学校の食堂
今日の『仕事』を済ませ、また内壁の門を通って寮の自分の部屋に帰った。
校内で途中ですれ違った者には軽く挨拶をしたが、結構な割合で二度見された。
・・・俺の身長・顔とバッジの色を確認したのだろう。
親の体格が良くて、しっかり食事をしていれば、俺くらいの歳で俺くらいの体格の者が他にもいそうなものだが・・・後は顔かな?
気にしても仕方がないし、早々に戦場にいく可能性がある身としては、見かけで甘く見られないのはいいことだとも思っている。
まあ、学校の連中もじきに慣れるだろう。
食堂に行くと、まだ夕食の時間には早いからか、人はまばらだった。
食堂の入口と、注文するカウンターに5つのメニューが書かれた板が備え付けられていた。
黒板のようにチョークで書かれていたから、時間帯ごとに書き換えているのだろう。
カウンターにいるおっちゃんに肉料理のセットを注文する。
顔とバッジをマジマジと見られたが、「兄ちゃんかなり食いそうだな。特盛にしとくかい?」と聞かれ、「お願いします」と答えた。
おっちゃんは「兄ちゃん顔の割に丁寧だな!」と笑いながら厨房の方に注文を伝えてくれた。
それほど待たずに、厚めに切ったステーキとスープとサラダ、それに更に大盛りに盛られたライスがトレーに乗せられて俺の前に出てきた。
予め途中まで仕上げてあるか、温めるだけのものを作り置いているようだ。
貴族はあまり利用しないだろうし、効率優先のシステムになっているんだろう。
「今日の肉は豚だぜ!おかわりが欲しくなったら声をかけてくれ!」
いかにも量を食いそうだと見て、声をかけてくれたようだ。
確かに、これでは足りなさそうだ。
聞いてはいたが、食肉用の豚が育てられ、王都にも流れてきているんだな。
辺境だとすぐに魔獣化するから家畜を育てられず、豚を食べる機会がなかった。
王都に来る途中の旅路でも家畜の肉を食べていたが、これが普通になるんだな。
魔獣の肉よりは旨いからありがたい。
・・・瘴気獣の肉には到底かなわんがな。
おかわりを前提に、カウンターから近い場所の席に座り、食事を始めた。
・・・結構、いやかなり旨いな!
俺の真のギフトで確認したが、カウンターにいたおっちゃんは料理のギフト持ちだった。
あのおっちゃんが監修して料理を提供しているんだろう。
塩味と香辛料のバランスが格別なポークステーキ、食感とかかっているドレッシングが絶妙なサラダ、具はそれほどないのに存在感を主張する奥深い味のスープ。
それと、ライスも長粒種だがそれに見合った炊かれ方をしているようで、これも旨い。
素材もそれなりに良いものを使ってそうだが、調理技術でここまで料理が変わるんだな・・・
全て食べ終えた後、おかわりというか、もう一回注文しにカウンターへ向かう。
食器を返しながらおっちゃんに感想を述べ、今度は魚料理を頼んだ。
「お前、分かってんな! 佇まいからして辺境出身と見たが、食事の作法といい、今の感想といい、なかなか堂に入ってやがる。
この学校に入ってきたばかりだろうが、なにモンだオメエ?」
「何者と言われても・・・辺境出身で今日王都にやってきた、この学校の生徒ですよ」
「今年入学ってことは歳がいってても12歳か・・・そうは見えねえが、そのバッジを与えられているってことはそうなんだな。そうじゃなくてよー」
「礼儀作法や基本的な学習は、辺境開拓村で教えてもらっていました」
「そんな余裕のある辺境があるか?・・・いや、エルン・ソーディスのいる南東ならあり得るか・・・」
「よく知っていますね。その通りで、南東辺境開拓地域でエルン村長、エルン・ソーディスにいろいろと学びました」
「エルン村長・・・な。エルン隊が解散してから、辺境でもうまくやっていたんだな」
「エルン村長のことをご存知なんですか?」
「ん?ああ、直接話したことがあるって訳じゃないんだけどな。
平民出身で戦場では誰よりも成果を上げる。何よりエルン・ソーディスが活躍する戦場では味方の戦死が少なくてな。
俺の知っている奴らが生きて帰ってきて、そいつらがみんなエルン・ソーディスのことを褒めそやすもんで、まあ、なんていうか、ファンになったというかな。
当時そういう奴は結構いたもんだぜ」
少し照れた顔をしながらおっちゃんが話している内に、俺が頼んだ魚料理がカウンターに乗せられた。
「おう。まあ食えよ! ああ、俺はこの食堂の料理長をやっているナセルだ。よろしくな!」
「ありがとうございます。俺は、アルトです。これからもよろしくおねがいします」
ナセル料理長に礼を言って、料理を持って先ほどと同じ席に座った。
エルン村長は王都でも有名だったんだな。
十年以上経っても忘れられていないくらいに。
ファンにはエルン隊解散の後、南東辺境開拓地域の管理者になったことまで把握されているのか。
少し誇らしい気持ちになって、肉料理とはまた違った風味の魚料理に舌鼓を打った。
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