(15) ドクター キャゼルヌ
挙手していた中で
ダイに指差されたのは
老年期にあると思われる
白髪のインテリ風の男だった。
彼は著名な科学者であった。
落ち着いた、威厳のある表情で
マイクの準備が整い
発言ができる状態を待っている。
「大丈夫です。あなたの発言は
既にマイクで拾われています。
内容は、それぞれの言語に翻訳されて
ここに居られる全ての方々に伝えられる筈です。」
彼は、ダイの言葉の意味が
直ぐに理解できずにきょとんとしていたが
漸く言っている意味を理解すると、
「あっ、うっ・・、本当だ。
素晴らしい技術だね、こりゃ。」
と自分の声が増幅されて会場に流れるのを確認しながら
嬉しそうに微笑んで、言った。
「単一指向の音声収録を
3次元で処理しています
キャゼルヌ博士。」
ダイは出席者の顔と名前を正確に把握し記憶していた。
「どうぞご発言下さい。
ちなみに、キャゼルヌ博士を例外とさせて戴き
これ以降は、できれば皆様からのご質問は
最後にお伺いしますので
その時にまとめてお願いできれば有難いです。
それではキャゼルヌ博士、お願いします。」
キャゼルヌは、米国の著名な物理学者だった。
発想の柔軟さと頭脳の明晰さによって
アインシュタインに比される事もある人物だった。
「いや、悪いが、私の質問は単純なものだよ。
人類が滅ぶ運命にあると言うが
確かに私もその可能性を強く指摘している者だ。
しかし、それ程自信を持って断言するのなら
それを証明する何か
具体的な根拠を示して貰えんかなと思ってな。
その根拠には今観測されている
平均気温の劇的な上昇が挙げられているが
それが直接の証明であると言う事は
少し乱暴な気がしてしまうのだよ。」
その質問内容を聞いている人々の表情は
自分も同じ疑問を持っていると言った表情で
ダイの顔を注視する。
ダイは落ち着いて答えた。
「実を言えば、サンダルを送り込んだデジャでも
滅亡が確実な状態に至った経験があるのです。
そしてその生き残りの努力の中で
他の星の探査を数多く行う事になりました。
特に反重力装置が開発されると
光速に近い移動が可能になった為
片道十数光年の範囲の探査が行われました。
デジャが存在する宇宙には
我々の太陽の周辺と比較すると
はるかに多くの恒星が存在し
それに比例した数の惑星
実際には数千の惑星が存在します。
ここでデジャは
数十の知的生命体の痕跡を発見しました。
確かに幾つかの文明は
デジャが被った超新星爆発によって滅んでいましたが
最も進んだと思われる文明の幾つかは
意外な事に超新星爆発以前に自滅していたのです。
この事実と、デジャの歴史を併せて
多くの研究が行われました。
その結果、あるレベル
具体的には、現在の人類のレベルに達した科学文明は
種にとって非常に危険である
と言う事が判明する事になりました。
これは私を送り込んだ星の科学者によって
証明された学説です。
しかし、そんな事を言っても
なんの証明にもならないし
残念ながら、詳細な学術論も用意できません。
だが地球上で収集されている幾つかの指標には
それを如実に証明しているものがあります。
例えば、これを観てください。」
ダイはそう言うと巨大画面にあるグラフを映し出した。
それはインターネットで簡単に入手可能な
現実の地球のデータだった。
人類の人口の推移をプロットした曲線のグラフである。
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