魔法士の協力による魔術開発①
オレグが土魔法のギフトに、イリナが水魔法のギフトに覚醒してから、様々な土魔術・水魔術を開発してきた。
俺が構想して魔法として使ってもらい、それを魔術に落とし込んだもの、アデリナさんやレフ兄さんの生産系ギフトの知識にあり、生産系ギフトによる魔術では実現できないことを実現するために開発したもの、エルン村の誰かの要望で開発したもの、いろんな発案で開発してきた。
その中でも、俺が構想して開発してもらったものは、大森林探索で使えるもの、王都に行った後でも使えるものなど、我ながらベストセラーと表現したくなるような魔術ができた。
一番俺が希望していた、そして俺以外の武器を扱う者全員にとって有用な魔術が、武器をその場で作成する土魔術だ。
地面の土を集めて生成するバージョンと、何もないところで生成するバージョンがあるが、当然前者のほうが使いやすいものになった。
俺以外でも、特にエルン村長とキリル兄さんが大絶賛している。
形状や厚みや長さなどは術式の一部を変更するだけで調整できる。
身体術で武器を強化できるなら、そのままだと持ち上げただけで自壊してしまいそうな土の塊でも十分使える武器になる。
エルン村長は全長10m以上の大型魔獣でも、全長30m以上の特大型魔獣でも、瘴気獣でも倒せる能力を有しているが、武器の大きさが制約になることが多かった。
一度撤退して、エルン隊時代に使っていた刃渡り10mの大剣を持って再度倒しに行くことも多かったそうだ。
それが、武器生成の土魔術で、その場で刃渡り10mの大剣を生成することが可能になった。
いつでも作れるので、不要になればその場に捨ててもいい。
俺だって、素手で瘴気獣を倒すこともできるが、素材の確保という点で丁度いいサイズの大剣があった方がやりやすい。
武器生成の土魔術があれば、魔獣でも瘴気獣でも、必要な素材をキレイに確保した上で始末できる。
これはとても大きな利点だ。
そして、これは戦場でも活きる魔術だと考えている。
エルン隊でエルン村長が刃渡り10mの大剣を振るって敵の軍隊を切り開いたように、その場で適切なサイズの武器を生成して使える利点は大きい。
鍛冶のギフトがあろうと製造が困難なサイズでも、この武器生成の土魔術なら作成できる。
オレグが土魔法のギフトに覚醒しなければ、俺が王都に行ってから何かでヒントを得たとして開発しようと考えていた魔術だ。
エルン村にこのタイミングで残せたのは本当に良かったと思っている。
大森林探索でも、戦場でも、そして日常でも有用な魔術として開発したのが、砂糖を生成する土魔術だ。
アデリナさんが塩を生成する土魔術を、長年の苦労の上で開発したことを聞いていたので、その延長で発想したものだ。
この魔術の開発は、他の全ての魔術と比べても、圧倒的に労力と時間がかかる作業になった。
アデリナさんは偶然にも頼って塩生成の土魔術が完成したと行っていたけど、偶然どころか奇跡だったんじゃないかと何度も考えたほどだ。
別に化学式から発想して考えるわけではないけれど、塩はNaCl、砂糖(ショ糖)はC12H22O11。
砂糖の方が構造が複雑になっている。
とっかかりを掴むこと自体が難しく、アデリナさんが実践した現物を観察したり触ったりすることなど、いろんなことを試した。
回り道になるかもしれないが、単純な物質の生成を試みて、その過程で新たな魔術をいくつも開発することになった。
鉄を生成する魔術を参考にして、様々な金属を生成する魔術を開発した。
これも、かなり苦労したし、よく失敗もした。
中途半端な失敗をすると、どの金属を生成しようとする魔術も鉄を生成してしまうのが興味深かった。
有仁の世界でも鉄が最も安定的な金属原子で、そのために地球でも宇宙でも最も多量な金属だと聞いたことがあったけど、何か関連があるのかもしれない。
金やプラチナを生成する魔術もできたけど、必要とされる術式の厳密さと魔力の強さが段違いの魔術になった。
オレグと俺しか使えない、キリル兄さんやレフ兄さんでも難しい魔術だった。
面白いのは、鉄を生成する魔術と塩を生成する魔術を応用してできた、金属ナトリウムを生成する魔術だ。
金属ナトリウムは非常に不安定な物質で、空気中でもすぐに酸素と反応してしまう。
何より、金属ナトリウムは水と激しく反応し、水酸化ナトリウムと水素を発生させ、また反応熱で発火・爆発する。
生成してすぐに川に投げると、爆発するたびに金属ナトリウムの塊が跳ねて連鎖的に何度も爆発を引き起こした。
攻撃用として使えそうな魔術ができてしまった。
砂糖に含まれる成分の一つとして、炭素を生成する魔術も開発した。
まずできたのは黒鉛を生成する魔術だったが、高密度で生成する方向に改良を続けると、小さいながらダイヤモンドを生成することができた。
ダイヤモンドを生成する魔術も、オレグと俺しか使えなかったが。
砂糖よりも構造が簡単で類似しているものとしてブドウ糖C6H12O6の生成にも着手した。
何度も失敗し続け、時間もかかったが、オレグにとっては砂糖よりはできそうな実感があるということで、こちらの生成魔術に注力した。
何とか完成し、粉状や塊上のブドウ糖を生成する魔術ができた。
甘みが薄いし料理などには使いづらそうだが、肉を煮込む時くらいには使えることが分かった。
大森林探索でも戦場でも、水、塩に続いて炭水化物も摂取できるというのは大きいだろう。
ブドウ糖を生成する魔術が完成してからも、砂糖を生成する魔術が完成するまでにかなりの時間がかかった。
この魔術もかなり行使が難しい魔術になってしまったが、オレグと俺以外にも、習得に時間はかかったが、エルン村長、アデリナさん、キリル兄さん、レフ兄さんが使えるようになった。
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