(2) 官邸にて深夜
深夜の1時過ぎである。
首相官邸の寝室でパジャマに着替え
寝床に入ろうとしてドアを閉めたら
そこに青年が立っていたのである。
相本は瞬間的に殺られると思った。
暗殺者が潜んでいたと思った。
昼間のベスのメッセージことなどは思い出さない。
何せ無防備なパジャマ姿で、一人だった。
相本は氷り付いた。
下手に騒げばこの場で殺される。
「相本首相
ベス・クリーヴランドから
メッセージは届きましたか?
私はダイと申す者です。
大変驚かせて済みません。
どうしても緊急に
貴方と二人で
お話しなければならない事があって。」
ベス・クリーヴランドと聴いて相本は
微かに昼間のメッセージを思い出し
多少安心したが
逆に腹も立ってきた。
「君、何もこんな場所と時間でなくとも良いだろうが。
悪いが人を呼ばせて貰う。」
構わず出て行こうとする相本に対し
ダイ、つまり大樹は訴えた。
大樹は、母親が就寝した後に
ダミーの自分の映像を置いて
寝床を抜け出して来ていた。
米国と違い、日本国内では時差を利用する事はできない。
「貴方はベス・クリーヴランドに
私の話を聴くと約束した筈です。
私は夜のこの時間しか動けないのです。
私はエイリアン、つまり宇宙人なのです。」
ベスに約束した事を咎められて
一瞬足を止めた相本を
宇宙人と言う言葉が追いかける事となった。
『宇宙人だとぉ・・』
相本はやはり話を聴く気にはなれないと思ったが
ダイは続けた。
「ベス・クリーヴランドも貴方と最初は同じでした。
しかし、来年の9月12日に大災害が起こる事を聴いて
態度を保留したのです。
このまま行けば、日本でも大変多くの方が死ぬ事になります。」
もう相本は、この青年と掛け合うつもりは無かった。
訳の分からぬ不法侵入者と
一国の総理大臣が話し合う事などもっての他である。
出て行こうとする相本を
ダイの寂しそうな声が追いかけた。
「貴方は日本の総理大臣として
私の話を聴く義務があるし
それを米国の大統領に約束したのです。
考え直して下さい。
それに残念ですが、私を捕まえる事はできません。
私を見て下さい。」
相本が開けたドアを閉める為に振り返ると
目の前でその男の姿が消え始めた。
相本は、呆然とその姿に見入った。
人間が消えるのは
映画やマジックでは見た事があるが
目の前では初めてである。
ダイが消えた場所を呆然として眺める相本の耳元で男の声がした。
『またお会いする事があるかも知れませんが
この次はベスとの約束を守って下さい。・・』
声がした後、その気配が消えた。
相本は直ぐに守衛を呼び、狂った様に辺りを捜索させた。




