(9) 地球をぶち抜く
ダイはそのまま飛行のスピードを上げた。
時速20キロ位だろうか
かなりのスピードで廊下を通り抜けていく。
そのスピードで移動を始めると
下で歩く人々が何かに気付き始める様子だった。
恐らく風の音がするのだろう。
一様に顔を上げ天井を見る。
しかし、そこに何も変化がない事を見て取ると
直ぐに視線を前に戻した。
ベスは本当に久しぶりに楽しいと感じていた。
ダイはベスを連れたまま
そのままホワイトハウスの外に飛び出て行った。
ベスは、このままどこかに誘拐されるかも知れない
と言う微かな不安を感じたが
何も言わなかった。
それよりも、外に出てからの飛行の速度は驚くべきものだった。
ダイは、一気にスピードを加速させ
垂直に空を目指した。
しかし、身体に一切の変化がない。
ベスは一度軍のジェット戦闘機に乗せて貰った事があるが
その時ジェット戦闘機と言う乗り物は
その轟音とともに
慣性の法則との戦いだと言う事を悟ったのだった。
上昇する時も降下する時も
特に旋回する時などは、
身体が強い力で押さえつけられた。
ダイとの飛行している速度は
恐らくそれよりも遥かに速いスピードの筈である。
僅か5,6秒程で空の雲を突き抜けた。
しかし、身体に一切の負担がかからない。
周りで風を切る滑らかな音がするだけである。
更に、ダイは突然飛行を停止させた。
それは本当にいきなりの停止だった。
急ブレーキなどと言うものではない
数千キロのスピードから、いきなり停止したのである。
しかし、ベスとダイは何の抵抗も感じる事はなかった。
まるでテレビの画面の様に
ある意味で余所余所しく
外の風景が突然停止しただけだった。
止まった瞬間、前面の圧縮された大気が
ボッと言う音とともに前に押し出されて行った。
「貴女はこんな技術が
軍事兵器に利用される事を望みますか。」
ダイはベスの答えを求める事なく、続けた。
地上数千メートルの空中で静止したまま
エイリアンの話を聞く事は
とてつもなく非現実的にも思えたが
雲が流れていく周りの情景は
余りにリアルに美しく静かだった。




