王国建国再現実験②
西側の海岸線から1km程度、南側の海岸線から1km程度陸に入った場所に土魔術で高さ100mの柱を建てた。
オレグが土魔術を開発し続けてくれたおかげで、こういうこともできるようになった。
基準となる柱から西と南に向けて、基準となる線を引く。
これも土魔術で堀を作ることで線を明確にした。
それから俺は、南西の基準となる柱の逆側から、樹木を抜いて南西にまとめた。
伐っても短期間で伸びることは分かっているので、根も残さずに抜き続ける。
途中で出遭った魔獣は全て抜いた樹木で叩き潰した。
素材を取る時間はないので、処理優先だ。
樹木も特に活用することは考えていなかったので、抜いては南西に向けて投げ、抜いては投げと単純作業としてひたすらに処理に没頭した。
昼前にはこの地域に到着していたが、基準線の内側の樹木を全て抜き終わる頃には日が暮れる時間になっていた。
基準線の内側の魔獣も大部分はついでに潰していたが、残っているものも、作業中に内側に入ってきた魔獣もいるようだ。
上空に足場を作って昇り、レフ兄さんが鍛冶ギフトにより使っている魔術、それを俺が応用して開発した『物を焼却するための魔術』を、大規模かつ並列に使用して、基準線の内側の草木と魔獣をまとめて焼き払っていく。
夜が更ける頃には焼き尽くして燃えるものが無くなり、自然に消火した。
テキトーに投げて、地面に落ちた樹木は燃やし尽くしたが、海に浮かんでいる樹木が残った。
海に浮かんでいる樹木を強化したうえで蹴り飛ばし、10km以上は離れた沖の方に移動させた。
これで、1km四方、南西には海も入っているが、魔獣も植物も全く存在しない空間ができた。
1ヶ月後くらいにどうなっているか経過観察をする予定だ。
また大森林が侵食しているようなら、また内側を一掃した上で、次は高さ100mの壁でこの地域を囲ってまた様子を見る。
鳥型の魔獣がいるし、壁があっても他の魔獣が入ることもできるだろうが、魔獣も樹木もなくなった、大森林でも魔素の薄いこの地域がどうなっていくか、アクチュア王国が現在も大森林に呑み込まれていないことを考えると、それなりの期間、維持できそうな気がする。
人が住んでいるか住んでいないのかは大きな要因なので、壁で囲っても侵食されるようなら、人の居住有無が決定的な要素だと識別できるようになるだろう。
大森林南西の1km四方を切り開いた1ヶ月後。
俺が南西開拓試験場と呼んでいるその場所に向かった。
到着して見た光景は、1ヶ月前に全てを焼き払った後、荒地になっていた南西開拓試験場は、まばらに草が生えていた。
樹木は生えておらず、魔獣は小型で全長1m足らずの鼠型が1頭のみ。
思っていたよりも大森林の侵食というか、大森林への復帰は遅いみたいだ。
西の海岸から1km、南の海岸から1kmの地点に建てた高さ100mの柱は折られていなかった。
そこそこ頑丈には作ったが、魔獣が折ろうとすればすぐに折れそうだけれど、特に魔獣の興味の対象にはならなかったということだろうか。
その基準となる柱から西方向と南方向に幅と高さが1mの空堀を掘って線引していたが、この空堀は堀の角が削れ、半分程埋まっていた。
状況から考察してみよう。
エルン村の近くで樹を伐ると、切り株から1ヶ月もあれば元通りに伸びてくる。
根も残さずに取り除くと、元通りにはならないようだ。
草は生えているが、樹は生えていない。
魔獣は自然発生ではなく、親が子を生んでいた。
大森林の植物も、種か胞子かで生えるのだろう。
草は種か何かが飛んできて生え、樹は・・・種が飛んできてもまだ成長していないとかだろうか。
1頭だけいる魔獣は草を食べに来たのか。
たまたまこの場所に来て、居着いたのかな。
小型の魔獣1頭しかいなければ、捕食する魔獣にとってはいい餌場ではないだろうから、来る動機もないと。
エルン村長宅にあった、アクチュア王国の建国物語を読むと、最初の開拓の苦労も書かれていた。
次々に襲い来る魔獣と戦いながら切り開いていったとか。
何が違う?
・・・人間の有無か!
人間がいると魔獣が積極的に襲ってくる。
人間がいて、生存を続けている場所なんて魔獣にとって狙い目の場所になるだろう。
南西開拓試験場は、人間がいないから、自然に草が生えて、それで食事する魔獣が来た、という流れになったのだろうか。
状況からの推測だが、それほど的は外れていない気がする。




