(22) 人類が終わらぬために
その深刻な内容の話を聞き
各国の指導層の人間達の顔の表情は
一様に緊張したまま変わらなかった。
話の内容は、殆どの出席者に対して
事前にダイが知らせてあった内容だった。
ただ本気には信じてはいなかった事は
今の彼らの様子を見れば歴然としていた。
「この災害を回避する為に
皆さんがここに居て
そして私がここに居るのです。
これから我々は
非常に多くの事をやらなければなりませんが
その基本は非常に単純です。
まず、人類が統一行政政府を作り
全世界が一つの政府の元に
統一される事。
その為には
今年の9月12日の災害到来と同時に
全世界の国々が歩調を合わせて
統一政府に参加する必要があります。
次に災害からの復旧対策と
9年半後の対策の
2手に分かれた活動になります。
特に9年半後に備える対策は
一刻の猶予も許されません。
一方で、災害からの復旧は
困難を極める状況の
連続となる筈です。」
ダイの説明は大詰めを迎えていたが
聴衆は更に集中力を増している様子だった。
「これは非常に多くの困難と苦しみを伴う
明らかな「戦い」です。
そして、この戦いに勝つ為には
今まで人類を支えてきた
多くの精神的な支柱を更に強くし
団結する必要があります。
しかし、また一方では
その支柱に存在する
こだわりについては
これを潔く捨てる必要もあります。
なぜなら我々の団結は
全世界で行わなければならないからです。
例えば宗教についてはどうでしょうか。
もし宗教が人類の活動に
影響を与え続ける存在であるならば
これからの宗教は
たとえ複数の宗教が混在しても
我々に対して
良い影響を与え続ける存在に変化するべきです。
何故ならこれからの我々は
複数の宗教に属する者が混在する
行政府を成立させなければならないからです。
単なる企業ではなく
教育までを担う行政府です。
ですから全ての宗教は
近い将来お互いに協調しあう
宗教統一に向かう活動が必要になります。」
ここでダイは皆をぎろりと睨み付ける様に眺めた。
「どうでしょうか。
これはとても不可能な事でしょうか。
これまでの宗教は
異教だけでなく同じ宗教内であっても
宗派の対立があったりで
結局常に争いの要素となってきました。
しかし、我々人類は
この不可能と思われる宗教連合にさえも
それに正面から
立ち向かわなければならないのです。
ですから
権威の高みにいて
後ろから影響を与えるような宗教者は
新しい世界に存在させてはなりません。
理由は簡単です。
我々は生き残らなければならないからです。
生き残る事を除いて
大切なものは何もなくなります。
たとえば荒海に
一人投げ出され溺れて行く人間は
或いは宗教に頼るかも知れません。
しかし、我々は
たとえ荒海に投げ出されても
そして死を恐れても
宗教に頼りながらも
溺れる事が許されない存在なのです。
なぜなら、我々が溺れてしまえば
人類は永遠に消滅してしまうからです。」




