賊の襲撃①
道行きをグローフィル子爵と、たまに護衛たちも交えて話をしながら、いくつかの都市を通り過ぎた。
北西村からサストガードの街までの100kmの間には何もなかったが、サストガードを過ぎると村がいくつもあり、街だけでも短い間隔で存在していた。
辺境とそれ以外の違いを実感するな。
辺境開拓村は確かにド田舎だ。
サストガードの街を出て400kmほど進み、王都への道のりの半ばを過ぎた頃、山道の視界が通らないところで、賊らしき者に囲まれた。
俺はかなり前から周りの気配に気付いていたが、相手の対応を分かりやすくするために、囲まれるまでは黙っていた。
「賊に囲まれています。20名程度。私が対応しますので、護衛2人を馬車の中に入れますね」
グローフィル子爵に現状を告げ、対応策を強引に決めて、御者台に行って護衛2人を馬車の中に放り込む。
足止めのために弓矢などの遠隔武器で殺される可能性があるからな。
代わりに御者台で馬に指示して馬車を止める。
俺は刃渡り80cmほどのロングソードを抜いて構える。
俺はもちろん、馬を狙ってきても対処できるだろう。
左右から投げナイフが2本、矢が4本飛んできた。
馬に飛んできたものはロングソードで斬り払い、俺に向かって飛んできたものは避けずに身体術で強化した体と服で弾く。
前から10人ほど、剣や槍を構えた、覆面姿の者が姿を現す。
俺は正面の者たちを無視して、馬車の左側、道の脇の茂みに隠れている3人を一人ずつロングソードで首を落とす。
すぐに馬車の右側の少し丘になっているところに隠れている4人の所にひとっ飛びで移動し、一人ずつロングソードで首を落とす。
馬車の後ろ側で逃げ道を封鎖するために配置されていると思われる4人の眼の前に移動し、一人ずつロングソードで首を落とす。
左右と後ろを処理した後、正面の者たちの前に立った。
「貴様!」
10名の中で1番後ろにいた者が叫ぶが、気にせず7人の首を落とし、残しておいた一番後ろの者とその両脇にいた者2人の3人の両手足を砕いた。
それから、馬車の前方100mの所で隠れていた者の両手足を砕き、馬車のところに持っていった。
「もう大丈夫ですよ」
馬車の中に声をかける。
護衛2人が馬車からできて「ひっ」と驚き、その後ろからグローフィル子爵が出てきてまた「ひっ」と驚いた。
長く一緒にいると主従のリアクションも似てくるのかもしれない。
「賊は全部で21人、それとは別におそらく監視役と思われる者が1人いました。賊のリーダーと思われる者と後2人、それと監視役の合計4人は生かしてあります」
端的に結果を告げる。
「・・・・・・大した手際だな。それがアルトのギフトの力か」
グローフィル子爵が最初に気を取り直し、俺に問うてきた。
「大力ギフトの力ではありますが、辺境の戦闘に適したギフト持ちなら誰でもこれくらいはできると思いますよ」
生産系ギフトのレフ兄さんでもこれくらいはできそうだが、ここでは特に触れないでおく。
「今からこいつらに事情を吐かせますね」
先に末端から尋問するため、リーダーとリーダーの隣にいた者の内1人、監視役の3人を気絶させ、残った1人の覆面を剝いで相対する。
「お前はどこの所属の者だ?」
答えないので右肩を刺す。
「お前はどこの所属の者だ?」
答えないので左の太腿を刺す。
「お前はどこの所属の者だ?」
「『闇の瞳』だ」
左肩を刺す。
「お前はどこの所属の者だ?」
「答えただろう!『闇の瞳』だ!」
右の太腿を刺す。
そしてこっそり精神魔術をかける。
「お前はどこの所属の者だ?」
「・・・『暗闇の牙』だ」
答えが変わったな。
最初に答えた『闇の瞳』が嘘だと気づいた訳じゃなかったが、所属組織を吐くにはあっさりし過ぎていたので同じ質問を続けたんだが。
後、痛めつけたから正しく答えたと、グローフィル子爵たちに思ってもらうための演出でもあった。
襲ってきた賊は全員『暗闇の牙』所属で、監視役のことは知らなかったこと、依頼主も知らないことなどを吐かせた後で、最初の尋問対象を気絶させた。
もう1人のリーダー以外の者に同様に尋問したが、ほとんど新たな情報は得られなかった。
リーダーと思われる者を尋問すると、『暗闇の牙』の幹部でこの襲撃の実行責任者だったことが分かった。
『暗闇の牙』は王都の裏社会で有数の規模の組織で、『闇の瞳』はその競合だそうだ。
捕らえられたらとりあえず『闇の瞳』を名乗る取り決めにしたとのこと。
『暗闇の牙』の構成員の数は直属が120人、下部組織や協力者の数は把握していないそうだ。
今回の襲撃は秘匿性が高いため、21人は全員直属だったそうだ。
王都の役人が乗っている、それも王家の旗を掲げた馬車を襲うのはリスクが大き過ぎるだろう。
うまくいった後に機密を守るために直属だけで構成したということか。
そして、そのリスクを『暗闇の牙』に呑ませたのが、ローゼルスタッド侯爵家だそうだ。
お得意様の大貴族の依頼は断れなかったというところか。
ローゼルスタッド侯爵家・・・とことん祟ってくるな。
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