なんだと思った。
そして、他の貴族との交流を考えられるところを見ると、叔父様は本当に緑水の位の貴族なんだと実感させられる。
「まあ、お前のスキル獲得状況によっては戦うと言う経験を、修行をしながらしてもらう変更も出てくるが、俺の元で修行を出来るのは短くて3年、短くて4年だ。それはお前には有栖家としての立場があるからだ、わかるな?」
「はい」
「本来、一番に仕えてくれているのは当主付きの使用人と護衛を一番に引き受けてくれている傭兵族だ。だからまず彼らに会うべきなんだが、弟が話をつけて零がそれで護られるならとこの対応に納得してくれたんだ。1年はいれなくても、最低でも傭兵族の地で交流を深めなければならないことを理解しているな?」
そう聞かれ、僕は圧倒されるがまま頷いて見せれば、叔父様はそのまま話を続ける。
「貴族としての役目を放棄した俺が言うのもあれなんだが、貴族同士や国民、部下との交流は大切だ。この世界にいる限り、人脈の広さはお前の命を救ってくれるはずだ。頑張れよ」
「はい!」
「うん、いい返事だ。ああ、話がずれてしまったな。まあ、玲亜から零はスキルをほとんど覚えていると聞いているが一応な、ここに後天性スキルの一覧と俺が教えられる伝承性スキルの一覧がある。だから、聞かせてほしい。お前はどう戦えば自分は生き残れると考えている?」
叔父様はさっき、自分で考えろと言っていたけどまさか、本当に丸投げ状態の質問をされるとは思ってもみなかった。でも、多分未熟な僕では詰めが甘い部分も出てくるはず、そこはさすがに指摘してくれるだろうから、自分なりに考えていることについて叔父様に伝えようと思う。
普通、僕くらいの歳の子なら大人の指示で行動をするところが多い中、自分の意見も聞いてくれた。それが嬉しくて、思わず口が緩む。
(てか、なんでお父様は僕がスキル一覧を全て暗記していることを知っているんだろう?)
まあ、お父様だから考えるだけ無駄かと思うことにして、まず意見を言う前に伝承性スキルの一覧を見ながら、どのスキルを取ろうか考えることにした。
叔父様に渡された伝承性スキルの一覧に書かれていたのは4つ。
・結界ーーーー気を解放することによって、気を使い、結界を張ることが出来る。
・視力強化ーー気を解放することによって、視力を上げたり、下げたりすることが可能。
・聴力強化ーー気を解放することによって、聴力を上げたり、下げたりすることが可能。
・全身強化ーー気を解放することによって、自分だけではなく、他人を強化することが出来る。また気を使うことによってスキル強化、筋力強化などあらゆる強化が出来るようになる。
しかし、攻撃スキルのない人には向かない。
しかし、攻撃スキルのない人には向かないと言うことは僕には全身強化のスキルは向かないと言うことになる。
まあ、考えようによっては後天性スキルで攻撃スキルを手に入れればいけるような気がしなくもないけど、後遺症があるか否かがわからない今、迂闊にこのスキルを取得するのは危険だ。
だから、自動的に候補は3つに絞ることが出来、この3つにのスキルは僕にとって有益に使えるスキルだと思う。
「後天性スキルでは僕の考えとしては遠距離攻撃の出来る魔法武器《銃》と魔法武器《弓》を取得し、そして逃げ足を鍛えたいと思っています。潜水と乗馬スキルの取得をしたいです。
後天性スキルで攻撃スキルを取得すればいけるんじゃないかとも思ったんですが、あまりにリスクが高すぎる全身強化のスキルは取らず、伝承性スキルでは結界、聴力強化、視力強化の3つを取得したいと思います。
視力強化と聴力強化は魔法武器スキルを使用する際に有益に働くと思います。視力強化については、遠視スキルの取得することで隠蔽、結界については札結界スキルで隠蔽しようと考えています。
聴力強化については、あらかじめ耳が良い設定で進めようと思います」
スキル説明をすると、魔法武器《銃》と魔法武器《弓》については先天性スキルの属性効果補助、先天性スキルまたは血縁スキルでもあり、後天性スキルでもある鍛治スキルを持つ職人が作る武器を使用し、ある一定の魔物をその武器で倒すと手に入れることが出来るスキルだ。
ちなみになぜ、鍛治スキルは先天性スキルでもあり、血縁スキルでもあり、後天性スキルでもあるのかと言うと、先天性スキルと血縁スキルの場合はスキルから生み出すたため、素材さえあれば道具はいらず、スキルでしか作れない武器が作れる。
しかし、後天性スキルは道具が必要で、スキルレベルが上がるごとに作れる品質の高さが少しずつ上がっていくくらいだ。
属性効果補助スキルについては、本人が魔法スキルが使えるわけではないが、武器に一種の魔法の加護を与えられるスキル、それが属性効果補助スキルだ。
さて、話は僕の候補に挙げた後天性スキルの話に戻るが、潜水スキルは潜れる時間、そして一度に吸い込める空気量がこのスキルを獲得することで増える。取得したい理由としては加護と相性が良いから、泳ぐことが嫌いじゃないから、そして逃げ場所を地上だけにするのは危険だからだ。
乗馬スキルは馬に認められることによって取得できるスキルだ。馬との絆を深めやすくなり、乗馬をしやすくなるスキル。
伝承性スキルを隠蔽するためのスキルの一つである遠視は、遠くの物を見続けることによって取得、遠くの物を見やすくなるスキルだ。
そして2つ目、札結界とは札結界用の文字を覚え、単語を覚え、結界を張るために札を用意しなければならない手間がかかるスキル。手に入れるために札結界用の文字を覚え、単語を一定数覚えなければならない手に入れるにも時間がかかるスキルだ。
しかし、結界を違和感なく使うためには、札結界の取得は必要不可欠だ。
(……さて、冒険者の先生を務めている叔父様からすると僕のスキル構成力はどう判断されるんだろうか?)
「悪くない着目点だと思う。玲亜から十分……いや、十二分に足りるくらいの修行資金はもらっている。知り合いの魔法武器職人に依頼しよう。
伝承性スキルの構成についても文句なしだな、隠蔽の仕方も悪くない」
そう言われて、一安心した。前衛武器も窘めって言われたらどうしようかと不安だったから。
そう気を緩めた途端に、
「逃げ足手段を固めると考え、潜水と乗馬スキルを身につけようとしたのは良かった。しかし、本当に逃げ足力を高めたいならば、空中運転スキルも覚えておいた方が良い」
持ち上げられて、突き落とされたような気がした。
それに、空中運転スキルって聞いたことがないぞ? 僕が暗記した後天性スキルの一覧にそのスキル名はなかったと、頭の上にクエッションマークを浮かべるのだった。




