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遥かなる彼方からの贈り物  作者: 名も無き人
第8章 隕鉄落下
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88/91

(5) 衝突の時

マスメディアは

人類の知覚の役目を果たしている。

そのマスメディアが消失してしまえば

人類はその知覚を無くし

混乱するであろう。


もちろんマスメディア自身も

多少はそれに気付いていたが

現実には

事件が大きすぎた。


簡単に言えば


衝突そのものを報道する事に

余りのエネルギーを使い過ぎた。


要するに

ただただ騒ぐだけのマスコミ根性が

この人類最大の危機の際にも

遺憾なく発揮されてしまったのである。


実際、綿密な報道体制が敷かれた。


逆にそれが

衝突前と衝突後の

「情報量の格差」

と言う何とも表現のしようのない

しかも非常に深刻な

ストレスを生む事となった。


衝突までは、ありとあらゆる情報が

詳細に全世界の津々浦々まで伝えられたのが

いざ衝突が起こり

被害が全世界に広がり始めるに反比例して

情報は断片化し

詳細さを失い

統制も失い

そして正確ささえもが失なわれていった。


衝突とその直後までの状況は

世界のマスメディアが協力し合い

ほぼ完璧に報道された。


行き過ぎた報道も多かった。


例えば衝突現場の

少なくとも半径400Km以内には

どの様な装備を持つ人間であっても

入る事は固く禁じられていたが


しかし実際には

衝突の威力を過小評価した幾人かの猛者が

高性能の小型船舶で100Km程まで接近していた。


しかし衝突後の混乱が過ぎると

その全員が行方不明となっていた事が判明した。


とても人間が近寄れる状況ではなかったのである。


多くが観た衝突の様子は

遠隔操作のハイビジョンカメラで写されていた。


100台以上のハイビジョンカメラが

衝突の瞬間を捉える為に

様々な場所に設けられていた。


多くは船の上だった。

一部は、無線操縦の軽飛行機や飛行船に据えられていた。


天候は穏やかだった。


カメラは、実際にそこに居たのに

近い位にクリアに情景を伝えた。


隕鉄の衝突は、特別に仰々しいものではなかった。


何しろ、地球を包む

厚さ20km程の大気と

それから5km程の深さの海を

ほんの0.1秒程の時間で通り過ぎ

それから地殻を突き破って


直径900メートルの隕鉄が

マントル深く突き刺さったのである。


それはほんの一瞬の出来事で

火の玉が瞬間的に落ちる様子は

近くで起こった落雷の様にも見えた。


更に隕鉄が落ちた先の

地球のマントルは

粘りのある防弾チョッキの様な役目を果たして

恐ろしい速度で進入した隕鉄のエネルギーを

非常に上手く受け止めてくれた。


つまり、被害は最小限で済んだのである。


被害が最小限と言っても

水爆数千個のエネルギーから

発生する被害である事には変わりはなかった。


水爆数千個を世界にばら撒けば

確実に人類は滅びる筈である。


その被害が多少小さく済んだと言っても

被害の凄まじさは想像を絶していた。


直径900メートルの火の玉が

さっと通り過ぎ

海に消えた後

それは起こった。


音は聞こえなかった。


もちろん音速が非常に遅い事が

その理由だった。


結果的に音の方が届く前に

殆どの情景が無音で起こった。


海に火の玉が消えてから


きっかり1.2秒後に


ピカッと言う巨大な閃光が走り


それからやはり巨大な白い火の玉が膨らんだ。


たちまち天まで突き上げる

大きな爆発である事が明白になっていった。


同時に海の中にも衝撃波が広がって行った。


時速1000kmを超える速度の衝撃波だった。


津波である。


爆発による直接の波は

数百キロを経ると徐々に小さくなっていったが


衝撃波が生む津波の方が

速度を落とす事なく

全世界の沿岸に向かって広がっていった。

そして、沿岸近くの浅い海まで達すると

まず大きく海が干上がり

それから干上がった海の更に遠くから

それまで全くと言って見えなかった津波が

いきなりその正体を現した。


それは高さ200mの大津波だった。


正体を現した津波は

時速7〜80Kmまで落とした速度で、

ゆっくりと、恐怖を撒き散らしながら

全世界の都市を飲み込んで行った。


高速弾がガラスを貫通する様に

直径900メートルの隕鉄が

地殻をぶち抜いた衝撃は

そのまま巨大な地震に変化した。


規模としてマグニチュード11に達する

超巨大地震の揺れは

凄まじいものだった。


比較的近い地域で被災した多くの人々が

その揺れだけで命を落とした。


地盤そのものが波打つ様に揺れ

その跳ね上がりだけで

人間が数メーターも跳ね飛ばされたからである。


ただでさえ地震の経験の少ない

オーストラリアの人々にとってこの地震は

究極の恐怖を感じさせるものだった。


人々は悲鳴を上げ、這い蹲った。

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