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遥かなる彼方からの贈り物  作者: 名も無き人
第4章 エイリアン大樹
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35/91

(1) ベス・クリーヴランド

ベス・クリーヴランドは

少し疲れてきたと感じていた。


60歳を過ぎた女性が

この一週間休みもなく

朝から晩まで働き詰めなのである。


しかし彼女は

自分のこの疲れの原因が

働きすぎの為だけではないと感じていた。


ベスは元来

非常に健康でかつタフな女性だったし

少なくともこれまでは

目標に向かって動き回っている時に

疲れを感じる事はなかった。


しかし今度ばかりは状況が違う気がする。


彼女がどんなに頑張っても

限界がある気がしてしまうのである。

問題が大きすぎるし、底なしだった。


次々に起こる出来事にも恐ろしさを感じたが

それ以上に

まだ世界全体が知らない、

つまり問題とはなっていない

様々な火種の方が気になった。


そして最も憂慮されるのは

これらの火種が導く事になる

「将来」の事であった。


今のベスは

滝に向かう流れの速い川に居て

流れに逆らって泳いでいる様な気がする。


どんなに頑張っても

いずれ滝に落ちてしまう気がするのである。


ベス・クリーヴランドが恐れているのは

米国の没落ではなかった。


この世界全体が、人類そのものが

終末を迎える事になるのを恐れていたのである。


彼女は聡明で頭が良く

かつ人格的にも多くの人望を集める女性であった。


そして諸々の偶然な要素も重なり

彼女は米国史初めての女性大統領となったのである。


その彼女の登場は、華々しかったし

共和党支持者を含む

全米国民の殆どが彼女に期待を寄せていた。


当然彼女も自分の命を賭けるつもりで

誠心誠意まじめに大統領職に打ち込んでいった。


そして5ヶ月が過ぎた。


大統領の仕事は

丁寧にやればやるほど、その量が多くなり

忙しくなるのは当然な事であった。


しかし彼女が疲れを感じ

限界感を感じているのは

そんな煩雑な日常の忙しさではなく

一人の人間としての

「人類」に対する純粋な不安に原因があった。


かつてネオコンと言われる

タカ派的な合理主義を貫いた大統領もいたが

その理由が分かる気がした。


全世界のバランスを取りながら

より良い方向に導く事など

とてもできそうに無かった。


ある意味でネオコンの大統領は

正しかったのかも知れない。

結果的に彼の政策の多くは

独善的なだけで失敗を繰り返したが、

彼の様になにが何でも

自らが正義として突っ張っていくのであれば

少なくとも政策の方向性を明確にする事は容易である。


場合によっては軍事力を行使する事も容易である。


しかし、この軍事力と言うものは

「伝家の宝刀」の性質を持つ。


その「伝家の宝刀」の使い方を

イラクやアフガニスタンで誤った事で

ネオコン勢力は

政権だけでなく

共和党そのものへの国民の支持を失ってしまっていた。


そして政権は民主党へと変わり続いた。


その中で先年

米国で食糧危機が起こったのである。

酷い干ばつが北米全体を襲ったのである。

そして前職の大統領が

その責任を引き受けるように任期を終え


その国務長官を務めていた

民主党のベス・クリーヴランドが

再び共和党候補を破ったのである。

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