(9) 大樹の演説
米国方式の紹介は拍手を誘う。
皆の息が合った形で、盛大な拍手が始まった。
ベスのダイの登場への促し方は
まるで魔法使いか何かに向かっている様だった。
なぜなら、ベスは出入り口の方に語りかけずに
空中に向かい語りかけたからである。
ダイの登場の方も
そのベスの語りかけを
台無しにしないものだった。
なぜなら突然空中に浮かんだままの状態で
突然にダイが現れたからである。
空中に浮いているダイの姿は
何か軽々しく、滑稽な感じがした。
「ベスの要望で
私はこうして現れましたが
何か手品師みたいですね。」
会場に大きな笑いの渦が起こった。
そのダイの言葉は
日本の根本首相には純粋な日本語で伝わっていたし
中国の国家主席であるチャンウエィには
表現力豊かで闊達な北京語で伝わっていた。
あらゆる言語のネイティヴの表現で
しかもダイ自身の肉声で
全ての国々の人々に同時通訳されていた。
ダイの持ち込んだシステムは
ベス・クリーヴランドも司会を行う上で
もちろんその恩恵を受けていた。
「ここで私は皆様に
これまで皆様に
偽りを申し上げてきた事を告白致します。」
しんとした会場からの反応は何もなかったが
その沈黙は逆に、皆がダイの話し始めの内容に
強い意外感を感じている事を窺わせた。
「私はエイリアンなんかではなく
地球人、それもごく普通の人間です。」
大樹は最初からこのプレゼンテーションの機会に
自分がエイリアンなんかではなく
普通の地球人である事を明らかにするつもりでいた。
理由は幾つかあった。
「みなさん、もし今私が
自分は5歳の少年だと言ったら驚くでしょうか?」
ようやくざわざわとした私語の応酬が始まった様だった。
余りに意外なプレゼンテーションの始まりに
参加者の殆ど全ての人々は
動揺を禁じえなかったのである。
ダイが、自分が人間である事を明かす事にしたのには
様々な理由があった。
まず第一に、この機会に人類の指導者達に
エイリアンに頼る気持ち起こさせない様にする為だった。
ダイが未知の力を持った
エイリアンであると信じられている以上
人々がその力を過信してしまう可能性が充分にあった。
誰か頼る者があれば
それだけ人類の自助努力へのエネルギーが減る。
これは地球であろうがデジャであろうが
共通した現象であった。
「そうです。私は5歳の少年です。
どこの国の誰と言う事は
敢えて秘密とさせて戴きますが
その何の変哲もないこの5歳の少年に
ある日突然に
耐え難いほど重大な責任がのしかかってきたのです。」
大樹はその後
サンダルとの出会いを簡潔に説明した。
この説明を聴いていた会場の出席者全体に
強い衝撃を与える真実に対する驚きの
うねりのようなざわめきが
徐々に拡がって行った。




