(11) 生き残るためには
「まず、地球の中心に達する事が必要になります。」
ダイは飽くまで大真面目で話した。
エキセントリッックな雰囲気の顔の後ろに
真っ白な雲が流れている。
ベスは本気になり始める自分を感じていた。
最初の関門を突破する為には
まずレベルの低い超鉄鋼を
南極と北極の氷上で生産する必要がある。
レベルが低いと言っても
地球上に存在する物質が
遠く及ばぬ強度を持つ。
その準備が
来年の大災害の直後から必要だと言う事だった。
特に北極では
氷を貫通させた後は海の中に垂直にトンネルを掘る事になり
直径200m程の規模が必要だと言うのである。
そしてその為の詳しい実施プログラムは
全世界の必要な人間への説得が済んだ後に
ベスに知らせると言う。
ダイはこれからその計画を
全世界のできるだけ多くの指導者達に伝える
とベスに言った。
それから一度皆に集って貰う。
プレゼンテーションを行うから
協力して欲しいと言うのである。
「ところで来年の隕鉄の落下を
あなたの力で止める事はできないの?」
ベス・クリーヴランドが
来年の災害を防ぐ最も簡単な方法について尋ねたのに対し
ダイは苦しそうに答えた。
「直径が数メートルのものであれば
私の力でも、或いは可能性があります。
しかし、その数百万倍もの質量に対しては殆ど無力です。
残念ながら私は、たった一人なのです。
私は5万年以上の時間をかけて
200光年に近い距離を経てこの地球に送られてきた
全く単独の存在なのです。」
実際には、到着から更に5万年の月日があったが
ダイはそれには触れなかった。
しかし、ベス・クリーヴランドは
そう答えたエイリアンの存在に
改めて強い衝撃とそして感動を覚えた。
5万年もの間、宇宙空間を旅してきたとは
・・ベスの感動を他所にダイは更に苦しそうな表情で続けた。
「正確には、もし1年前に私が存在していたら、
或いは最初の隕鉄を除く事が可能であったかも知れません。
地球から充分に遠い位置で
少しずつ小刻みに力を加え
地球に衝突する軌道からずらすのです。
しかし、私が地球で覚醒したのは
つい1週間前でした。
理由は分かりません。
そして、今から向かってくる隕鉄を動かしても
充分に軌道をずらせる場所まで行く事は不可能です。
それに、隕石群の本体への対処が
完全に手薄になってしまいます。
私自身も非常に苦しく思っていますが
或いはこれは予め仕組まれた運命なのかも知れません。
来年の隕鉄落下は避けられません。」
3日後、ヤコブソンがベスに報告を持って上がった。
その表情には
ベスに対する明らかな畏敬の念が籠もっていた。




