王都への道行き②
南東辺境開拓地域に一番近い街に到着した。
サストガードと言う名前の街らしい。
街全体が壁に囲まれているが、辺境に近い国の端の、それほど大きな規模ではない街にしては、分厚く高い壁だ。
平時は南東辺境開拓地域への後方支援拠点となり、南東辺境開拓地域が崩壊したときは最後の防衛拠点かつ再進出拠点になる街だからか。
名前のついた、ちゃんとした街に来るのはこの世界では初めてだな。
南の門から入るが、王家の使者だと分かる外装の馬車だからか、門番の制止もなく、スムーズに街中に入った。
街中には規模の割に広い道が通っていた。
馬車が数台並んでも問題ないほど広い。
辺境開拓地域が崩壊すると、軍が駐留することになる。
そのことを考えてこういう構造にしてあるんだろうか。
まだ日も高い時間だし、多くの人が表に出ている。
壁に囲まれた街だが、街中に農地があり、家畜もいるようだ。
エルン村や北西村とは違った雰囲気だな。
馬車は広い道を真っ直ぐに進み続け、街の中央辺りにある大きな屋敷の前で止まった。
「王都の使者、グローフィル子爵の馬車である!」
背の高い方の護衛、ゴバロが大きな声を上げる。
屋敷の門の前にいた2人の門番は敬礼のようなポーズを取り、門を開け、1人が馬車の前を歩いて先導を始めた。
「ここはこの街の街長であるサストガード男爵家の屋敷だ」
馬車が屋敷の駐車場のようなところに到着すると、グローフィル子爵が俺に教えてくれた。
街の名前と同名の貴族家なんだな。
街長ということは領主ではないのか。
エルン村長と同じように、この街が王家直轄地でその管理者という立場かもしれない。
街の名前と同名ということは、代々この街の街長を務める家系なのかもな。
屋敷の使用人の中でも一番地位の高そうな男、おそらくは家令とかだろうか、がグローフィル子爵を案内して屋敷の本邸らしきところに入っていった。
俺と護衛の2人は、年配のメイドに案内され、兵舎のような建物の部屋に入った。
「アルト様は奥のベッドを使ってください」
部屋に入るとサンチェスが話しかけてきた。
『様』付けで呼ばれたのは生まれて初めてな気がするな。
「『アルト様』は勘弁してください」
「え? いいんですかい?」
俺が様付けを否定すると、すぐに言葉を崩してきた。
様付けで話しかけてきた理由を聞くと、俺が王都で学校に所属した時点で準騎士の地位になることにあるらしい。
平民より上の地位になるので、杜撰に扱ってトラブルになった時の責任は平民側、つまりサンチェスら護衛側が負うことになるそうだ。
平民が準騎士になって調子に乗る・・・普通に考えたら、護衛に何かしたら雇用している貴族を敵に回すし、たとえ後ろ盾がない平民相手でも、風評面でのデメリットが大きすぎるように思うけど。
辺境育ちにそんな配慮ができるかわからない、ということをリスクに感じるのかな。
俺に対しては気にしなくていい旨を改めて伝え、フランクに話してくれる方がありがたいとも伝えた。
護衛2人も、それなら俺の方もフランクに話してくれとのことだった。
「そういえば、2年前に南東辺境開拓地域に行った時、ウチのお館様のテンションがおかしくなっていたことがあったけど、あの時はアルトの鑑定をやってたよな?」
「ああ。俺が10歳に見えない、何処かから流れてきて年齢を詐称しているに違いないって疑われて、ギフト鑑定の前に年齢鑑定を受けたっけな」
「ああー、なるほどね。だってお前、今見てもとても12歳には見えないもんな」
10歳の時もそうだったろう、とばかりにサンチェスが納得している。
聞き役に回っていたゴバロは口を抑えて笑いをこらえている。
「その後にギフトの鑑定をやって、珍しいギフトだったんで大騒ぎしていたな。それまでは厳粛に役目を務めて、さっと帰る仕事人というイメージだったから、あれで大分印象が変わったよ」
「ああ、お館様は普段は身分の違いにもそれほどこだわらずに話しかけてくれる、仕える側にとってはやりやすい方なんだけど、仕事の時はきっちりして、態度を使い分けているな。それが、2年前のアルトから去年は魔法士、今年は連続して魔法士と続いて、テンションが抑えられなくなっているカンジはするなあ」
サンチェスが感慨深そうに目を細めて話を続ける。
ゴバロは同意するように頷いている。
「まあ俺は、固いだけのお役人貴族様と旅をするよりは気楽になってよかったけどね。いろいろと俺の知らないことを知っていて、話を聞いているだけでも勉強になるし」
「お館様は仕事熱心でもあるし、勉強家でもあるからな。王都ではよく読書をして過ごしておられる」
ゴバロも会話に混ざってきた。
グローフィル子爵という共通の話題があると話がしやすくて助かるな。
直接話した印象もあるが、護衛に慕われていることもあり、グローフィル子爵の人柄は信頼できそうだ。
具体的に知っている貴族は陰謀と陰険のローゼルスタッド侯爵家くらいだったから、良い貴族家もあると知れてよかった。
エルン村長も貴族ではあるけど、貴族を知る参考にはならなさそうだしな。
途中で食事を挟んだりしながら、護衛の仕事の話や王都の話を聞き、辺境の話をして、夜が更けていった。
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