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大力(嘘)で身を立てる  作者: ろん
第二部 王都進出

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過去の落とし前

俺は内壁の門を通り、王都の南西方向に向かう。


外壁の門から続く王都中央の大通りは相変わらず幅広いが、徒歩の者は端を歩いているから、端以外は馬車や騎馬以外の通行がなく、広々として先の方まで見える。


王都中央の大通りから1本脇道に入ると、道が細くなり、それでいて人通りは多くなる。

こちらの道のほうが近隣の住民が生活する上でよく使うんだろう。


3本ほど道をまたぐと、王都中央の大通りほどではないものの、馬車がすれ違えるくらいには広い道が走っている。


その広い道を渡り、更に何本か道をまたぐと、生活臭の濃い、下町のようなエリアに入った。

大通りを歩く者と比べて着ている服などの身なりのランクは格段に落ちるが、ガヤガヤとして賑やかさは遥かに上回っている。



下町の生活道路を南に進むと、途中から活気が薄れ、歩く者の身なりのランクは更に落ち、少し饐えた臭いが混じり始めた。


そして、アルトの、有仁と統合する前のアルトの記憶に残っている街並み、それが煤けたような光景が見えてきた。



そして、イゴール父さんとエレナ母さん、イリナと俺の4人で住んでいた家が見えた。


誰かが住んでいるようだ。


イゴール父さんとエレナ母さんが許可しているはずもないし、俺やイリナが許可したはずもない。

当然、無断で住んでいることになる。



あと1時間もすれば日が暮れてきそうな時間、俺はわずかに苛立ちを覚えながら、家とその周りを見ていた。


外に出ている住民は、普段見ない俺の姿を見て不審がっている。

中には、イゴール父さんに似た俺の姿に思い当たったのか、俺の名を口にする者もいる。



「何俺の家を見てやがんだ!」


聞き覚えのある声がして、俺は振り向いた。


「イ、イゴール隊長!?・・・いや、アルトか?」


声をかけてきた男は、俺にイゴール父さんの姿を見て驚き、俺に思い当たったようだ。


そして、俺もこの男に思い当たった。


・・・向こうから来てくれるとはな。



「何しに来やがった・・・俺に文句でもあるのか?」


無断で俺たちの家に住んでいることを非難していると思ったらしい。

そして、12歳にしては背が高いが、その男よりは低い俺を舐めているようだ。



俺は、答えを返さず、水平に右足で蹴りを繰り出し、その男の左太腿の骨を折った。


ボグッと音がして、その男は短い悲鳴を上げて前のめりになる。


更に悲鳴を上げそうになったので、身体術で靴を強化し、その男の口につま先から蹴りを入れる。


何本か歯が折れ、血を撒き散らして仰向けにのたうち回った。


右足の膝を踏みつけて壊し、左腕を持ってうつ伏せにし、そのまま左腕を折った。

右腕の肘も踏みつけて粉砕する。



急に現れた惨劇に悲鳴が上がる。

俺たちの家から、この男の家族らしき女とイリナよりも若い男子が出てきた。



俺は周囲を見渡して威圧し、併せて軽く精神魔術をかけて動けないようにする。


俺の足元にいる男のうめき声以外の音がしなくなった。



俺はこの区画、元エルン隊用に買い取って建設されたエリアの周りに風魔術を張り巡らせた。

これでこの区画の外にはしばらく音が漏れない。



「イゴールとエレナの息子、アルトがギフトに覚醒し、準騎士として王都に戻ってきた!


俺と妹のイリナにお前たちがやったことを、俺が忘れることはない。


俺はお前たちに、悪意ある無関心で向き合う。


お前たちが俺に関わらない限り、俺は何もしないが、お前たちが俺の前で死にかけていようとも俺は何もしない。


お前たちが俺に関わろうとしてきたら、俺の足元にいるこの男のようになる。


イリナを蹴り上げた、この男のようにな!


俺たちの家にも近づくな。

次に俺たちの家に誰かがいれば、このようになると思え!」


身体術で声帯を強化し、追加の精神魔術をこのエリアに張り巡らせて、俺は宣言した。



俺は、イリナを傷つけた元エルン隊の兵士だったこの男だけは許せなかった。


イリナを守れなかった俺自身も許せなかった。

イリナは俺を許してくれたが、それでもなかなか自分を許すことができなかった。


1年後にはイリナもまた王都に来ることになる。

その前に、こいつらに対して落とし前を付けておきたかった。



いい気分、とは言えないが、少し気が晴れたような気がした。


この作品を読んでいただきありがとうございます!


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