第十一話『呼び名』
「つまり――ここはこの世界と他の世界との境界線であると」
徹くんはしっかりと私の話を聞いてくれたようだ。あー良かった。
だが妹さんの方は納得していないみたいだ。
「ふざけない下さい。そもそも私達を殺しておいてそんな……」
「でも紗友がいるなら何でも良いよ」
「お兄ちゃん……」
何だこのラブラブ兄弟は。これから兄弟同士のラブコメ開始か? 徹くんは私の事を好きと言ってくれた、はずなのに……この浮気者め!!
「えーと紗友さんは選ばれし人じゃ無いので今から元の世界に返しますね」
私が気まずそうに言うと先に切れたのは兄の方だった。
「ふざけんなっ!!!! 俺は紗友がいないと動かないぞ」
もうやだこの兄弟。妹さんが居てもほぼ足手まといなんだよなぁ……。
「あったまきた……。お前をここで潰したる」
「無駄ですよ徹くん。怪味天命水を飲んでいない貴方にはきっと勝ち目がありません」
徹くんは、私の言葉に驚愕していた。口を半開きにしたまま黙ってしまったのだ。何だこの兄。やっぱり性格おかしいよ……。
「あのー、どうかしたのですか?」
「……言ってくれ」
「え?」
「徹くんってもう一度言ってくれ!!」
徹くんは目を輝かせて私に強くせがんできた。
「徹くん……」
「もう一度!!」
「とぉ……徹くん」
「もっと!!」
「とっ……徹くぅん……」
「あーもう可愛い。あー俺の心は女神に完全に奪われた。よし、お目の言葉を全部信じる。お前が困っているのなら、俺も手伝ってやる」
妹さんの方は引いている様子だった。この兄流石に屑過ぎないか。
まあ、信じて貰えて良かった。だったらループの話もしてしまおうか。
いや、今がこうして成功に向かっているのだから言う必要は、いちいちないだろう。
「紗友――お前は帰れ」
「えっ?」
そして妹さんには帰って貰いました。結局一番可愛そうなのは妹さんに違いない。




