レフ兄さんの人脈① 下町訪問
レフ兄さんとケイトさんが王都で構築した人脈に、俺も接触させてもらうことにした。
人脈と言うと大げさかもしれないが、利害関係とそれ以上の関係を築けているのは一種の資産とも言えるだろう。
人間関係を価値で測るのは性に合わない者もいるかもしれないが、俺も先方にとって価値ある人間として測ってもらえばいいと考えている。
まあ、レフ兄さんたちはもちろん、俺もそこまでドライに割り切っているわけじゃないが。
レフ兄さんには最初に王都の東の方にある下町の連中を紹介してもらった。
雑多な人間がいて、意外なスキルを持っている者もいたりする。
それと、俺にとって息抜きができる場所になるだろう、という意図もあるらしい。
エルン村長も、レフ兄さんも、下町の連中と交流することで息抜きできていたらしい。
エルン隊にも下町出身の者がいたと聞いているし、エルン村で活躍していた槍術ギフトのマクシムさんも王都の下町出身で、その奥さんも、義父のセルゲイじいさんも下町出身だったはずだ。
公私ともに付き合える人間と出会える可能性のある場所、ということだな。
エルン村長がまだエルン隊を結成する前から出入りしていた酒場が、今もやっているということで、レフ兄さんと一緒に行ってみた。
まだ夕方だったが、既に結構賑わっていた。
「おうレフ!今日は見ない顔のヤツを連れてんな!」
「ギフト持ちの通う学校のバッジ・・・そいつもギフト持ちかよ!」
「背丈は普通だが、厳つい兄ちゃんだな!」
少し中に入っただけで結構声をかけられた。
レフ兄さん・・・結構通ってんな?
すっかり常連じゃないか。
カウンターに行くと、酒場のマスター・・・と言うよりは、おやっさんとか大将とか呼びたくなる、結構年配だがガッシリした体格の男が声をかけてきた。
「おうレフ!そいつが前から言っていたアルトかい?今年学校に入学って聞いていたが、本当に12歳なのか?」
「「「ええーーーー!!」」」
すごく声が揃った。
すごい一体感だな。
驚かれるのには慣れたが。
「ん?ああ、昔エルンが連れてきたイゴールに似てるかな?あいつもエルンと同じ年とは思えないぐらいに老けていると言うか、厳つかったからなあ」
思わぬ名前が出て、驚いて動きを止めてしまった。
エルン村長だけじゃなくて、イゴール父さんも、ここに出入りしていたのか・・・
「そのイゴールの、息子です」
「やはり、そうか」
食器を洗う手を止めて、俺の肩を叩きながら「よく来たな」と声をかけてくれた。
「マスター、よく憶えてるね。イゴールさんはそんなにアルトに似てるのか」
「客商売だからな。人の顔を憶えるのも仕事の内だ。それにイゴールのヤツは印象に残りやすいからな。
ああ、アルトがイゴールにそこまで似ているってわけじゃない。イゴールのほうが厳つさは上だったな。
奥さんが美人だったから、そっちの血が働いてんのかもな。
まあ、豪快さではエレナもイゴールには負けていなかったが」
エレナ母さんまでここに出入りしていたんだな。
まあ、そんな気もしていた。
来年、イリナが王都に来たら、ここに連れて行ってやろう。
イリナは母さん似だから、すぐに気づいてもらえるだろうな。
酒場にいる客の中にもイゴール父さんやエレナ母さんのことを知っている者が何人もいた。
イゴール父さんは見たままだが、エレナ母さんは見た目と豪快さのギャップがすごくて、特に記憶に残っていたらしい。
貴族家がばら撒いた、元エルン隊の崩壊、その責任がイゴール父さんとエレナ母さんにある、という話については、この酒場の連中は誰も信じていなかった。
「クソ貴族の言う事なんざ、だれが信じるんだよ!」
と、貴族が聞いたらブチ切れそうな発言も出ていた。
まあ、ここに貴族が出入りすることなんて、まずないだろうが。
エルン村長やレフ兄さんが、ここに来ていた理由がよく分かる。
なかなかに居心地のいい場所だ。
レフ兄さんと俺が入った時にいた客と、あとから来た客にも、いろいろ話を聞いたが、いろんな経歴を持った人間がいた。
俺たちより先に入っていた客は年配の者が多かったが、引退した者や、息子や娘に仕事を引き継いでそれを手伝っている立場の者などもいた。
話せる範囲で、俺のやりたいことや、欲しい人材などについても伝えた。
面白そうだと乗ってくる者や、心当たりに当たってみると声をかけてくれた者もいた。
レフ兄さんは下町で、たまに仕事を受けたり、仕事を手伝ったりしているらしい。
それと、医者にかかったり薬を買ったりする余裕のない者に、生命魔術を使って治してやることもあるらしい。
まあ、学生時代に魔術を研究していたという建前と、今魔術を研究する部署にいるから、使えても立場的におかしくないだろう。
俺も辺境開拓村で必要だったから学んだ、とすれば、それほどおかしくはないかな?
まだ公に俺が魔術を使えることにするつもりはないが、必要であれば使うこともあるだろう。
それくらいの秘密は守ってくれそうだしな。
俺は酒を飲まずに茶を頼んで飯を食う方を優先していたが、レフ兄さんは結構飲んで、酔っていた。
レフ兄さんなら身体術でも生命魔術でも、酔いを治せるだろう。
まあ、そうしていないってことは、そういう気分だということだ。
そんなレフ兄さんに肩を貸しながら、俺もいい気分で学生寮や職員寮のある方へ歩いていた。
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