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大力(嘘)で身を立てる  作者: ろん
第二部 王都進出

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王都到着①

今の時間は正午の少し前くらいか。


城壁の門の前には長蛇の列ができている。

王都に入るためには何らかのチェックを受けることになっているんだろう。


グローフィル子爵の馬車はその列から少し離れたところにある道を進む。

列の後ろの方に並んでいる者からは羨ましそうな視線を感じるな。


長蛇の列の先とは別の、少し小さいが装飾が施されている門の前で、グローフィル子爵が少し挨拶をしただけで王都に入ることができた。

貴族家向けの門が別にあるということだろうか。



門をくぐって王都に入ると、大きく道が開けている。

随分と区画整理が進んでいるようだ。


西洋の城塞都市は円形のイメージが強かったが、この王都は方形で、高い城壁に囲まれていることを除くと、日本の平城京・平安京のような並びになっているように思える。



大通りを馬車で進んでいると、ふと有仁と統合する前のアルトの記憶が想起された。

イゴール父さんとエレナ母さんと手を繋いでこの通りを歩いている風景だ。


父さんと母さんが亡くなってからは、家からほとんど離れられず、元エルン隊の家族に虐待を受けていた場所は家とその周辺くらいだったか。

それ以外の場所は幸せだった頃の記憶が強いのかもしれないな。


イリナには、この大通りでの記憶はほとんど残っていないだろう。

1年後、イリナが来たら、伝えてやらないとな。



城壁の近くには民家が多かったが、道を進むにつれて大きな建物が増えていった。


そしてまた城壁が見える。

あれが王都の内壁か。


王都は外壁と内壁で大きく区切っていて、内壁の内側に王城や貴族家の屋敷、主要施設を集めているそうだ。

内壁も外壁も同心状に作られていると聞いている。

その点は、北に主要施設を集めた日本の平城京や平安京と異なっているところだな。


方形の都市で、同心状の内壁と外壁。

特に外壁については予め計画して作らないと今のようにはならないだろう。

王家に力があった頃に計画されたものだろうか。



内壁の門にも外壁ほどではないが列ができている。

馬車はその脇を通り、また門番に一声かけて別の門で素通りだ。


内壁の高さも外壁と同じ10mくらいか。

厚みもあり、かなり頑丈に作られているようだ。

崩れているところは見当たらないし、定期的に補修しているのかもしれない。



内壁の門を通り過ぎると、遠くからも上部が見えていた王城の全景がよく見える。

王城より高い建物はないようだ。

そのような取り決めもあるんだろう。


馬車はずっと大通りを進んでいたが、初めて脇道に入った。

そろそろ目的地というところかな。


内壁の内側は大きな屋敷が多いようだが、その中でも一際大きな施設の開かれた門に、そのまま馬車が入っていく。



門を通り過ぎると、有仁の世界の学校に近いような施設が見えてきた。

運動場のようなものがあり、そこで武器を振るっている者たちがいる。

3階建の建物では大人数で講義を受けている部屋がいくつかあるようだ。


講義が行われている建物の玄関で、馬車は停まった。


護衛の1人、サンチェスが建物に入り、2人の男を連れて戻ってきた。


グローフィス子爵と建物から出てきた2人は手慣れた様子でやり取りし、グローフィス子爵が俺に馬車から降りるように声をかけてきた。



「この者が、大力ギフトを有するアルトじゃ」


グローフィル子爵の近くに寄ると、俺を2人に紹介した。

2人は俺を見て少し驚いているようだ。


グローフィル子爵の護衛2人は少し笑っている。


「ああ、このアルトは間違いなく今12歳じゃ。年齢鑑定の宝玉で確かめておる」


グローフィル子爵が2人の疑問に先回りして伝えた。


2人は納得したように少し頷き、俺に話しかけてきた。


「私はこのギフト保有者養成学校の事務長を務める、ロジェ・タムゴー。子爵に任じられておるが、私のことは事務長と呼んでもらって構わない」


「僕は学生寮の寮監を務めている、ニコラ・ラヴァル。男爵家の者だけど、後継者ですらないから、好きに呼んでもらって構わないよ」


40代くらい、グローフィル子爵よりは若く見える、背筋の伸びたきっちりした様相の男がロジェ・タムゴー子爵、20代半ばほどの軽めの男性が男爵家のニコラ・ラヴァルか。

これから世話になることだし、しっかりと憶えておこう。


「分かりました。事務長、ラヴァル寮監」


「ああ、好きなようにと言ったのは僕なんだが、できたら僕は名前の方で呼んでくれないかな?」


「分かりました、ニコラ寮監」


家名ではあまり呼ばれたくないということかな?


貴族家の常識なのか、役職を持った貴族家の嫡流でない者の常識なのか、個人の事情なのか、他のサンプルがないと判断できないな。


この作品を読んでいただきありがとうございます!


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