(7) 地球統一政府
大体今の状況自体も
夢の中の様に思えてならない。
ベスはエイリアンに気付かれない様に
自分の少し弛んだ脂肪質の太腿を
さりげなく強く抓んでみた。
残念ながら酷く痛かった。
「誰か私以外の人間も
この話しを一緒に聞かせて戴いて良いかしら。
その方が良いわ。
だって一人よりも三人、四人の方が
信憑性が高くなるわ。
お願いだから
補佐官のヤコブソンを呼ばせて下さい。」
ベス・クリーヴランドは
本当にどうして良いか分からなかった。
そしてその状態に苦しんでいた。
少しでも楽になる一番良い方法は
誰かとこれを共有する事しかない。
しかし、ダイの答えはノーだった。
「いずれ必ずそうなります。
しかし、今は良い時期ではありません。
大統領の孤独なお立場に同情は致しますが
世界中の最高責任者たちが
この状況への理解を共有した時
初めて次の行動が可能になるのです。
もし最高責任者以外の人間に
私が接触すれば
その人間は大統領である貴女ではなく
私に注目する様になります。
そしてこの情報が、貴女ではなく
彼の立場から流れ出れば、情報に混乱が生じ
欲望や思惑が絡み始めます。」
ベスは、他の人間を同席させない理由を
述べたダイのその説明のどこかに
ごまかしがないかを探していた。
ダイはそのベスの疑惑を込めた眼差しを無視しながら
静かに間を置き言った。
「この危機を乗り切る唯一絶対必要な事に
地球全体を統一した行政政府
を創る事が欠かせないからです。」
『地球統一政府ですって!』
その言葉は、ベスの思考を一瞬停止させ
その後目まぐるしく回転させ始めた。
それは天啓に似た衝撃的な言葉だった。
合衆国大統領と言う
この全世界の運命を握る要職に自分がついて以来
徐々に徐々に大きくなっていた
全世界の将来に対する不安
まじめに仕事をすればする程
行き詰まりを感ずる疲れ
地球統一政府と言う言葉は
この悩みに対する天啓に感じたのである。
もちろん地球統一政府については
以前にも考えたことはあった。
しかし実現する可能性を
見出すことはできなかった。
強制力のない国連でさえ
上手くまとまらないのである。
だが今回は違う気がする。
確かに全世界的な災害を予測し
そして人類が滅亡すると言う危機が
現実として信じられれば
人類が一つにまとまる可能性はあり得る。
ベス・クリーヴランドに深い沈黙が訪れた。
その様子には彼女本来の
厳粛な雰囲気が戻り始めていた。
一分程の沈黙の後
ベスは観念した様に言った。
「その、何か
私を本気にさせてくれる
証拠の様なものを見せてくれないかしら。
私は米国の大統領です。
米国民に責任があります。
一方で貴方の話は
余りに荒唐無稽に思えるし
でも人類が滅ぶなんて
そんな脅迫みたいな事を言われて
黙ったままで居る訳にもいかないし。」
「分かりました。
それでは反重力がどんなものかをお見せしましょう。
まずお立ち下さい。
それからお手を取らせて戴いてよろしいですか?」
ダイの答えはベスの予想を裏切るものだった。
ベスは何か資料の様なものを期待したのだった。




