アルト9歳の年 レフの成長と別れ
年が明け、俺は9歳になった。
俺より3つ歳上のレフ兄さんは12歳。
王都の使者がエルン村に来たら、一緒に王都に行くことになる。
ついにこの歳になったかと思う。
鍛冶のギフト持ちのレフ兄さんがエルン村を離れても大丈夫なように、鍛冶ギフト由来の魔術については結構前から、鍛冶ギフト由来の知識の形式知化については昨年から進め、鍛冶に取り組む人材の育成も進めて、徹底して体制を整えていた。
レフ兄さん以外の人で鍛冶仕事がなんとか回るようになってからは、レフ兄さんの強化にも取り組んだ。
何かあった時に生き残れるように、強さが必要だと考えたからだ。
レフ兄さんは鍛冶ギフトである程度の身体術を使えていたが、戦うための身体術を俺がレフ兄さんの体を通して使っても、感覚が違いすぎてなかなか身につけることができなかった。
ギフトなしで身体術をつかえなかった大森林探索の戦闘メンバーに教えるよりも苦労したくらいだ。
それでも必要だと思ったので、心を鬼にして叩き込んだ。
身体術の失敗で何度も骨が折れたり外れたりしていたけれど、それも身体術で治した。
レフ兄さんは泣きそうに・・・というか、本気で泣いていたけれど、止めるとは口にしなかった。
レフ兄さんが何とか鍛冶ギフトを通さない形で、戦うことに使える身体術を学べたので、大森林探索に連れていき、俺が盾役になって魔獣と戦わせた。
鍛冶に使う鎚を大きくした大鎚で、ついには中型魔獣でも倒せるようになった。
小型魔獣は盾役なしでも倒せるようになったから、大したものだと思う。
レフ兄さんが王都に行ってからのことについても話し合っていた。
レフ兄さんが7歳で鍛冶ギフトに覚醒した時は、漠然と、アデリナさんが王都にいたときと同じ、魔術を研究する部署に行けばいいと、エルン村長もアデリナさんも考えていたそうだ。
俺がギフトに覚醒してから、レフ兄さんの鍛冶ギフトの魔術も知識も徹底的に絞り出して、できることの幅を拡げていったこと、戦闘もできるようになったこと、様々なことを積み重ねてきて、レフ兄さんの選択肢も増えていった。
魔術研究の部署に就職する以外にも、生産系に関わる政府の部署に務めることも、戦場に出ることもできるだろう。
レフ兄さんは何がやりたいか、どの道に進むのか悩んでいるようだった。
ただ、レフ兄さんの望みを詳しく突き詰めていくと、できるだけ早くエルン村に戻ってきたいと考えているようだった。
エルン村長とアデリナさんは、レフ兄さんをエルン村に縛り付けるつもりはなく、自由に自分の道を選んでほしいと考えていたようだけれど、レフ兄さんが強い気持ちでエルン村をよりよくするために戻ってきたいと考えていることが分かると、とても嬉しそうにしていた。
ギフト持ちが王都の学校に行き、学校を卒業した後に何らかの成果を出して認められなければ、自分の意志で王都を離れることができないことになっている。
貴族領出身であれば、その領地貴族の意志で領地に連れ帰ることができるそうだ。
自領出身ではないギフト持ちをスカウトして連れ帰ることも、非公式に行われているらしい。
しかし、この辺境開拓地域は王家直轄領であり、そのルートはない。
俺が王都に行ってから起こす行動で、いくつか選択肢を考えていることを、エルン村長とアデリナさん、そしてキリル兄さんにも話している。
レフ兄さんにもこの機会に伝えると、レフ兄さんは、王都であまり目立たずに活動し、エルン村に貢献できることを進めていくと決めたようだった。
政府の役所で務める方向も、戦場に出る方向もなしで、レフ兄さんは元々の選択肢である、魔術研究の部署に務める方向で行くことに決めた。
魔術研究の部署はギフト持ちが学校を出た後に進む選択肢の中でも一、二を争うほどの閑職らしい。
アクチュア王国は他国に比べてもギフトを尊重する国家だが、ギフトによらない身体術や魔術についてはあまり重視されていないそうだ。
アデリナさんは学校時代にエルン村長に出会い、エルン村長のための魔術を開発することを目的として魔術研究の部署に進んだそうだ。
なかなかお熱い話である。
レフ兄さんの進路が決まったので、学校での過ごし方もそれに向けて決めていった。
学校では、戦える能力は徹底して隠し、鍛冶ギフト由来の魔術や知識も最低限しか見せない。
貴族出身でもなければ、学校に通いながら仕事をすることが多いようだが、鍛冶ギフトを活かした仕事の内容は学校の人間には知られないように動く。
仕事を通して、エルン村にいては築けない、人脈や、商流・情報流の構築にも携わってもらう。
そして、3年後には俺が王都に行くので、レフ兄さんと一緒に活動することができるようになるだろう。
それまでにレフ兄さんが築いたネットワークなどに頼りにさせてもらおう。
年が明けて3ヶ月経った頃、昨年までより少し早い時期に王都からの使者がきた。
今年はエルン村に10歳の子どもがいなかったのでギフト鑑定も戸籍登録もなかったが、帰りの馬車にレフ兄さんを乗せて、去っていった。
レフ兄さんは年の近い兄貴分で、アルトがエルン村に来た頃から、いろいろ構ってもらっていた。
オレグもイリナも寂しそうにはしていたが、泣いてはいなかった。
レフ兄さんを除いたエルン村長一家とイリナと俺は、レフ兄さんの乗った馬車が見えなくなるまで見送っていた。
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