アルト8歳の年 ナレッジマネジメント
年が明け、俺は8歳になった。
5歳の時、アルトと有仁の意識が統合した年のレフ兄さんの歳と同じ歳になったんだな。
そのレフ兄さんは11歳になって身長も伸びたけど、俺はそれ以上に伸びてレフ兄さんとの差は開いた。
並ぶとレフ兄さんの方が弟のように見えると大人からからかわれると、割と本気でショックを受けて、からかった大人からもフォローされていた。
レフ兄さんが小さいんじゃなくて、俺がでか過ぎるんだろうな。
バカでかい父親から継いだ遺伝子がよく働いているらしい。
レフ兄さんは来年12歳になり、王都の使者がエルン村に来たら、共に王都に行くことになる。
その時までに、鍛冶ギフトを持つレフ兄さんが担っている役割を、エルン村の他のものに移していく必要がある。
鍛冶ギフトによって使えるようになる魔術の方は、一通り見せてもらったから、俺が他の人に伝えることも可能になっている。
問題なのは、鍛冶ギフトから得られる知識の方だ。
有仁の世界の鍛冶に関連しそうな知識については、思い出せる限り一通りレフ兄さんに質問して、鍛冶ギフトで実現できるかの判断や、どのように実現するかの知識を引き出している。
実際に鍛冶の作業をすることで新たな知識が引き出されるので、一通り試行してもらうことが必要だろう。
そして、レフ兄さんの頭の中にある知識を、マニュアルに落として他の者が学べるようにする必要がある。
いわゆる、表出化、暗黙知を形式知にする作業だな。
ナレッジマネジメントのSECIモデルに乗せてサイクル化させられるまでできるかは分からないけれど、試みることで得られることは多いだろう。
SECIモデルとは、S(共同化)、E(表出化)、C(連結化)、I(内面化)を回すモデルで、
S→E→C→I→S・・・とサイクル化することを理想としているものだ。
暗黙知とは個人の身体的な経験や直感、頭の中にだけある知識のような、属人的な知識を指している。
本来はもう少し狭い定義で、明確に言葉にして人に伝えるのが難しい知識を指しているのだけれど、生産系ギフトによって得られる属人的な知見を含めて考えることのほうが有用だろう。
形式知とは人に伝えられる形になっている知識を指している。
S(共同化):
暗黙知→暗黙知
狭義の暗黙知の方で、個人な身体的な経験や直感などを同じ場にいるものに共有し、暗黙知が暗黙知のまま伝える流れを指す。
E(表出化):
暗黙知→形式知
属人的な暗黙知をマニュアルなどに落とし込むことで、可視化することを指す。
C(連結化):
形式知→形式知
形式知となった知識を集めて複合的で体系的な知識とすることを指す。
I(内面化):
形式知→暗黙知
複合的で体系的となった知識を実践することで、個人の経験を通して暗黙知を蓄積することを指す。
このSECIモデルをサイクル化することは理想ではあるけれど、まず鍛冶ギフトの知識の表出化だけでも大きな成果になるだろう。
将来的にはナレッジマネジメントサイクルとして回していけるだろうとも考えているが。
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