王都到着②
「さて。それでは私はもう行くとしようか。
アルトよ。私に用があればいつでも屋敷に連絡をくれたまえ。
私の屋敷の場所は調べればすぐに分かるだろう」
「グローフィル子爵。いつもながら使者のお役目、お疲れ様でした」
「この度はお世話になりました。また連絡させてもらいます」
グローフィル子爵の別れの挨拶に、事務長が労いの言葉をかけ、俺も挨拶を返した。
単なる世辞ではなく、俺はグローフィル子爵に何度も連絡することになるだろう。
「アルト、またな!」
「世話になった」
「こちらこそ、また!」
馬車での去り際に護衛のサンチェスとゴバロも別れの挨拶をしてきたので、挨拶を返す。
なんだかんだで旅の間、砕けて話せる大人がいてよかった。
賊の襲撃の後は少しよそよそしくなったが、すぐに戻ったしな。
「それでは、宿舎に案内しよう」
馬車が門を出た後、ニコラ寮監が声をかけてきた。
そのまま歩き出したニコラ寮監についていく。
運動場とは講義をしている施設を挟んで反対側の方に歩くと、あまり飾りっ気のない2階建てのアパートのような建物が並んでいるのが見えた。
「ここが寮になる。内壁の内側に住んでいる貴族家や豪商の子息はここには住まないが、それ以外の王都外から来た者や、王都の内壁の外で暮らしていた者は、学校に通う間はここに住むことになる」
貴族家の人間がいないなら、気楽でいいな。
ここにはギフト持ちか、有料で通えるほどには余裕のある家の者が住んでいる。
有望な人間とは学校に通っている間に繋がっておきたいところだ。
6号棟の2階の204号室に案内された。
日本じゃないから4とか9を避ける習慣はないんだろう。
ニコラ寮監が鍵を開けて、部屋の中に入る。
俺もそれに続いた。
備え付けのベッドと机があり、清掃されているようだ。
ここに住むのは元平民ばかりだろうが、ギフト持ちか金持ちが相手だからか、それなりの待遇だな。
「部屋の鍵を渡しておくよ。
あと、これはこのギフト保有者養成学校の1年生としての証であるバッジだ。
他の人から見られるところに付けておくように。
どちらも重要なものだから無くさないようにね」
「分かりました」
鍵とバッジを受け取る。
鍵は日本でも安いアパートやマンションでは使われていたようなシリンダー錠の鍵だ。
この分野では技術が進んでいるようだ。
バッジは、両翼の翼の間に緑色の小さな宝石のようなものが嵌っている。
この宝石の色が学年を表していると、エルン村長に聞いたことがあるな。
「校舎の1階には食堂がある。
そのバッジをしている者は、食堂が開いている時はいつでも無料で食べられるから、自由に利用していいよ。
今日と明日は休みで、明後日の朝9時に校舎1階の事務局に来てくれ。
時間はこの学校施設内にある時計のどれかで確認してほしい。
時計の見方は分かるかな?」
「ええ。分かります」
エルン村では時計を使ったことがなかったが、寮まで案内してもらう途中で見た時計は1から12までの目盛りのアナログ時計だった。
アルトが王都に住んでいた時は、道の脇の柱に時計が備え付けられていた記憶がある。
王都では庶民にまで普及しているのだろう。
「では、後は自由に過ごしてくれ。それではまた明後日に」
「案内ありがとうございます。それではまた」
ニコラ寮監が去っていき、俺は荷物を下ろす。
ほっと一息ついて、エルン村長に聞いた話とグローフィル子爵に聞いた話、そして自分の目で見た情報を整理する。
このバッジがギフト保有者養成学校にギフト持ちとして所属することを示す身分証明になるようだ。
有料で通っている者は違う形のバッジになっているらしい。
このバッジが俺を準騎士の地位にあることを証明する。
盗んで詐称することができそうだが、平民だと即極刑になるようで、絶対にないとは言えないが、ほとんどないらしい。
このバッジを付けている者は内壁の門をバッジと名前の確認だけで通行できるようだ。
さて、食堂で腹を満たしてもいいが、その前に、過去の落とし前をつけておくか。
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