覚醒したギフトについて
さて、現時点でアルトが有している知識を検討してみよう。
何を知っていて何を知らないのか、何を知るべきかを確かめないと今後の方針も立てられない。
アルトの知識は5歳児なので高が知れているが、アルトが見聞きしたことの記憶もあり、ゼロからのスタートとはならないようだ。
結構昔までしっかり記憶に残っているな。
英単語を覚えたり、歴史の年号を覚えたりする、一般的に記憶力と言われるのは長期記憶の一種の意味記憶だが、意味記憶は中学生程度でピークを迎えるそうだ。
ストーリーや関連付けで記憶する長期記憶であるエピソード記憶は幼年期では未熟だけれど死ぬまで成長可能だったかな。
意味記憶なのか、短期記憶が残っているのかはわからないが、アルトが耳にしただけのアルトが理解していなかった記憶が、ずいぶんとくっきり頭に残っているな。
アルトが理解できなかった文字情報まで記憶に残っているのは凄すぎて違和感すらある。
アルトと有仁が統合されて、脳に残っている顕在化していない記憶を取り出しやすくなったんだろうか。
・・・便利だからいいんだけども。
まずは、覚醒したばかりの俺のギフトについて考えよう。
ギフトとは、生まれつきではなく、10歳までの子どもが突然覚醒するものらしい。
ギフトが覚醒すると、そのギフトが与えてくれる能力が使えるようになるようだ。
重要な特徴として、『ギフトは遺伝しない』そうだ。
いくら強力なギフトを与えられても、子孫に遺伝しないから、ファンタジー小説などで出てくるような『代々伝わる勇者の家系』のようなものは存在しないようだ。
ギフト持ちをどう扱うかは地域によって異なるようで、優遇する地域もあれば、弾圧する地域もあり、この辺境開拓村があるアクチュア王国ではギフト持ちを優遇しているらしい。
1年に一度、10歳になった者をギフト持ちかどうかチェックする制度があるらしく、この辺境開拓村でも偉そうな王都からの使者が来て10歳になったものを集めていたことをアルトが直接見ている。
元の世界で占いに使うような水晶玉っぽい道具を使って一人ずつ鑑定していたようだ。
ギフトには系統だった有名なものがほとんどで、滅多に現れないようなものもあるそうだ。
戦場で役立ちそうな系統だと・・・
武術系だと剣術、槍術、斧術、弓術、棍術などの『○術』という名称のギフト。
武術系のギフトは対象としている武器の扱いが格段にうまくなるそうだ。
剣術のギフト持ちは剣の扱いに最初から熟練し、技術を学ぶのも早くなるらしい。
戦士系だと剣士、槍士、斧士、弓士、棍士などの『○士』という名称のギフト。
戦士系のギフトは武術系の上位のギフトとされていて、剣の扱いも身体能力も格段に向上するらしい。
力が上昇する系統で、剛力、怪力、剛腕、剛脚などのギフト。
剛力や怪力は身体能力が全体的に大幅に上昇し、体も頑丈になるらしい。
剛腕や剛脚などは特定部位の能力が上昇するらしい。
後は魔法士。
土魔法、火魔法、水魔法、風魔法などの『○魔法』とつくギフトは特別扱いされていて、これらのギフトを持つものは魔法士と呼ばれるらしい。
魔法士は自分の系統の魔法を自由自在に使えるらしい。
魔法士じゃないギフト持ちにも、ギフトを持たない者にも、『魔術』を扱える者がいるけれど、『魔法』と違って使うのにとても大変な訓練が必要で、一つ一つの魔術でそれぞれ決まった結果しか起こせないようだ。
アルトが魔術を使うことに憧れて辺境開拓村で魔術を使える人にいろいろ聞いていたようだ。
戦場向けじゃない生産系のギフトもいろいろあるらしい。
農業、鍛冶、裁縫、木工、大工とか。
これらのギフトを持つとその分野の知識が与えられ、必要な能力が使えるようになるらしい。
農業だと身体能力が上がったり、土を掘り起こしたりする魔術が使えるようになったり。
滅多に現れないマイナーなギフトでは病魔というのが有名だそうな。
人を病気にしたり、病気を治したりできたそうで、不吉な名前のギフトだったから病魔のギフト持ちは迫害され、迫害した人たちに復讐して大きな被害を与えて最後には殺されたという話をアルトは聞いたことがあった。
あと、特殊だけれど有名で、持っている者の数も結構多いらしい『キャンセル』というギフトがある。
このギフトの能力は一つだけ、周囲のギフトを無効にすることらしい。
アンチギフトともいえるこのギフトの存在で、ギフトのみに頼ることの危険性が増大しそうだ。
俺の父さんと母さんが亡くなった戦闘では、このキャンセルのギフト持ちが待ち構えていてギフトを使えなくなったことが敗因だったのではないか、と聞いている。
俺が覚醒したギフトだが、おそらく今まで誰も有したことがない、唯一無二のギフトだと思う。
アルトの記憶を辿っても似たような事例すらまったくヒットしないし、アルトが見聞きしたギフトの知識からしても規格外過ぎるギフトのようだ。
ラノベだとチートと言われる能力になるんだろうけど・・・
名称だけでも分かってしまう強力過ぎるギフトは、まず為政者による排斥対象者になりそうに思う。
俺が為政者だったなら、民にこんないつでも自分の命に手が届くギフト持ちがいることがわかったら、100%飼い殺せる保証がない限りは抹殺することを考えるだろう。
10歳でギフトを鑑定する道具を欺瞞して偽装できるかどうかが鍵になるかな。
もしできなければ、どこかに逃げることも考えておくべきか。
偽装するなら、ギフトの効果が判明していない、存在しないギフトをでっちあげるか。
俺の真のギフトと抵触しないように、全く異なる効果のギフトがいいかな。
それなりに強力だが近距離向けの、父さんのギフト『怪力』と同系統の身体強化系のギフトであれば、為政者もそこまで警戒しないだろうか。
このギフトを持っていることは、間違いなく俺の強みになるだろうけれど、他者に知られたらまずいという意味では俺の弱みにもなりそうだ。
幸い、ギフト確認の王都からの使者が辺境開拓村にやってくる日は近いようだし、その日に俺なりに探りを入れてみよう。
この作品を読んでいただきありがとうございます!
もしよろしければ、ブックマークと評価の方もよろしくお願いします。




