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遥かなる彼方からの贈り物  作者: 名も無き人
第8章 隕鉄落下
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(1) 現実の認識

5月になり北半球に本格的な春が訪れる頃になると

世界各地で起こっているパニックの様子が

毎日の様に報道機関によって伝えられる様になっていた。


しかしその大混乱も

全世界の人口と地域からすれば

一部の混乱であった。


残りの大部分の地域と人々にとっては

未曾有な災害が起こる

具体的な兆候を感じる事が無い上

平穏な日々を特別変化させる必要もなかった。


その為か、各国政府が

警告しているにも拘わらず

巨大隕石の衝突を

信じない人々も多く存在した。


落下地点から遠い国程

その傾向が強かったが

被害地の直ぐ傍にあって

被害が甚大となると想定されていた

オーストラリア東岸においてさえも

居住人口の実に35%程の人々は

避難する事もなく

平常な生活を送っていたのである。


もちろんその多くは

自ら望んで留まっていた訳ではなかった。


貧困であったり

年老いていたりして行き先がない上に

移動する能力そのものを

欠いている人々も多かった。


お互いの人間関係を絶つ事を恐れたり

または職業上避難する事が

難しい人々も多く存在していた。


移動した先の生活が

確実に今の生活より

厳しくなる事も主な理由になっていた。


もし彼らがこれから起こる事を

より現実的に認識していたなら

なりふり構わずに逃げ出しただろう。

しかし

「もしかしたら何も起こらないかも知れない」

と言う疑いの気持ちが

多くの人々の心の片隅に存在した。


何せこの災害が起こる事を

確かに断言できる者が誰もいなかったのである。


少なくとも人類の科学者においては

誰一人として隕鉄の落下の可能性を

正確に検証できる者などは存在しなかった。


人類の手によって

隕鉄の落下の可能性を確かめる事ができるのは

落下の173時間程前

つまり1週間程前になる筈だった。


米国が探査ロケットを打ち上げたのが

今年の3月で

ロケットは秒速32kmの速さで

隕鉄が来るとされる方向に向かっていた。


このロケットが隕鉄を探知して

地球に情報を送ってくる事になっていた。

想定からすればその情報が地球に届くのは

衝突の7日程前と言う事になる。


もっとも

人類の大部分は

隕鉄の落下を信じた行動を取っていた。


それは、多くの科学者や政治家や企業のオーナー達が

本気で行動を開始した結果であった。


6月の初めだった。


衝突が予言されている日までには

まだ3ヶ月余りある。


ベス・クリーヴランドが

デスクの上に山積みにされた

膨大な決裁書類にサインを続けていると

補佐官のヤコブソンが走りこんできた。


50歳を過ぎたこの男は

この世界では珍しく根っから実直なタイプであった。


その彼の息が切れ

真剣な表情がベスを見つめている。

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