(8) ベスの演説
さりげなく、抑揚を抑えたベスの語りかけは
聴衆に短時間ではあるけど
話の内容に意識を向けさせる効果があった。
ベスは、その瞬間を上手く捉え
演説を盛り上げて行った。
言葉はベスの肉声のまま
各国の言語に完璧に近く翻訳され
皆に届いていた。
日本の首相の相本は
ベス・クリーヴランドが
完璧な日本語を喋るのを聴いていた。
「しかし、この会合にどうしても
皆様がご出席になる必要があった事も
ご理解になられている筈です。
残念ではありますが
私は推測でものを申し上げなければなりません。
そして更に非常に残念な事に
私はこの推測に
100%の確心をもっております。
実に恐ろしい事に
来年の9月に大きな災害が人類に訪れるのです。
もちろん我々は
その災害の被害を最小限に止めようと努力を行います。
しかし途轍もなく恐ろしいことですが
その災害による死者を
数億人以下にする事は
不可能に近い事かも知れません。
更に、非常に残念な事に
その人類史上最大の大災害は
次の大災害のほんの始まりに過ぎないのです。
次の災害は
更に深刻なものであり
人類の歴史を永遠に終わらせてしまう規模の
大災害となる様です。」
がやがやと言う私語が始まった。
米国の大統領がこれ程に深刻な話を
推測と言う前提の上ではあったが
明言しているのである。
無理もなかった。
「私のお話はここまでにしますが
最後に一つだけ皆様へのお願いをさせて下さい。」
ベス・クリーヴランドの口調は丁寧だった。
そして、次に話す内容こそが
ここで自分が最も伝えたい内容である事を
皆に明確に分からせる様に言葉を切り
そして続けた。
「皆様、こちらにご出席になられている方々は
間違いなく今、
実際に世界を動かしておられる指導者の方々です。
お互いをご覧になられればお分かりの通り
政治家や官僚、経済界の方々、宗教指導者、科学者
それだけでなく、職業は持たずとも
実質この世界を動かすお力のある
あらゆる方々が参加されています。
それらの方々の誰かが
この会合の意味を理解せずに去る事がない事を強く
お祈り申し上げます。
そして、今後私は米国大統領として
そして人類の一人として
あらゆる意味で最優先
最重要の課題として
この件に取り組む事をお誓い申し上げます。」
そこでベスは暫く言葉を切った。
そしていきなり話し方のトーンを変化させ
強く、怒った様な調子で一気に喋りきった。
「我々の目的は簡単かつ単純です。
『生き残る』事それだけです。
それ以上に多くの理想を追求する事は
残念ながら
そして大変恐ろしい事に
極めて難しいと思われます。
ただ我々が人類の最後の世代とならぬ様
生き続ける事です。
私はこの人類の生き残りを
もし邪魔する存在があるなら
いかなる手段を用いても
それを排除してみせる事も
併せてお誓い申し上げます。
そして生き残る為であれば
どんな相手であろうと
どんな形であろうと
そしてどんな内容であろうと
積極的に協力しあう事を
これも強くお誓い申し上げます。
我々人類は一つに纏まらなければ
この危機から生き残る事はできません。
私のお話は以上です。」
これを一気に話し終えると
ベスは何時もの魅力的な笑顔を取り戻した。
「これから本日の主役のプレゼンター
そして皆様がご存知のダイをご紹介申し上げます。
ダイ、さあ現れてくださいな。」




