初登校
レフ兄さんとケイトさんと会った翌日。
食堂で朝食を摂り、朝9時になる少し前、校舎1階の事務局に向かった。
「失礼します」
挨拶して事務局の部屋に入る。
ドアを開けてすぐにカウンターがあり、窓口となっているようだ。
「本日からこちらでお世話になる、アルトです。事務長からこちらにくるようにと指示を受けて来ました」
カウンターの窓口が3つあるが、1つしか人がいなかったので、そこにいた事務員らしき女性に声をかけた。
「あ、ええ。伺っています。少しお待ちください」
一瞬驚いたような顔をしたが、すぐに取り直して事務員の女性は奥の部屋に向かった。
奥の部屋から事務員の女性と事務長が連れ立ってやってくる。
「おはよう、アルト。今日からこのギフト保有者養成学校での生活が始まるね」
「おはようございます、事務長。今日からよろしくお願いします」
挨拶を返すと、事務長はうんうんと頷いている。
最初に受け付けてくれた女性は「では、これで」と離れて元いた席に戻った。
「では、こちらに来てくれるかな」
事務長は出てきた部屋とは違う方向へ俺を導いた。
事務室内に、昨日レフ兄さんたちと話した会議室のような場所があった。
その会議室に入ると、テーブルに資料が置かれていた。
事務長が椅子に座り、「そちらへ」と席を勧められたので事務長の向かいに座る。
「さて、今日はまず、学校の講義スケジュールなどを決めていく。
どの講義も希望次第で受講できるが、ギフト持ちがこの学校に入学すると必ず受講しなければならない講義もある。
そして、必須の講義には試験による免除もある。
その辺りは辺境開拓地域にいた時に聞いているかな?」
「はい。エルン・ソーディスから聞いています。
それにしても、入学する学生を全て事務長が対応しているのですか?」
答えるついでに、気になったことを聞いてみる。
「ほっほっほ。そこが気になったのかね。まあ、事務長と言っても大した役職ではないからね。
でもまあ、全ての入学者に対応しているわけではないよ。
辺境出身の者と、貴族家の者くらいだね。
アルトがそうという訳ではないが、面倒事が多そうな者は最初から私が対応しているよ」
「なるほど。ありがとうございます」
貴族家の者の対応は子爵家のおそらく現当主である事務長が対応したほうがトラブルは少ないだろうな。
辺境出身は・・・貴族家とは別の意味で問題がありそうだ。
野生児のような者も多いだろうしな。
護衛をつけていないのは、それが必要ではないと思えるくらいには信頼されているということだろうか。
「ふむ。それではまず、一通り説明させてもらおうか」
事務長から受けた説明をまとめると、次のようになる。
・入学者全員、ギフト持ちでない者も含めて、必須の講義は受講または試験を受ける必要がある
・必須の講義は礼儀作法や一般知識に関する8科目
・ギフト持ちは魔法士系、軍事系、生産系の3種類に分けられ、それぞれの必須または選択科目がある
・選択科目は全ての取得が必須ではないが、複数の科目から1科目ないし数科目は必須で受講する必要がある
・必須または選択以外の講義は好きに受講できる
・何らかの職に就くか、15歳になる年を迎えるまで学校に在籍できる
・必須科目を全て受講していれば、学校からの卒業は自由
・学校在籍中は準騎士の地位にある
・学校を卒業し、公職に就けば魔法士系なら男爵、軍事系なら騎士、生産系なら準騎士の地位に置かれる
・15歳になった時点で必須科目をすべて満たしていなければ、平民の地位となる
まず大前提として、アクチュア王国は建国の成り立ちと信仰から、ギフト持ちを優遇している。
ギフト持ちを優遇してそれなりの地位に置くため、最低限必要な素養は学校で身に付けさせる、それでも身に付けられなければ優遇対象から外す、ということになっているんだろう。
そして、最低限に留まらない、ギフト持ちが活躍するための素養を身に付けさせるために必須科目以外の講義を開講しているということになるだろうか。
ギフト持ち以外も有償で入学させているのは、開講している講義の受講人数の増加では手間がそれほど増加しないことと、税以外の収入で制度としての継続性の確保を狙っているということになるだろうか。
ギフト持ちを優遇するという観点では、それなりにうまくできている制度だと思う。
ただ、制度が形骸化していないか、ギフト持ち以外も含めた全体最適が考慮されているか、などは気になるところだな。
・・・俺が考えることではないかもしれないが。
少なくとも、現時点では。
事務長は俺が理解できたことを確認し、実際にどのような講義が開講されているかをざっと紹介してくれた。
武術に関する講義はかなりの種類があるようだ。
剣術や槍術などの武術系のギフト持ちが、自分の子孫にその技術を継承し、その子孫がそれぞれの講義を担当しているらしい。
戦略や戦術の講義もあるようだ。
エルン村長の時代だと、かなり形骸化の進んだ、過去の戦訓をなぞるだけの講義だったらしい。
今はどうなっているか、改善されているか、より酷くなっているか、気になるところだ。
講義よりも、過去の戦争の記録などが残っているのであれば、資料を直接当たった方がいいかも知れない。
「さて、当校の講義や制度に関する説明は一通りできたと思う。何か質問はあるかね?」
「書籍や資料を集めている場所などはないですか?」
「ほう。そこが気になるかね。
校舎に図書室を設けておる。
書籍や資料はそこに集めるようにしている。
講義を担当している講師と、ごく一部の学生しか利用しとらんがね。
全ての図書を開放しているわけではないが、学生にも利用する権利がある」
ふむ。
戦略や戦術の講義がイマイチでも、資料に当たることができそうだ。
過去の戦争に関する準備や成り行き、結果などは知っておきたいからな。
後は・・・
「必須科目の試験はいつ受けられますか?」
「担当の講師の手が空いている時ならいつでも可能だよ。
どれを・・・いや、全て受けるつもりかな?」
「はい」
「ふむ。それでは必須科目の試験のスケジュールを先に組んでおこう」
「ありがとうございます」
「うーむ。南東辺境開拓地域の者は優秀な者が多いようだ。
3年前のレフ・ソーディスも入学後すぐに必須科目を全て試験で免除しておったな。
まあ、レフ・ソーディスはその後は15歳になるまでのんびりしておったが・・・」
レフ兄さんは必須科目の講義を受けるのは面倒に思ったらしいな。
その後15歳まで学校に居座るのはあからさまだったかもしれない。
まあ、そんな学生は他にもいそうだから、大丈夫か。
それから、受講する講義のスケジュールを組んでいった。
武術系の講義は一通り受けてみる。
戦略や戦術に関する講義も一応受けてみて、イマイチなら講義を抜けよう。
生産系の講義も面白そうなので、余裕ができたら受講してみようと思う。
魔術の講義は・・・まあいいかな。
俺が使えると公に明かすのは、先の話だしな。
当面のスケジュールを組み終わり、今日受けられそうな必須科目の試験を受けていくことにした。
学校でのスケジュールはほぼ確定した。
後は、学校外での予定も埋めていくとしよう。
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