大森林単独探索 魔獣・瘴気獣の生態観察③
魔獣観察を何度も繰り返した。
小型、中型、大型のサイズ別に、元になっている動物別で様々な魔獣を観察した。
観察結果が出揃い、類似点や相違点などを整理して分析すると、魔獣の性質として次のことが分かった。
・サイズや魔素の濃度から、自分より弱いと判断できたものを襲う傾向がある
・食欲が満たされても他の魔獣を襲うことを止めない
・元になっている動物と同じ行動を取る傾向があるが、活動時間などはその魔獣の強弱による傾向が強くなる
・元になっている動物が単独行動をする動物であっても群れを作る傾向がある
・サイズが大きいほど群れの数は少なくなり、大型魔獣でも大きいサイズの個体は単独行動も見受けられる
・活動時間中に食欲が満たされると巣に帰った後に交尾し、満たされなかった場合はしない
・小型でも大型でもサイズによらず、妊娠、出産、成体への成長の時間はほぼ同じ
・元になっている動物の型が複数混じっている場合でも、異種交配はしない
・草食の魔獣も自分より弱い魔獣を見つけると狩り、捕食する
・草食だけで満腹になった魔獣も交尾し、同じように出産する
初回で観察した狼型中型魔獣の群れの交尾と出産まで見ることができたのは、ビギナーズラックかなと思っていたが、何度も観察できる活動だった。
魔獣の増殖の速さに驚いたが、それを打ち消すだけの生存競争の厳しさがあるということだろう。
初回は2日で撤収したが、1週間以上観察し続けたケースもあった。
当然に睡眠も食事も排便も身体術で先延ばしにすることで対応した。
この身体術の使い方は、エルン村長も知らなかったようだ。
有仁の世界の知識で、体のメカニズムを知っていたからこそ、できたことだった。
睡眠については身体術で活動時間を引き伸ばし、食事については摂取してエネルギーとする部分を身体術で代用した。
排便については、食事を取らず、体内の細胞の寿命を身体術で延ばし、バクテリアの動きを制御することで先送りできた。
汚い話になるかもしれないが、こちらの世界でも同じかは分からないが、有仁の世界では、大便は食事の残り滓と死んだ細胞と腸内バクテリアが1:1:1の割合だと聞いたことがあった。
死んだ細胞のほとんどは腸壁細胞で、寿命が3日ほどしかなく、壊死すると剥がれて大便として排出されるらしい。
腸内バクテリアは分裂と壊死のサイクルが早く、生きているものも含めて大便に含まれて排出されるらしい。
排便の3つの構成要素に対応できれば、排便の制御も可能になるということだ。
排尿についても水の摂取と排出、不要な成分の制御で先送りしている。
魔獣の生態観察ではほとんど使っていないが、呼吸も身体術で代替することが可能だ。
これは水魔術で魔獣の顔を覆い、呼吸をできなくした時に、魔獣が自身の体内の魔素を張り巡らせて呼吸の代替を行っていることに気づいて、その模倣によりできるようになった。
酸素を取り込んでエネルギーを生成することを身体術で代替して、試しに24時間を実際に無呼吸で過ごしてみたが、問題なかった。
様々な環境で対応できるように自分を訓練してきたが、この身体術で身体活動を代替する技術は、俺の真のギフトがなければ習得は相当に困難だろう。
魔獣の成体になって以降の成長過程など、俺がフォローすることが難しい長期間の調査はできなかったが、魔獣の基本的な性質についてかなり理解が進んだので、そろそろ次に着手したかった調査に移ろうと考えている。
特大型の魔獣と、瘴気獣の調査だ。
特大型の魔獣については、小型~大型の魔獣の調査と同時にやってもよいかとも思ったが、瘴気獣と生息地が近いことと、チームでの大森林探索では特大型に遭遇することがあまりなかったが、他のサイズの魔獣より瘴気獣に近い性質があるのではという感覚があったことで、別で調査することにした。
チームでの大森林探索で遭遇する特大型魔獣は、複数同時に遭遇することは一度もなかったが、エルン村から300kmほど進んだところでは、かなりの数の特大型魔獣が生息していた。
30mから40m程度の、大型魔獣の延長程度のサイズだと3体程度でグループを作っているが、40mを超えるサイズの魔獣は単独で動いているものしか見かけなかった。
熊型特大型魔獣3体のグループを観察することにした。
全長40mくらいのリーダー格と、35mくらいの2頭のグループだ。
朝から観察していたが、特大型魔獣が多く生息するエリアでは、ゆっくりと動き、他の特大型魔獣を避けて動いているようだった。
一度も狩りをせず、日が暮れても動き続け、魔素の薄い方向、大森林の奥からエルン村に向かう方向に移動を続けていた。
睡眠も取らずに動き続け、大型魔獣がメインのエリアに到達すると、出遭った大型魔獣に襲いかかっていた。
大型魔獣の方が逃げるので、狩りの成功率は悪そうだった。
狩りに成功すると、リーダー格が最初に口をつけるものの、ほとんど平等に食べていたようだ。
数時間程度の休眠を取りながら、5日間大型魔獣の狩りを続け、最初に俺がこの群れを見つけた特大型魔獣が生息するエリアの方に戻っていった。
夜になり、特大型魔獣の生息するエリアに戻ったところで、単独で動いている全長50m程度の虎型魔獣に襲われ、3頭とも殺されて食べられてしまった。
大型魔獣の狩りで食べ続け、腹が重たくなっていたようで動きが鈍かったからか、逃げることもできなかったようだ。
おそらくだが、自分より強い魔獣が多いエリアから、食事を取りやすいエリアに移動し、腹を満たして、自分たちの巣で交尾をしようとしていたのかもしれない。
食事するエリアと交尾するエリアを変える動きは大型魔獣までのサイズの魔獣では見られなかったので、特大型特有の性質だろうか。
出産からすぐに成体に成長する、そのための魔素の濃さが、自分の巣のある特大型魔獣の多いエリアにしかないので、そちらに移動するしかなかったのだろうか。
そのまま、3頭の熊型特大型魔獣を捕食した虎型特大型魔獣の観察に移行することにした。
この虎型特大型魔獣は、今いる特大型魔獣が多く生息するエリアでは、サイズ的には中央値に位置するくらいだろうか。
自分より大きいサイズの魔獣は避け、自分より小さいサイズの魔獣を狩るようにしているようだった。
ただ、その虎型特大型魔獣は体内の魔素の分布が少し偏っているようで、自身よりも魔素の分布が偏っている、自分より小さいサイズの魔獣も避けていた。
日が昇ってもそのまま行動を続け、また夜になり、また日が昇っても動き続けていた。
その虎型特大型魔獣を観察し始めて3日目、同じくらいのサイズの熊型特大型魔獣に襲われ、激しい戦いになり、虎型特大型魔獣が力尽きて熊型に食われていた。
サイズは同じ全長50m程度だったが、熊型の方が魔素の分布の偏りが大きかったようだ。
魔素の分布の偏りは大型以下のサイズの魔獣でもあったが、特大型の偏りは顕著だと感じた。
あの偏りは、瘴気獣に似ているかもしれない。
魔素の分布が偏っている程度は瘴素に侵されている程度かもしれないと思った。
瘴素に侵されている程度の高い魔獣は低い魔獣を襲い、低い魔獣は高い魔獣を避けるのではないだろうか。
と
りあえず、仮説として置いておこう。
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