王都への道行き①
ガラガラガラ
2頭の馬の足音と、それ以上に大きな馬車の車輪の出す音が響く。
技術水準が物によってバラバラなこの世界だが、馬車の性能はそれなりのようだ。
ゴムがなく、軽量で丈夫な魔獣素材でできた車輪と車軸、それとあまり工夫がない馬車本体。
聞くと、王都でもそこそこレベルの馬車らしいが、王家の旗を左右に大きく貼り付けているので、それなりに派手になっている。
王都からの使者とその護衛、そして俺が乗る馬車は、エルン村、そして北西村も出て、南東辺境開拓地域から100kmほど北西に行ったところにある街へと向かっている。
2年前くらいから、面白いリアクションを見せるようになった王都の使者と、自己紹介をした。
王都まで結構な距離があり、馬車で向かっていると2週間はかかるようだ。
その間何もしないよりは、この王都の使者殿とコネを作っておいたほうがいいだろう。
王都の使者の名前はサルバス・グローフィル。
グローフィル子爵家の当主だそうだ。
年齢は50歳くらいに見える。
グローフィル子爵家は領地を持たず、王都の使者の役目を代々の家職としているらしい。
辺境を担当しているので閑職かと思ったが、それなりの地位に当たるらしい。
護衛の2人はサンチェスとゴバロ。
2人ともグローフィル子爵家に代々仕えてきた騎士、爵位ではなく貴族家に仕える立場の騎士の家系で、身分は平民であるらしい。
サンチェスは俺と同じくらいの身長、175cmくらいで、陽気な振る舞いをする。
ゴバロは身長190cmで強面、口数は少ないが、聞き手に回る方で無口というわけではなさそうだ。
護衛は2人とも御者台に乗り、1人が馬を操っているようだ。
グローフィル子爵は辺境開拓地域では南東と南部の2箇所を担当していて、王国の南部の街も含めて広く担当しているらしい。
1年の半分近くは王都の外で過ごしているそうだ。
そろそろ大変になってきたので、嫡男に王都の使者の地位を譲ることも考えているらしい。
地位を譲る前に引き継ぎのために数年は共に行動する必要があるから大変だ、と苦笑していた。
グローフィル子爵は仕事の苦労話を聞いてもらう機会があまりないのか、話を向けると積極的に話し出す。
4年前の南東でのスタンピード誘引未遂事件について、前兆や雰囲気で気づけなかったのかと叱責を受けたこともあったらしい。
1年に一度、わずかな滞在をするだけなのに、気付けるはずがあるか、という不満はよくわかる。
まあ叱責した方も、南東辺境開拓地域に関わりがある者がグローフィル子爵しかいないから、少しでも責任を負わせたかったのかもな。
長旅の苦労や、そのための準備の話は参考になった。
俺一人なら同じ苦労をすることが考えにくいが、団体行動をするならあり得るので、そういった体験談は一般常識として知っておきたい。
俺が聞き役に回り、適宜質問を入れたりしていたら、グローフィル子爵はふと、不思議そうな顔をした。
グローフィル子爵の話の内容を理解し、その上での質問をするところなどが、辺境育ちとは思えなかったそうだ。
エルン村長の下で教育を受け、エルン村長が集めた本を読んだりしていたことを話すと、「さすがは王家の覚えもめでたきエルン・ソーディスよ」と感心していた。
エルン村長は王家にその実績を認められていたようだ。
それでも独立戦闘部隊の隊長から辺境開拓村の管理職へと左遷されたのは、ローゼルスタッド侯爵家を始めとする貴族たちの圧力に王家が押されたということだろうか。
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