大森林単独探索 魔獣・瘴気獣の生態観察①
昨年に外部の介入問題が解決して、エルン村も、北西村も併せた南東辺境開拓地域も、より安定して運営できるようになったと思う。
俺は、外部の介入問題が解決したらぜひとも実行に移したいと考えていた、大森林の奥地の単独調査について、エルン村長に相談した。
俺が単独で動くなら、高速で動くことが可能だし、空中に足場を作ってショートカットもできるし、俺一人で瘴気獣にも問題なく対処できる。
俺一人なら問題があった場合に逃走することも簡単だ。
エルン村長とアデリナさん、特にアデリナさんには心配されたが、言葉を尽くし、大森林についてより深く理解することのメリットも提示して、最終的にはOKを出してもらうことができた。
さて、初めての大森林単独探索にこれから向かおう。
探索期間については状況次第でいいとエルン村長に認めてもらった。
オレグとイリナも少し大人になっていて、予め説得することで長期間会えないことに納得してくれた。
後顧の憂いなし。
まずやりたいことは、魔獣や瘴気獣の生態を観察し、その性質を明らかにすることだ。
接した経験や、伝聞で伝わっていることはあるものの、どの情報が正しくてどの情報が間違っているかの判別が難しいところがある。
魔獣の魔素の動きを把握できる、俺が一番魔獣について理解している人間かもしれない。
ただ、俺も魔獣の子育てなどは見たことがない。
辺境に連れてきた家畜は短期間で魔獣化することが知られているが、大森林では魔獣がどのようなライフサイクル、生まれてから成長して老いて死ぬまでのサイクルを迎えているのか、エルン村で誰に聞いても分からなかった。
長時間、それも日を跨いでの魔獣の観察などは今まで誰も試みたことがない可能性がある。
この単独探索で新たな知見が得られるといいんだけど。
魔素の動きを他者に悟られないようにして、大森林に入る。
以前、スタンピード誘引の実行者だった斥候のギフト持ちが、似たようなことをやっていたが、俺には分かる程度には魔素の動きが漏れていた。
その斥候のギフト持ちの隠蔽レベルでも魔獣や瘴気獣に気づかれていなかったので、それよりも高度に隠蔽した俺はまず魔獣などに悟られることはないだろう。
魔獣や瘴気獣は魔素の動きには敏感なものの、音などには鈍感だから、魔素の動きさえ悟られなければ、大森林でも結構自由に動ける。
そして、あの斥候のギフト持ちは魔素の動きを隠蔽している時は身体術を使えないようだったが、俺は問題なく使える。
走って移動している魔獣に気づかれないように後をつけて観察することも可能だ。
まず、エルン村から南東に20kmを進んだあたりまで進み、狼型の中型魔獣の群れを見つけた。
先頭を走るリーダー格の魔獣が全長8m程度、追随する8頭の魔獣は全長6m前後だ。
この群れを追跡して、魔獣の生態観察に臨むことにする。
全ての魔獣が同様なのか、サイズが異なれば違うのか、狼型とそれ以外でも同じなのか、いろいろ検証する必要があるので、何度も観察する群れを替えて実施する必要があるだろう。
狼型中型魔獣の群れは、自分たちより体の大きな魔獣は避けて動いていた。
自分たちと体の大きさが同程度の魔獣は少し観察するように近くまで寄った後、何もせずに離れていた。
小型魔獣の群れと遭遇した時は、積極的に襲いかかって食料にしていた。
食べる時は、リーダー格が最初に口をつけるまで他の魔獣は待機し、リーダー格の食事がある程度進んで他の魔獣に吠えた後で、他の魔獣も食べ始めた。
他の魔獣の中でも序列があるようで、食べ始めるタイミングは少しずつずれていた。
うーむ。
有仁の世界の狼も、群れのボス、アルファオスとも言うんだったか、とにかくそのボスが最初に口をつけることで序列づけていたような気がする。
元になっている獣の習性を引き継いでいるということだろうか。
大森林探索で魔獣と遭遇すると、たまに魔獣同士が争っているときもあるが、その場合でも争いを止めてとにかく人間を狙ってくるので、魔獣が魔獣を捕食するところは見たことがなかった。
食い荒らした食事の後は見かけることがあったので、魔獣同士の捕食はあるんだろうなと思っていたけども。
早速貴重な場面に遭遇できた気がする。
やはり単独探索はアリだな。
狼型中型魔獣の群れが食事を終え、また走り出したので追跡する。
エルン村に近づく方向、魔素が薄くなる方向にはあまり進まないようだ。
途中で遭遇する小型魔獣は積極的に狩って、捕食している。
自分たちより大きいサイズは避け、同程度でも争わずにやり過ごしていたが、一度同程度の大きさで数は相手のほうが多い魔獣の群れと遭遇し、狼型中型魔獣の群れの方から襲いかかっていた。
無傷で勝利とは行かないものの、リーダー格が活躍して勝利を収めていた。
いきなりちょっと特殊な事例が出てきたな。
同程度のサイズ相手だとやり過ごしていたのに、相手の方が数が多い今回のケースでは争うことを決めていた。
今回の魔獣の群れは牛型で元が草食獣の魔獣が相手だったからか?
いや、やり過ごしていた魔獣にも兎型などの元が草食獣の魔獣がいた。
避けていた中型魔獣と今回の魔獣だと、体内の魔素の濃度が薄かったからか?
それはあるかもしれない。
体のサイズだけではなくて、魔獣としての強さ自体で襲う相手を判断している可能性はある。
牛型魔獣の数が多く、ボリュームがあったからか、狼型中型魔獣の群れは内臓だけを食べて他は食べないままに移動を始めた。
それから小型魔獣を狩り、食べずに移動するケースも見られた。
有仁の世界で、動物は食べる分しか狩らないと聞いたことがあるが、魔獣はそれに当てはまらないようだ。
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