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食べれば強くなる

地上へ戻ると、最初に悲鳴を上げたのは村人だった。

カイの背中にいる少年ではなく、その後ろから出てきた灰銀色の獣を見たからだ。

若い護衛が剣を抜く。

「何連れてきてるんだ!」

「俺も聞きたい」

「魔獣か?」

「多分違う」

「召喚獣?」

「可能性は高い」

「さっきより答えが進歩したな!」

年嵩の護衛も弓へ手を掛ける。

カイは少年を母親へ渡した。

泣きながら抱き締める姿を確認してから、ようやく後ろを見る。

灰銀色の獣は遺跡の入口付近に伏せていた。

誰かへ近づこうとはしない。

逃げようともしていない。

ただ周囲を警戒している。

村人の一人が石を拾った。

獣の耳が動く。

カイがその間へ入る。

「やめろ」

「危険だ」

「分かってる」

「なら殺した方がいい」

「話が早すぎる」

「遺跡から出てきたんだろ?」

「それも事実だ」

「だったら」

獣の腹から大きな音がした。

全員が止まった。

カイは獣を見る。

獣もカイを見る。

「……腹か?」

もう一度鳴る。

商人が呆れたように言った。

「怖さが少し減ったな」

「食料あるか」

「今度は獣の分まで私が出すのか?」

「俺の報酬から」

「本当に残らんぞ」

保存用の干し肉を一つ受け取る。

獣へ投げる。

一瞬で食べた。

「早いな」

二つ目。

それも消える。

三つ目。

まだ見る。

「お前、どれだけ食うんだ」

四つ目を渡したところで、少しだけ呼吸が落ち着いた。

年嵩の護衛がカイへ尋ねる。

「遺跡の中で何があった?」

カイは簡単に説明した。

無人で動いた召喚装置。

現れた獣。

古代自動兵器。

そして、獣が機械の魔力核らしきものを食べた後に身体を変化させたこと。

「食った物を取り込んだ?」

「そこまでは分からん」

「爪が金属化したんだろ」

「ああ」

「危険すぎる」

「そこは同意する」

若い護衛が驚いた。

「同意するのか?」

「危険なものを安全だって言い張る趣味はない」

カイは獣を見る。

灰銀色の爪には、すでに金属光沢がほとんど残っていない。

一時的な変化だった可能性もある。

しかし食欲だけは残っている。

「強くなる能力なら便利じゃないか」

若い護衛が言った。

「便利に見える?」

「少なくとも戦える」

「食う度に腹が減るなら、そのうち何を食う」

若い護衛が黙った。

そこが問題だった。

食物。

魔獣。

魔力核。

機械。

今はまだ分からない。

もし何でも取り込めるなら、どこかで境界を決めなければならない。

そして、この獣がその境界を自分で決められるかも分からない。

カイは腰を下ろした。

獣と少し距離を取る。

「お前、俺が分かるか?」

金色の瞳がこちらを見る。

「言葉」

耳が動く。

「分かってる?」

反応はある。

意味まで理解しているかは不明だ。

干し肉を一つ持ち上げる。

獣の視線が肉へ移る。

「これは完璧に分かってるな」

若い護衛が笑う。

緊張していた村人にも、少しだけ空気が戻った。

それでも弓や武器を完全に下ろす者はいない。

当然だった。

見た目が少し静かだからといって、未知の召喚生命が安全になるわけではない。

カイも同じだった。

「今夜は見張る」

「連れていくのか?」

商人が聞く。

「まだ決めてない」

「この旅、どんどん荷物が増えるな」

「俺のせい?」

「他に誰がいる」

カイは反論しようとしてやめた。

獣はまた伏せていた。

誰かの命令を待っているようには見えない。

ただ、なぜかカイから一定以上離れなかった。

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