(6) 反重力
10年後に数百個の巨大隕石が
地球に衝突すると言う
とんでもない話を聞いて
強い恐怖感を覚えながらも
ベス・クリーヴランドは
とてもそれを本気にできなかった。
「貴方の言う事が本当だとしたら
一体どうすれば良いと言うの?
それとも貴方は
宇宙から人類の終わりを
連絡しにきてくれただけなの?」
ベスの相手を詰る様な話し方に対して
ダイは淡々とした様子で答えた。
その姿勢にベスは
なぜか心強さを感じ始めていた。
「残念ながら
10年後に人類が滅亡する可能性は
非常に高い状況にあります。
少なくともこのまま放置すれば
確実に人類は消滅するでしょう。
しかし、微かにでも可能性は存在しています。」
「どうすれば良いの?
核ミサイルで打ち落とせば良いとでも言うの?」
「あなたがたの核ミサイルで打ち落とす事は
少なくともこの10年間の努力では不可能でしょう。
隕石群は、あなた方の核ミサイルの
数十倍の速度で到達します。
しかも数百個の数です。
たとえ幾つかに命中させる事ができても
残念ながら状況に変化は
殆んど生じない筈です。」
ベスはマイゴッドと小さく呟きながら聞き返した。
「私達の核ミサイルでだめなのなら
あなたの核ミサイルを
提供してくれるとでも言うの?」
「いいえ、その方法ではだめです。
重力を制御する
反重力の力を応用するしか方法はありません。」
ベスは、反重力の意味は何となく理解できたが
具体的には何の想像も働かなかった。
「隕石群は地球の自転軸に対して
ほぼ垂直の角度で到来します。
これを防ぐ為に巨大な反重力装置を作ります。」
「具体的には何をすれば良いの?」
ベス・クリーヴランドは半分自棄な言葉使いで尋ねた。
自分は
なんと馬鹿馬鹿しい会話をしているのか
と感じ始めたからである。
『反重力ですって・・』
「具体的には
北極と南極を貫通するトンネルを掘ります。」
ベスはどうでも良いと言った表情で、手を横に振った。
「もうこんな会話は止めましょう。
そんな訳の分からない話は聴きたくありません。
北極と南極の間にトンネルを掘るですって?
モグラの穴じゃあるまいし。
地球を貫通する穴を掘るなんて
馬鹿馬鹿しい話はもう聴きたくありません。
さあ、お引取下さい。
エイリアンか何か知りませんが
もっとましな話をして下さいな。」
男はそれを聞くと
悲しそうな顔をした。
そして静かに諭す様に言った。
「大統領、この話を私がした
最初の人間は貴女です。
そして私はこれから
各国の首脳や宗教指導者
影響力を持つ科学者
マスコミ関係者、財界の要人、
その他、最初に説得しなければならない
多くの方々にこの話をして回ります。
でも大統領
もし貴女がここでこの話を聞き入れないのであれば
他の多くの方も聞き入れる事はないでしょう。
だから貴女がどうするかが一番大切なのです。
もし貴女が私を否定するなら
近い将来人類は確実に滅ぶと言う事を
良く理解して欲しいのです。
なぜなら来年の災害が発生してから動き出す事は
できないからです。
その理由は
来年の災害そのものからの復旧に
人類は専念しなければならなくなるから
10年後の隕石群の事などは
単なるデマとして掻き消えてしまうでしょう。
その意味で来年の隕石の落下に事前に備え
それを確実に予測した実績の基に
それからどうするかと言う事を
人類全体が認識しなければならないのです。
それでない限り、人類は確実に滅亡します。
大統領閣下。」
ダイは、一気に喋り、少し間を置いて言った。
「人類全体に現実を知らせると言う意味で
来年の隕石落下は
人類にとってむしろこの上のない幸運なのです。」
ベス・クリーヴランドは小さく唸って黙り込んだ。




