商隊の護衛③
商隊から俺が見えなくなったくらいからスピードを上げ、山中の盗賊のアジトへ向かう。
盗賊のアジトは、自然にできた洞窟を加工して作られたもので、そこにあると知らなければまず気付かない佇まいとなっていた。
アジトの外には見張りを置かず、洞窟部分に少し入った所に2人の、おそらく門番のような役目の者がいるようだ。
自分たちが襲われる側になるとは考えていないのだろう。
門番のような役目の者を置いているのは、この場所を知っている協力者の裏切りなどを警戒しているんだろうか。
俺が探った限り、アジトの外の半径2km圏内には人間の気配を感じない。
本当にアジトの中で残りの者全員が待機していそうだ。
門番役2人に気付かれないように中に入り、首を折って殺した。
血の匂いが奥に行かないように配慮したが、そこまで気を遣わなくても大丈夫だったかもしれない。
アジトの中の構造も尋問した3人から聞いている。
進む内に分岐しているところは念のために、1つを除いて土魔術で壁を作り、簡単には出られないように封鎖した。
食堂を兼ねた集会場のようなところで頭も含めた大人数が溜まっているらしい。
集会場以外の場所にいる者から狩っていく。
7人狩った所で、集会場以外の場所を網羅的に確認できた。
残り12人は集会場だな。
集会場に近づくと笑い声が聞こえる。
全く外の様子に気付いていないようだ。
・・・まあ気付かせないように動いたんだが。
集会場に入り、尋問した3人に聞いた頭と幹部3人を除いた8人を殺した。
「何だテメッ」
幹部の1人が何かを話そうとしているところを殴って気絶させた。
身に付けていたナイフを構えた幹部2人も同様に殴って気絶させた。
盗賊の頭は椅子に座ったまま、表面上はふてぶてしい態度で、
「お前が南東の辺境開拓村から来たギフト持ちか」
と声をかけてきた。
無言で盗賊の頭の右手首を切り落とす。
「なっ、お前っ」
左手首も切り落とす。
「がっ、何」
両膝から下を切り落とす。
盗賊の頭は椅子から転げ落ちた。
「さあ、洗いざらい吐いてもらうぞ」
盗賊の頭は肝が座っていていそうだったので、最初に心を折ってから精神魔術をかけたが、そこまで精神的に強い人間というわけではなかったようだ。
まあ、ハッタリでも、眼の前で仲間全員を無力化されて、あの態度が取れるならそれなりの人物だと言えるかもしれないが。
まあ、俺の敵になったのが運の尽きだろう。
幹部も1人ずつ尋問し、最後に全員始末した。
始末を終えた後で、頭の部屋に行き、ローゼルスタッド侯爵家との取引の記録などを回収した。
これまでに奪った財産で未処分の物が、1つの部屋にまとめられていた。
これは別の機会に回収にくるか。
ローゼルスタッド侯爵家の者が取引のためにここに来る可能性がある。
土魔術で部屋の外の通路まで埋めて、ぱっと見ではたどり着けないようにしておいた。
少し時間をかけていろいろ調べたが、往復の移動時間が短すぎると商隊の連中に悟られないように、時間の帳尻を合わせるのにちょうどいい。
説明する時は、資料や残された財産については触れずに、行って殺して帰った、それだけやってきたことにする。
盗賊の頭と幹部3人の首を、盗賊のアジトに行ってきた証拠として持ち帰る。
まあ、適当にブラブラ時間を潰して帰ったとは思われないだろうが、ちょっとした疑問も持たれないようにしておく。
商隊が待機している所に戻ると、一様にほっとした顔をされた。
それなりに不安だったようだ。
盗賊のアジトのお土産、4つの首も見せた。
商隊の商人の何人かが、頭と幹部の顔に見覚えがあると言っていた。
会ったことがあるわけではなくて、カンゲルヴァイン侯爵領都で人相書きが出回っていたらしい。
襲った相手を全員殺していたわけじゃないようだから、人相書きくらいは出回っているか。
盗賊を全滅させたことで、後顧の憂いもなくなり、商隊は意気揚々として再出発した。
それ以降のカンゲルヴァイン侯爵領都への道行きも、カンゲルヴァイン侯爵領都での商売も、王都への帰り道も、特にトラブルもなく、無事に帰り着いた。
なお、盗賊の連絡役になっていた者、よく商人にまとわりついていた者は、王都で見つけられなかったようだ。
やはり手練の諜報員か何かだったのかも知れないな。
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