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大力(嘘)で身を立てる  作者: ろん
第一部 辺境開拓村

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大森林単独探索 魔獣・瘴気獣の生態観察④

特大型の魔獣が、大型以下の魔獣と瘴気獣の間に位置するような存在なのであれば、先に瘴気獣について調査した方が多くの知見が得られるかもしれない。



そう考えた俺は、特大型魔獣の調査を一旦切り上げ、瘴気獣の調査に入ることにした。



瘴気獣がどの辺りにいるのか、瘴気獣が群生するエリアがあるのか、全く分からないので、とにかく大森林の奥に向かって移動し続けた。



エルン村から南東方向に2000kmほど進んだ辺りで、地面から魔素以外の何かが湧いているエリアに到達した。


おそらく、これは瘴素が湧いているんだろう。

瘴気獣がいそうなエリアだ。



ついに一体瘴気獣を発見し、その個体を観察することにする。


全長35mほどの元は虎だと思われる。


顔や脚や背骨まで歪み、熊の前足のようなものが右脇から生えている。



ゆっくりと歩いているが、何を見ているのか、どこを目指しているのか分からない。

何も考えずにただ動いている、そんな感じだ。



このエリアは生えている樹木も紫と黒が混じったような色で毒々しい。


大森林探索でもたまに見かける瘴樹が更に毒々しくなったような樹木だ。



瘴気獣はこの瘴樹を嫌うのか、大きく避けて動いている。

だから、瘴樹は倒されずに伸びているのか。



別の瘴気獣が正面から歩いてきている。

こちらは全長50mほどの元は熊だと思われる。



瘴気獣が同時に2体いるところを見るのは初めてだな。



どうなることかと見守っていると、2体の間が100mほどの距離になった時、互いに避けあって離れていった。


瘴気獣同士で争ったりしないのだろうか?


大きいサイズの熊型が虎型を襲うのではと予想していたが、瘴気獣は同じ瘴気獣をただただ忌避するだけなのだろうか。



最初に発見した虎型瘴気獣を観察し始めて3日目。



全長50mほどの猿型の特大型魔獣が前方からやってきた。


虎型瘴気獣は、猿型特大型魔獣に気づくと、3日間無目的にゆったり歩いていたのが嘘のように、猛然と猿型特大型魔獣に襲いかかった。


猿型の魔獣は自分の方がサイズが大きいが戦う気を見せず、逃げ出したが、虎型瘴気獣は追い続け、歪んだ口で噛みつくと、猿型の魔獣に対して脇から生えた熊の脚や前脚なども叩きつけ、絡みつくように狂ったように戦い続けた。


猿型の魔獣は殴ったりして応戦するが、全く効いていないかのように虎型瘴気獣は戦い続ける。


大きなものがぶつかり合う騒音とも言える音が鳴り続けていたが、それを聞きつけたのか、全長25mほどの狼型の瘴気獣がやってきて、猿型の魔獣を襲い始めた。


虎型瘴気獣と狼型瘴気獣はお互いが目に入らないように猿型の魔獣に攻撃を続け、その攻撃がたまたま瘴気獣に当たっても意に介していないようだった。



猿型の魔獣が倒れると、虎型と狼型の2頭の瘴気獣は骨も無くなるまで猿型の魔獣を喰らい続けた。


猿型の魔獣が跡形もなくなると、虎型と狼型の瘴気獣は互いに忌避し合うように逆方向に歩き出した。



猿型特大型魔獣もかなり魔素の分布に偏りがあったので、相当程度瘴素に侵されていたように見えた。


それでも、瘴気獣になっているかいないかで、全く別のものとして瘴気獣に認識されているように見えた。



猿型特大型魔獣を食らった2頭の瘴気獣は、わずかに魔素の分布が広がったように感じた。


瘴気獣が魔獣を襲う理由はこれかもしれない。


自分の瘴素に侵されている割合を少しでも薄めるために、魔獣を襲って食らっている。


理性どころか思考する頭が残っているかも分からない瘴気獣が、魔獣に対して積極的に動き、その結果瘴素の分布割合を薄めているのだとしたら、これが瘴気獣の行動原理と言えるのかもしれない。


瘴素に全く侵されていない人間を見ると異様な執着を見せる傾向も、この延長にあるのではないだろうか。




瘴素が湧くエリアで1ヶ月間観察を続けた。



最初に見つけた虎型瘴気獣だけでなく、様々な型の瘴気獣を観察してみた。


元の型が違っていても、瘴気獣の生態、行動原理はかなり似通っているように思えた。



一度だけ、特大型魔獣だと思われるが、瘴素にかなり侵され、体の一部が奇形になりかけているような個体を見つけた。


初めて見たタイプの魔獣だったので、観察していると、1日も経たない内に瘴気獣に遭遇し、食われてしまった。


あれは、魔獣が瘴気獣になりかけている過程の個体だったのかも知れないな。




瘴素が地面から湧いているこのエリアで調査を続けて得られた知見は次のとおりだ。

・瘴気獣は瘴樹を避ける。

・瘴気獣は瘴気獣を忌避する。相手が自分より小さくても同じ。

・瘴気獣は魔獣を積極的に襲う。瘴素に侵されていても瘴気獣になっていなければ瘴気獣に襲われる。

・瘴気獣に知性や思考する知能があるような行動は見られないが、瘴気獣になっていない魔獣を食らうことで自身の瘴素に侵されている割合を下げる事が動機づけになっている可能性がある。

・瘴気獣が人間に気づくと障害物も気にせず一直線に襲うほどの執着を見せるのは、自身の瘴素侵食割合を下げることの最たるものと考えられるかも知れない。

・瘴気獣は瘴気獣として産まれるのではなく、魔獣が瘴素に侵されることで瘴気獣になっている可能性が高い。




特大型魔獣が大型魔獣以下のサイズの魔獣と瘴気獣の間の存在だという仮説を立てたが、瘴素に侵食されている割合で襲う相手を決定しているのは瘴気獣に似ているかも知れない。


自身の瘴素侵食割合を下げることが動機づけになっているのであれば、瘴素侵食割合が高まれば奇形になっていくことと併せて、魔獣は瘴気獣になっていくことを避けたい、魔獣が瘴素に侵食された成れの果てが瘴気獣、ということに結論できそうに思う。



まだ仮説なので、特大型魔獣の観察を続けてから確たる結論を出そう。


この作品を読んでいただきありがとうございます!


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