(9) ロボット戦士
究極のコンピュータを得た二つの勢力は
当然双方が相手の存在を意識した。
そして二つの勢力の間に数多くの確執が生じ
多くの小さな争いが起き、感情が絡まり
次第に関係の悪化が始まって行った。
それぞれが
余りに速い急成長を実現し
しかもそれを続ける国家であった事が
成功への過信となっていった。
考えるコンピュータは万能と思えた。
そしてこれが災いした。
当然の様にこのコンピュータを利用した軍備拡張が始まった。
この軍備に関するイノベーションの質の高さには
驚くべきものがあった。
そのイノベーションの極めつけがロボット戦士だった。
考えるコンピュータを搭載し
冷徹に戦況を分析し
戦うロボットだった。
その戦局の分析と判断能力は
高度に訓練されたサイボーグ兵士を
遥かに凌駕していた。
驚くべき運動能力を持ち
高速で飛行、潜水し
火炎に耐え
何よりも自らの電子頭脳を含む
全てのパーツを修理に留まらず
自己改良するロボットだった。
自らエネルギーを獲得して
半永久的に活動し
最後には特攻兵器にも変化した。
欠点は余りに優秀な兵器過ぎた事だった。
このロボット戦士は
一度命令を受ければ
その命令が解除されるか
或いは次の命令を受けるまで
最初の命令を実行し続ける。
もし敵の大統領を殺せと命令されれば
その命令を実行し続ける。
そしてその命令が現実に下されたのだった。
そもそも片方の大統領から発せられた
その命令の理由には深いものはなく
単なる屈辱感からの
個人的な確執の結果だった。
命令を下す事は、実に簡単であったし
証拠も残らない筈であった。
独裁者同然の立場に慣れた事が
感情を先走りさせ
充分に冷静な判断を欠く結果となった。
命令を下されたロボット戦士は
隠密な刺客として自分が投入された事を理解し
たちまち味方からも見えない存在となった。
もし、このロボット戦士に与えられた命令が
定期的な味方とのコンタクトを
義務付けた命令であれば
手遅れにはならなかったかも知れない。
しかし、命令を下した側の後ろめたさが
その注意をおろそかにしてしまった。
つまり、この兵器の性質が
充分に理解されないまま
命令は下されてしまったのである。
守る事より
攻める事の方がより
イノベイティヴな戦いなのか
不思議な事に
攻める事を試行錯誤するロボット戦士は
その目的に対して
異常なまでの自己改良を繰り返し続けた。
考えるコンピュータを搭載したロボットである真価は
皮肉にも
ここに十二分に発揮される事になったのである。
たちまち暗殺のターゲットとなっていた大統領が
暗殺された。
大統領を殺された側の政府は
直ぐに綿密な調査を行った。
充分な証拠の確認はできなかったが
調査の結果
暗殺はロボット戦士の仕業である事は間違いなかった。
直ぐに副大統領が臨時の大統領になり
敵国を厳しく非難し
強硬な対策を講じる事を宣言した。
しかし、不幸な事にその就任が早すぎた。
本当の紛争はここから始まる事となる。
それは大統領になった元副大統領が
大統領就任から僅か2日目に
再び暗殺されてしまったからである。




