(4) 宗教指導者、裏世界そして科学者の人たち
大樹は焦りを感じていた。
一体どうすれば、全世界統一政府などと言う
飛んでもない構想を成功させる事が可能だろうか。
地球は余りにバラバラだった。
来年に起こる、最初の隕鉄の落下の被害は
人類を破滅させる事こそないだろうが
被害としては甚大なものを与える事が予想された。
有史以来人類が経験する
最大の惨事になる事は間違いなかった。
だから、できれば来年の隕鉄の
落下の前に
全世界が一致協力して
大災害に備えて欲しいと大樹は願っていた。
もし十分な備えがなければ
死者は軽く10億人を超える筈である。
そしてその後の混乱によって
10年後の災害が訪れる前に
人類は滅びてしまうかも知れない。
それでは、大樹が今努力している事が
無意味になってしまう。
しかし、今日のヤヒム・ポンザールとの会談は
先が思い遣られる要素だった。
相手は国連の事務総長なのである。
そして、大樹が行うとしている事業の中心は
世界が統一された
行政政府の樹立だった。
それを、よりスムーズに実現する為には、
一にも二にも
国連を中心として活動すべき事には疑いがなかった。
しかし、今日のヤヒム・ポンザールとの会談を思い返す限り
ダイにはそれが正しい方法とはとても思えなかった。
大樹は、それからも多くの国々を回った。
訪問先は国家の指導者だけではなかった。
全世界を動かす有力な企業のオーナーや
宗教指導者とも会談を重ねた。
特に宗教指導者との会談は興味深いものだった。
なぜなら彼らの価値観は
宗教の価値観で表現される性質のものであったからである。
例えば人類が滅ぶのは、ある意味当たり前であったり
この世界の終末が近々訪れる事は
その宗教ではかねてから予言されてきた通りの事
だったりとして話される
と言った具合であった。
しかし、それは飽くまでも建前であって
流石に彼らも現実を認識している面があった。
彼らの多くは実に頭脳明晰であり
自然科学を深く理解している人間が多かった。
よって彼らが認識する現実は
皮肉な事に極めて自然科学的な見地で分析され
その結果、大樹が彼らに話した内容に対しての
彼らの反応は、素早く、そして極めて正確なものであった。
また会談の相手には
社会の表に出ない人々も含まれていた。
要するに黒幕と言われる人々である。
彼らは目立つことを嫌う一方で
社会の変化に対して強い警戒感を持つ人々であった。
そして、彼らは例外なしに、ダイに対して強い興味を持った。
まるで、人生で待ちわびた人間と会えたかの様に喜び
そしてダイを歓待した。
圧巻は科学者達だった。
ダイは世界の指導的な立場にある科学者達も
説得の相手として重要視していたのである。
なぜなら彼らが人類の頭脳であるからだった。
そして、彼らの多くは流石に極めて頭脳明晰であった。
しかし、一部の科学者達の中には
ヤヒム・ポンザールよりはるかに性質の悪い人々もいた。
しかし、大樹は余り気にせず
簡単に引き下がり余韻を残す作戦を取り続けた。
もちろん、彼らの理解を
超える科学技術の痕跡を残す事は忘れなかった。
これを続けて3ヶ月が経過する頃になると
少しずつではあるが、変化が現れてきた。
もちろんマスメディアには表れない変化である。
全世界の指導者や有力者
そして科学者や宗教指導者達に
変化が起こり始めたのである。




