(18) この災害は逆に人類が生き残るチャンスなのだ
大樹は
ようやく迫り来る巨大災害について触れた。
「いや正確には
そうではない。
人類が滅びてしまうかも知れない大災害によって
逆に生き延びるチャンスが生まれた
と考えるべきなのです。」
ダイは、ここで言葉を切った。
この隕鉄襲来がチャンスであると言う論理は
これまで言い続けてきた事だった。
これから到来する過酷な事態に
人類全体が前向きに
希望を持って取り組む事が
どうしても必要なのである。
「みなさん、ここで休憩としましょう。
早くお帰りになられたい方は
どうぞお引取になられて下さい。」
実を言えば、来場者の3分の1程は
ダイの存在を心から信じてはいなかった。
当然、本当に真剣にこの会場に来ていた訳ではなく
他の出席者の手前
出席せざるを得ずに参加した人々も多かった。
彼らのうちの多くは、出席の義務を果たしたら
早々に引き上げる考えでいた。
実際、彼らの多くは、ダイが休憩を告げると
即座に席を立ち携帯電話を持って
会議室の外に走った。
しかし、それは帰路に着く為ではなく
急遽の予定の変更を部下に告げる為だった。
宗教関係の指導者達の中には
留まるべきか悩む者も多く居た。
余りに強制力のある内容に戸惑ったのである。
宗教家達の最終的な手段である
「耳を塞いで聴かない」
と言う手段が必要な事項である事は
明確であった。
しかし一方で
ダイが空中に浮かべたスクリーンの威力は絶大だった。
まるで神の啓示であるかの様に色鮮やかで
彼らの多くが修行時代に感じた
ときめきを思い起こさせるものだった。
そして、彼らの全員が
とうとうその場を離れる事ができなかった。
ダイが指定した休憩の予定時刻が来ると
会議室には一斉に出席者が戻った。
数百人の出席者がいたにも拘わらず
遅れて入る者はいなかった。
ダイは、照明が落とされた舞台の真ん中に立ち
皆が席に付くのを待っていた。
皆、時々何気なく
そのダイの様子を眺めながら行動した。
全員が静かに行動しているその姿は
おごそかな宗教儀式に参加している様な
規律正しさを感じさせた。
それは最後の一人が
席に付いたタイミングだったのかも知れない。
何の前触れも無く
明るい照明が舞台に灯り
ダイが一歩前に歩み出た。
同時にあのスクリーンがまた現れた。
今度は先ほどとは比較にならないほど
巨大なスクリーンだった。
舞台全体と言うよりも
会場全体がスクリーンになっている。
そして次の瞬間
信じられない程に深遠な漆黒が会場の天井を覆った。
そしてその中に光りの点がぽつぽつと見えている。
星だった。
それが宇宙空間である事に気付くのに
時間を要する者は誰もいなかった。
現実に宇宙空間に放り出された様な気持ちになった者も多かった。
宇宙飛行士の経験をイメージした者も多かった。
それ位にリアルな情景だった。
恐怖感さえ感じる程の深い黒と
永遠とも思える程遠くで光る点だった。
「このスクリーンは
デジャで空間スクリーンと呼ばれるものです。
空間そのものを制御して造られています。
こんなスクリーンを映すには
莫大なエネルギーが必要そうに見えますが
光は非常に小さなエネルギーで表現できる性質があります。」
ダイは、会場を覆うスクリーンについて
非常に簡単に触れた。
非常にストレスの残る内容だったが
ダイはそれ以上触れる事なく
そのまま本題に入った。
「今から、15万年前の出来事です。
私をここに送り込んだ星
デジャは非常に深刻な経験をしました。
超新星爆発です。」
ダイの説明が終わらないうちに
漆黒の空間の一点が急に明るく光りだした。




