レフとの再会②
「キリル兄さんのことはともかくとして、ケイトさんのことを教えてもらえるかな?」
落ち着いたレフ兄さんとケイトさんから聞いた話をまとめると、次のようなことが聞けた。
・ケイトさんは南西辺境開拓地域の出身で「調合」のギフト持ち
・南西辺境開拓村ではギフト持ちの警備隊長が優秀で、戦闘系のギフト持ちでないケイトさんは大森林探索や巡回には加わらなくてよかった
・薬の調合や、素材の加工などで村に貢献し、村を出る前にできるだけの知識・知見を残してきた
・ギフト保有者養成学校でレフ兄さんとケイトさんが出会い、同い年で辺境出身、生産系のギフト持ちということで意気投合し、よく行動をともにすることに
・学生時代から、ケイトさんはレフ兄さんの動きの手伝いをしていた
・学校を退校することになった今年から、同じ部署で働くことに
そうか。
辺境出身で生産系ギフト持ちなら、そりゃレフ兄さんと話が合うだろうな。
それにしても南西辺境開拓地域出身か・・・南西は5つの辺境開拓地域でエルン村のある南東を除くと一番安定しているところだったな。
魔素濃度が低く、魔境じゃない海に面していて、他の国とは接しておらず、能力のあるギフト持ちが防衛面を統括していた。
・・・だからこそ、南東の次に、スタンピード誘引の狙い目になりそうだったところだ。
南西辺境開拓地域を一度視察した後にレフ兄さんがエルン村を出たから、草が潜入していたことはレフ兄さんからケイトさんも聞いているだろう。
まずは安心させておこうか。
「南西辺境開拓地域の村には、レフ兄さんと俺のいた南東のように、ローゼルスタッド侯爵家の草、潜入工作員が潜伏していました。
そのことは聞いていますか?」
「ええ、レフから1人は少なくとも潜入しているって聞いたわ。
私が住んでいた時は全く気付かなかったけど。
・・・私が出てから、どうなったのか、分かる?」
「はい。全部で3名の草が潜入していました。
3名とも殺した上で、草の証拠をあの村の警備隊長が分かるように残しています」
「3名も!? 私が知っている人もいたんでしょうね。
ディミトリ隊長が対応しているなら、安心ね」
「南東でスタンピードを引き起こそうとした3年後でしたが、やはり南西でもスタンピードを起こそうと動いていましたね。
具体的な動きを見せる前に処分しましたが・・・」
南東以外の辺境開拓地域を時折観察するようにしていて、俺が10歳の時、2年前に草をまとめて処分したんだよな。
荒れている東部は草を殺しただけで、他の3地域では責任者向けに証拠を残すようにした。
ローゼルスタッド侯爵家の構築した仕組みも、相当削れただろう。
・・・その辺りの焦りもあって、王都の使者ごと俺を襲撃したことに繋がるのかもしれないな。
南西も含めて、各辺境開拓地域でスタンピードが起きる可能性はほとんどなくなったことを知らせると、ケイトさんも安心したようだった。
草を処分したことに動じないところは、さすが、安定したところとはいえ辺境に生きた者だな。
俺が王都に来る時に、ローゼルスタッド侯爵家の手の者に襲撃されたことを話すと、2人とも驚いていた。
そりゃ、王都の使者ごと襲撃するなんて思わないよな。
襲撃に使われた組織『暗闇の牙』については、王都の有名な闇組織として知っているくらいで、詳しいことは分からないようだった。
ただ、2人がこれまでに王都で構築してきた人脈を使って、調べてみてくれるそうだ。
アジトもしくは構成員、組織に至る糸口さえ掴めれば、たどり着いて、潰すことができるだろう。
それから、レフ兄さんとケイトさんが王都で積み上げてきたことの話を聞き、俺はレフ兄さんがエルン村を出ていった後にあったいろんなことを話した。
人間以外の種族との交流には、2人ともに思いっきり驚かれた。
俺が王都の使者に年齢詐称を疑われた話は、ここでもウケた。
・・・納得もされてしまったが。
結構長く話していたが、2人に仕事中にこんなに抜けて大丈夫か聞くと、それなりの成果、魔術とその効果についての報告を挙げていると、その辺りは緩いんだそうだ。
まあ、あまり期待されていない部署だというのもあるかもしれないけど、気楽な部署だな。
今後の行動指針についても話をした。
・2人の構築した人脈に俺を繋いでもらうこと
・商売、特に行商ができそうな人材、情報収集・拡散がやれそうな人材など、特定のスキルを持った人材を確保すること
・俺が戦場に出るまでと、戦場に出た後の動きに関すること
この辺りについては特に重要なので、綿密に話を詰めた。
会議室に入ってから時間が経ち、窓から入る日の光もかなり傾いてきた。
「もう夕方になったのか。随分と話していたな」
「そうね。もう水だけで何杯飲んだかしら」
最初にお茶を入れてくれたが、その後は水魔術で水を注いでいた。
水分以外何も取らずに長い時間を過ごしてしまったな。
「今日はこれくらいにしようか。できれば定期的に時間を取って話す場を作りたいな」
お互いにスケジュールは空けやすい環境にある。
月次くらいのペースでそれまでの進捗などを話したいところだ。
レフ兄さんとケイトさんは職員宿舎に住んでいるらしい。
互いの住所と部屋番号を教え合い、急ぎの用事がある時は職員宿舎と学生寮へ連絡することになった。
「アルト。会えて良かったわ。
話には聞いていたけど、全く歳下には見えないわよね。
話していると余計にそう思ったわ」
「アルトはギフトに覚醒してから、ずっとこんな感じだからなー。
父さんも母さんもアルトのことは対等に扱っていたくらいだ」
「やっぱりそうなのね。話し方も、話の内容も、手慣れた大人みたいだったものね」
もう何歳に見えるかについては諦めがついてきたな。
そういうものだと思って、うまく利用するくらいでいよう。
「こちらこそ、ケイトさんに会えてよかったですよ。
レフ兄さんのことを、よろしくお願いします」
「おい、やめろよ!何か恥ずかしい!」
ケイトさんにレフ兄さんのことで丁寧に礼をしたら、レフ兄さんが恥ずかしくなったようだ。
レフ兄さんはまだ15歳だし、大人になりきれていない年齢だよな。
レフ兄さんとケイトさんとは会議室で別れた。
2人は会議室を片付けてから部署に戻るようだ。
俺は学校に戻り、食堂で遅めの昼食と早めの夕食を兼ねた食事をしよう。
レフ兄さんの成果は、相方を見つけていたことも含めて、想定以上だった。
レフ兄さんの築いた人脈や仕組みに乗っかって、王都で進めようと考えたことを前倒しで始めていくことができそうだ。
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