大森林単独探索 魔獣・瘴気獣の生態観察②
日が落ちて辺りが暗くなり始めた頃、狼型中型魔獣は土が盛り上がったところを掘ったような穴に入っていった。
ここがこの群れの巣ということなのだろう。
有仁の世界では狼は夜行性だった気がするが、それも当てはまらないのだろうか?
魔獣が全て昼行性かと言えばそんなことはなく、夜の方が遭遇する魔獣が手強くなることが、経験的に知られている。
元の獣の習性より、強いか弱いかで行動時間が変わるということだろうか?
まだ結論づけるには早すぎるので、仮説として置いておこう。
しばらく時間が経ち、夜が更けてくると、巣の中で狼型中型魔獣が交尾を始めた。
うーむ。
魔物の交尾なんて初めて見るな。
見たい見たくないで言えば、個人的にはそんなもん見たくねえよと思うが、貴重な場面の観察ということになるだろうか。
どうやらリーダー格だけがオスで他はメスだったらしい。
食事の時に観察した序列と同じ順で、次々に交尾している。
結構早いな、このリーダー格は早漏なんだろうか。
このリーダー格特有なのか、狼がそうなのか、魔獣がそうなのか。
まあ、特に検証したいと思わないし、重要度も低いな。
・・・見たくないものをみているせいか、どうでもいいことを考えてしまう。
交尾が終わり、狼型中型魔獣はそれぞれのんびりと寝そべっている。
賢者タイムかな?
・・・またどうでもいいことを考えてしまった。
しばらく時間が経って、深夜になったかと思える頃、群れの中で一番序列の高かったメスが唸り始めた。
日中に十分に食事をしてそれなりに腹が大きくなっていたが、更に大きくなり始め、腹以外の箇所が痩せ始めた。
魔素の動きが複数・・・子を孕んだということか?
体の部位の大きさの変動が止まると、そのメスの個体は4頭の子どもを産んだ。
生まれたての子どもの全長は80cm程度だ。
狼の子どもにしては大きいが、産んだ魔獣のサイズからすると妥当かもしれない。
4頭の子どもはすぐに立ち上がった。
そして体を震わせると・・・全長4mほどになり、体型も他の狼型中型魔獣と同様になった。
正直なところ、俺は心底驚いていた。
さすがに魔素の動きの隠蔽を止めるほどではないけれど。
交尾から妊娠まで数時間。
妊娠から出産まで1時間弱。
出産から成体への成長まで数分。
子連れの魔獣を見たことがないはずだよな。
魔獣が大森林で自然発生するのかもしれない、という仮説も考えていたが、それはなさそうだ。
完全に自然発生説は消せないが、直接自然発生しているところでも見ない限り、魔獣も親から子どもが生まれるというものだと考えていいだろう。
・・・短時間過ぎてほとんど自然発生しているようなものだとも思ってしまったが。
この群れは今日だけでもかなりの数の魔獣を狩っていた。
産まれるペースが早くても、狩るペースも早いから、大森林が魔獣で溢れる事態にはなっていないということか。
まさに弱肉強食の世界だな。
それだと、最小の魔獣はどうやって増えているんだろうと少し疑問に思ったが、小型魔獣が草を食んでいるところを見かけたことがある。
草食でも生きていける魔獣がいるなら、食物連鎖が繋がりそうだな。
朝になると、前日に生まれた4頭の魔獣は、リーダー格に巣を追い出されていた。
生まれて成長して、すぐに巣立ちまで迎えるということか。
日がある程度昇った頃に、狼型中型魔獣の群れが動き出し、狩りも始めていた。
動物は食べるために狩り、食べる分を狩ったら後はのんびりしているイメージだが、魔獣は巣に籠っている時以外はずっとアクティブだな。
群れが小型魔獣の群れを狩って食事を始め、出産したメスが大量に食べて体型がすぐに戻り、群れ全体が食べ終えてまた走り出したことを確認し、俺はその群れの観察を終えることにした。
途切れなく観察するため、睡眠も食事も排便も、全て身体術によって先延ばしにしていた。
数日から数週間は観察に費やそうと考えていたが、この2日でいきなり大きな収穫があったな。
一旦エルン村に撤収して、今回の探索について資料をまとめてエルン村長に報告し、休んでからまた単独探索に出ることにしよう。
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